■過去と現在の『相棒』は別物

 また、初期の『相棒』と、現在の『相棒』は、よくも悪くも別物になっている。

 当初は一番「変人枠」だったはずの特命係の2人が、いつのまにかゲストの個性派を抜群の安定感で回すドラマになった。さらりと見て、見終わったそばから忘れる、ライトに楽しめるドラマになった印象がある。

 もちろん現在も考えさせられる話や、後味の悪い話はあるものの、亀山や神戸が相棒だった10年代前半ごろはもっとひどかった。シーズン9の第8話『ボーダーライン』の救いのなさや社会風刺ぶりは、いまだに語り草になっている。

 その頃に比べると、現在の相棒はかなりライトになった、と言えるかもしれない。

 約20年のシリーズ継続のなかで、刑事(デカ)のドラマから、警察組織のドラマに変容し、都会的になった一方、ストーリーの感情移入の余地は減った気もするが、同時に刺激が少なく見やすいドラマになったともいえる。

 そして、その理由の1つが反町演じる冠城なのだ。ゲストや右京さんを粛々と器用に回し、物語をスムーズに動かしている。キャラ的に嫌味や違和感もなく、水谷が気に入るのも納得である。

 また、レギュラーキャストや主演の水谷の高齢化もある。劇中時間が現実通りなら、17年のシーズン16で右京さんは60歳でとっくに定年を迎えている。水谷自身ももう68歳で、年齢を考えると変わるとしても相棒はあと一人が限界だろう。

 リスクを冒すより、抜群の安定感を継続させながらシリーズそのものを、どうきれいに終わらせていくかを考えるのもアリだ。尻切れトンボで終わるより、よほどいい。

 水谷さんやベテラン陣が築き上げた空気感に違和感なく溶け込んでいける、「ベテランだけど若い空気感の相棒」という無理難題を探すより、反町で締めたほうが作品にとってもプラスになるだろう。

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