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日本全国9月災害「意外な危険」マップ

[週刊大衆09月15日号]

いつ何が起きてもおかしくない昨今の日本列島で、天災から命や財産を防衛するべくまずは周囲の災害危険地域を調べるべし!

8月20日に発生し、死者72名(8月28日現在)に及ぶ大惨事となった広島市の土砂災害。

土石流の速度が瞬間的に144キロに達していた可能性が指摘されるなど、その凄まじさが明らかになってきている。

「実際、死因が特定できた死者のうち、最も多かったのが窒息死でした。住民らは逃げる間もなく、土砂に飲み込まれてしまったんです」(全国紙社会部記者)

この恐怖の瞬間は、240ミリという歴史的な豪雨がもたらしたのだが、これは広島だけの話ではない。日本全国で集中豪雨などが猛威を振るう異常気象に加えて、いよいよ9月は台風のシーズン。よりリスクが増す季節が到来するのだ。

「台風や異常気象によってもたらされるのは、土砂災害ばかりではありません。河川の氾濫による洪水のほか、都市部では排水用の水路から水が溢れ出し、町中が水浸しになる被害も予想されます」(前同)

まちづくり計画研究所代表で、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は、「広島の災害は、もはや、気象庁が避難勧告や警告を出してからでは間に合わない現実を露呈しました。それでは、どうやって身を守ればいいのか。まず第一に、住んでいる地域のリスクを事前に把握しておくことが大切です」

襲い来る異常気象を前に、チェックしておく必要があるという。そこで本誌が危険箇所を徹底取材すると、意外と知られていない場所がいくつも見つかった。

その前に知っておきたいのが、豪雨や台風が土石流や地すべり・がけ崩れといった土砂災害が起こすメカニズムだ。砂防地すべり技術センターによると、「山の土は粒子間の摩擦や粘りがあり、ある程度までなら水分を吸収することはできます。しかし、歴史的な雨量によって、その吸収力が飽和状態に達すると、土の粘りが効かず、土砂災害へと繋がってしまいます。つまり、急傾斜地なら、全国どこでも土砂災害が起きる可能性があるんです」

その「急傾斜地」とは、「傾斜角度が30度以上で5メートル以上の高さの崖」とされ、全国で約33万か所が「急傾斜地崩壊危険箇所」に指定されている。

都道府県別にその数を見ると、最も多く抱えるのは今回、大惨事となった広島(約2万1900か所)。次いで、山口(約1万4400カ所)、大分(約1万4200か所)、島根(約1万3900か所)、兵庫(約1万3500か所)、高知(約1万3000か所)の順になっており、意外にも西日本に集中している。

では、東日本は安全なのかというと、そうではない。山が少なく、見渡すばかり平野の関東でも、意外に急傾斜地が多く、神奈川では7100か所に及ぶ。

そして意外や意外にも、ビルや住宅が立ち並ぶ東京23区内にも危険箇所は多く隠れているという。

「なかでも港区は急傾斜地崩壊危険箇所が集中した場所で、都内の危険箇所の2割がここにあります。しかも、六本木、赤坂、高輪、白金など意外にも"お高い街"に危険箇所が集まっています」(前出・社会部記者)

また、砂防地すべり技術センターは「もともと川だった場所で、当時の川端が崖になっている所に注意が必要」と警鐘を鳴らす。

また、崖だけでなく「軟弱地盤」地域にも注意が必要。そもそもの土地自体の強度が弱ければ、当然、土砂災害が起こりやすくなる。広島の土砂災害地域も、花崗岩が風化してできる脆弱な地質(まさ土と言う)だったとされている。

「もともと、沼や川だった低地で水が入り込みやすく、軟弱な地盤では、土砂が流出する危険があります。その最たる例が泥炭地層。植物が腐った土質であり、土というより限りなく水に近い性質です」(液状化対策軟弱地盤対策推進協議会)


地震の揺れが増幅される地域

この軟弱地盤を抱える地域では、豪雨被害のみならず、地震被害も大きくなる。

揺れによって地盤がドロドロになってしまう液状化や、震源が遠くであっても予想以上に揺れが増幅されて建物が損壊するなど、"重大警戒地域"なのだ。

実際、2003年に発生した十勝沖地震では、震源地から約260キロも離れた札幌市の住宅街で、住宅が沈むほどの液状化被害をもたらした。

北日本では、泥炭地層を抱える北海道石狩平野や、北上川沿いに軟弱地盤を抱える仙台平野が挙げられる。しかも、この2地域は札幌、仙台という日本有数の大都市を抱えている。

また、火山灰が堆積してできた地域も地盤がもろく、首都圏はその関東ローム層で構成されている。名古屋がある濃尾平野も地盤が軟弱地盤。このほか、湖面を埋め立てた浜名湖周辺や伊勢湾岸沿いでは、過去に多数の液状化現象が確認されている。

関西では琵琶湖周辺に広がる平野部が危険だ。厚さ5~10メートルの腐植土などの柔らかい地層で覆われ、特に姉川が琵琶湖に注ぐ河口付近(長浜市)は、その腐植土層が約20メートルの厚さに及んでいるという。

「琵琶湖周辺を襲った地震では、液状化に伴う大規模な地滑りが発生し、湖岸の集落が琵琶湖に水没した例が現在の長浜市や高島市などでいくつも確認済みです。阪神大震災でも近江盆地で液状化が発生しましたので、県外に震源がある地震であっても注意が必要です」(滋賀県の防災関係者)

中国ブロックではやはり、土砂災害を招いた広島は、その中心部が脆弱な三角州上に形成され、「戦国武将の毛利輝元が広島城を築城する際に苦労した」(歴史研究家)と言われるほどだ。

では、自分が住んでいる地域が危険だとわかったら、どうしたらいいのか。まず、近くに崖や傾斜地がある場合、「雨が降ったあと、崖の割れ目から"土色の水"が染み出していないかどうか注意深く観察してください。それが長時間、止まらずに出てくるようなら、避難の準備が必要となります」(前出・砂防地すべり技術センター)

また、広島の土砂災害での被災者の「体験」も教訓になりそうだ。

「土砂災害が起きる直前、"山がドスンドスンと音を立てていた" "土の匂いが普通ではなかった"などという、いつもと違う予兆を察知し、2階などへ逃げ込んで助かった住民もいたんです」(前出・渡辺氏)

一方、この夏、集中豪雨によって、都市部でも浸水の被害に見舞われたが、台風シーズンを控えて、注意すべきは河川の氾濫だ。

国内でも河川水害被害がトップクラスといわれる庄内川の下流地域(名古屋市)では、00年の東海豪雨で家屋への浸水は約6万2000世帯に及んだ。日本3大都市のひとつの市街地が水没する事態は、意外さを通り越したものだった。

同じく、予想外の惨事になりかねないのが、JR大阪駅付近。淀川流域の大阪市は、そもそも海面や水面より低い土地が広がる危険地帯。淀川が決壊した場合、JR大阪駅前には1~2時間で洪水が押し寄せ、最大で2・9メートルの浸水が起きるというデータもある。

このほか、今夏の台風11号の影響で避難判断水位を越えた吉野川(徳島県)、定期的に氾濫を繰り返す筑後川(福岡県)など、危険を抱える河川は多い。


異常気象は当たり前の心構え

そうした危険な河川について国土交通省の水管理・国土保全局河川計画課では、「日雨量が100ミリ以上の長雨や1時間50ミリ以上の短時間豪雨が降ると、災害が起きやすいという認識を持っています」

大きな河川流域の住民は、豪雨や台風に見舞われた際、雨量をチェックしておくと身の安全に繋がりそうだ。

「その際に決して油断しないこと。最近は記録的な降雨量が相次ぎ、1時間に100ミリ以上の雨が降っても、"またか……"くらいに思う人がいるかもしれませんが、そうした記録的な豪雨に慣れてしまうことが危険なんです」(渡辺氏)

しかし、浸水被害は河川の氾濫によるものだけではない。今年8月中旬に2500棟以上の家屋が浸水した京都府福知山市の豪雨では、どの河川も氾濫しなかったが、市内が水浸しになってしまったのだ。

これを「内水氾濫」と呼び、道路が舗装されるなどして雨が土に吸収されにくい都市部で、排水用の水路などが溢れて浸水被害を増大させるもの。

一方、河川氾濫による浸水被害は「外水氾濫」という。仙台市の国道45号線沿いの苦竹IC交差点付近も、河川から離れた場所であるにもかかわらず、かつて台風に見舞われた際に水没してしまった過去を持つ。

「住宅街で半地下の駐車場をよく見かけますが、これも危険です。水が駐車場に流れ込む前に土嚢などを積んで、浸水を防いでおくことが大切です」(前同)

これまで紹介してきた箇所は、あくまで象徴的な場所ばかり。国土を山や軟弱地盤で覆われ、縦横に河川が走る日本列島で、絶対に安全な場所は数少ない。

「もはや異常気象は、"異常"ではなく"恒常気象"になったとの心構えで、災害に備える姿勢が求められています」(同)

来るべき"9月災害"に備え、地域の危険箇所を事前に確認いただきたい。

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