“不世出の名馬”ディープインパクトが亡くなってから、2年が過ぎました。
――まだ2年、もう2年。その時々で思いは変わりますが、風のようにターフを駆け抜けた、14レースすべてで手綱を取ることができたのは、今でも誇りです。
デビュー戦の前にまたがった、追い切り後に思わず漏らしたひと言が「この馬、ちょっとヤバイかも」。続いて2戦目、若駒Sのレース前に記者の人たちを前に出た言葉が「きっと、ものすごいもの見られると思いますよ」。さらに4戦目の皐月賞後に「走っているというよりは、飛んでいるような感じでした」と答えた勝利ジョッキーインタビュー。これら以外にも、ディープについてのコメントは、すべて覚えています。
生涯成績は、14戦12勝。G1勝利は、無敗の三冠を含む通算7勝。2005年から2年連続で年度代表馬に選出されました。
現役時代だけでなく引退後も特別な馬でした。目下、9年連続のリーディングサイアーで、ディープブリランテをはじめ、キズナ、マカヒキ、ワグネリアン、ロジャーバローズ、コントレイルまで7頭の日本ダービー馬を輩出。重賞を勝った馬を挙げていったら、今回の原稿は、それだけで終わっちゃいそうです(笑)。
さらにすごいのは、産駒の活躍が海外にも及んでいることです。オブライエン厩舎のディープ産駒スノーフォールが、英オークス史上、最大となる16馬身差で圧勝したというニュースを耳にしたときは、まるで自分のことのように、うれしくなりました。
ディープ産駒は、今年の1歳馬が最終世代。これからはディープの血を受け継いだ子どもたち――サトノダイヤモンドやダノンプレミアムなどが次の世代へ、その血を伝えていく役目を担うことになります。
今年、種牡馬デビューを果たしたシルバーステートも、その1頭です。8月1日の函館競馬で実施された、2歳新馬戦で同産駒のロンに騎乗し、デビュー戦を逃げ切りで勝利しました。この馬はフットワークがよく、少しゴーサインを出しただけでスッと動くなど反応も抜群で、これからがすごく楽しみです。
サンデーサイレンスからディープインパクトに受け継がれた血は、間違いなくその次の世代、さらに、その次の世代へと伝わっています。今週末に実施されるJRAの重賞レースのうち、僕が参戦を予定しているのは、8月22日に小倉競馬場で実施されるG3北九州記念です。
パートナーは、初コンビとなるレッドアンシェル。昨年の同レースの覇者で能力&実績は申し分ないんですが、18着に終わった高松宮記念以来の出走となり、長期休養明けが競馬に、どんな影響を及ぼすのか? 枠順やレース当日の天候など、いろいろ気になります。
ですが、東京オリンピックに出場したアスリートたちのように、皆さんの心を揺さぶるような競馬をしたいと思っています。
「武豊 人生に役立つ勝負師の作法」最新記事