第70回 夢民
■『イチケイのカラス』の共演女優に勧められてハマる
アイドルだってメシを食う。さて、数多いる女優の中には、「本格派」のお墨付きを登場時から受け、颯爽とデビューした天才肌も見かける。キャリアを舞台でスタートさせた、黒木華もそのうちの一人だ。しかし、ぼくは彼女を“アイドル”と呼ぶのにいささかの抵抗もない。子ども時分から映画ばかり観てきたので、自分にとってのアイドルには演技が付き物だ。
つまり、何か役柄に染まって、自分の心の中に入ってくれてこそ、銀幕に映える若い娘はアイドルとなっていく。一部例外はあるが、山口百恵も松田聖子も本田美奈子もそうだった。
この連載を引き受ける際も、「アイドルの定義とは?」としつこく、たぶん3回くらいは担当に訊いた。「鈴木さんがそう思えば、それがアイドルです」と答えるほど、編集長は寛大ではない。確か「見た目も美人で、アイドル的人気を博しているなら誰でもOK」という回答だった。であれば、黒木華は最高のアイドルだ。
華が初主演した16年公開の映画、『リップヴァンウィンクルの花嫁』の監督、岩井俊二は彼女を評し「最も現代的」であり「平成の最先端女優」であると語っている。ハリウッドでは昔から、およそ女優に関してはエキゾチックな風貌が好まれるので、そうした傾向が念頭にあっての発言だ。