■フィリピンでおきた『ボルテスV事件』
77年に日本で放送していた『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(テレビ朝日系)は78年にフィリピンにも輸入されたが、最高視聴率58%という異次元の数字を叩き出し、社会現象となっていた。
しかし、親や教師らから「本作品の内容が暴力的であり、道徳的でない」というクレームが寄せられたり、当時まだ第二次世界大戦の余波で反日感情が強かったこともあり、抗議団体も結成されるほどだった。
「結果、最終話直前になってフェルディナンド・マルコス大統領が放送禁止する事態が発生したんです。これを96年に岡田斗司夫は自著『オタク学入門』で、
《ストーリー後半が革命を示唆する内容であったため、独裁的な政権運営を行なっていた当時のマルコス政権による政治的圧力で放送が禁止された》
としていました。また、91年の『NHKスペシャル・ドキュメンタリーアジア発』で配給会社は、“政界のその筋にパイプを持っていなかったため、我が社だけが不公平な扱いを受けた。ビジネスにはよくある話”と証言していますね」
いずれも過去の話であり、17年には放送40周年イベントがフィリピンで開かれたり、昨年1月にはフィリピン制作で実写リメイク作品『Voltes V Legacy』の製作が発表されている。こうした出来事があったため、より今回の「ティガ配信停止騒動」に政治色を感じる声が多かったのだろう。
思わぬ騒動だったが、改めて中国での『ウルトラマンティガ』の存在の大きさが明らかとなる事件だったーー。