■投げて守って打って走って“四刀流”

 6月には、二刀流の先駆者であるベーブ・ルースがプレーしたヤンキースタジアムに“凱旋”。名門ヤンキースを相手に、2戦で3発を放ち、本塁打王レースのトップに躍り出た。

「MLB発祥の地であり、熱狂的ファンも多い東部の球場で打つ本塁打は、やはりインパクトが違う。レッドソックス戦のときには、あのニューヨークタイムスでも大々的に特集が組まれていました。注目度という部分では、どうしても“東高西低”になってしまう傾向は今もある。大谷は、それすらも軽々と超えていったというわけです」(前出の福島氏)

 今季、DHとしての出場が劇的に増え、本塁打を量産した大谷。しかし、注目を集めたのは豪快な一発だけではない。

「今季の盗塁数は26で、リーグ5位の成績。走塁時の快足ぶりも大きな話題となりました」(前出のMLB担当記者)

 特筆すべきは、7月2日のオリオールズ戦だ。

「この日、29号30号を連発した大谷ですが、圧巻は同点で迎えた9回。四球で出塁すると二盗を決め、ウォルシュのヒットでサヨナラのホームイン。タッチをかいくぐる好走塁で、“あのヒットで、なぜ生還できるんだ!?”と、現地の記者連中が舌を巻いたほど」(スポーツライター)

 MLBでのプレー経験もある藪恵壹氏も、そんな大谷に称賛を惜しまない。

「彼は実質、投げて守って打って走っての“四刀流”。そのどれを取ってもすごい数字を残しているんですから、評価する側も大変です」

 中でも、藪氏は、やはり“打者・大谷”が一番魅力的だと語る。

「これまで日本人選手のシーズン最多本塁打記録は松井秀喜の31本。それをまだ前半戦の7月7日に塗り変えるなんてことは、彼にしかできない芸当でしょう」

 ファン投票のDH部門で初選出された7月13日のオールスター戦では、日本人初のホームランダービー出場に続き、“1番・投手”として先発出場した。

「大谷にスポットを当てようという、MLB側の戦略的な意図もあったとは思いますが、史上初の“1番・投手”としての先発出場は、“彼には従来のルールを変える価値がある”という証明でもあります」(福島氏)

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