■いまだにどうして彼がこの役を引き受けたのか謎
まもなく公開される映画『土竜の唄 FINAL』もそうでした。たとえば今回、主人公・玲二の敵となる轟烈雄というのがかなり強烈なキャラクターとして描かれている。俳優本人にパワーがないと面白くないから、鈴木亮平さんがやってくれたら最高……と思ったんですが、どう考えても受けるはずがない。でも、「やる」って言うんですよ。
いまだにどうして彼がこの役を引き受けたのか謎なんですが(笑)、主役が生田斗真だったというのも大きいかもしれません。二人のシーンは、お互いリスペクトし合っている気配がビンビン伝わってきて、期待以上に見ごたえのあるものになりました。
こんなふうに、とにかく宮藤さんの脚本は「やっちゃえ!」という気持ちにさせてくれるんです。脚本を読んで「これどうすりゃいいの!?」と頭を抱えることが、楽しい。Vシネマの頃、脚本家が書きたいように書いて、それを監督が撮りたいように撮っていたことを思い起こさせてくれます。今の日本の映画界でそう思えることは少ないですね。
最近、20年くらい前に撮った作品が、ヨーロッパなどで支持されているようです。そのせいか、海外の映画人が僕を呼んでくれる機会が多くなって、ここ数年は、半分以上が海外での仕事です。ハリウッドはもちろん、中国や韓国は、今でも夢をつかもうと映画を作っている。この作品が成功することによって、自分たちは昨日までと違うところへ行ける。そんな熱を、監督にもスタッフにも感じますね。
近々、韓国でドラマを撮る予定です。大ヒットした『愛の不時着2』みたいなのだったらいいなぁ、と楽しみにしています(笑)。
三池崇史(みいけ・たかし)
1960年大阪府出身。Vシネマの監督を経て、1995年に『新宿黒社会チャイナマフィア戦争』で劇場監督デビュー。以来、現在に至るまで、数多くの話題作を世に送り出している。代表作として、映画『土竜の唄』シリーズ、『十三人の刺客』『悪の教典』『無限の住人』『初恋』などがある。
「人間力」最新記事