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池上彰も見捨てた「朝日新聞のドツボ」

[週刊大衆09月29日号]

自社批判が書かれたコラムの掲載を巡って右往左往。誇り高き"クオリティペーパー"が前代未聞の窮状に陥っている。

「信頼関係が崩れた」

この一言に、すべてが込められていると言っていいだろう。

ジャーナリスト・池上彰氏(64)が朝日新聞に付きつけた"三下り半"が、巨大メディアを揺さぶっている。

騒動の詳細は後述するが、事の発端は、8月5日、6日付の同紙に唐突に掲載された「慰安婦問題を考える(上、下)」という検証記事。

終戦記念日を控えた時期とはいえ、なんとも不可解なタイミングだった。5日付の同紙1面に載った編集担当執行役員・杉浦信之氏の署名記事『慰安婦問題の本質直視を』を読むと、朝日の意図が透けて見えてくる。

杉浦氏はこの記事で、冷え込んだ日韓関係を憂いつつ、混迷の原因に慰安婦問題があると、まず指摘。続けて、〈一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造だ」といういわれなき批判が起きています〉として、読者への説明責任を果たすための特集だと記している。

「はっきり言えば、ここ長らく世論から"親韓" "親中"と攻撃され続け、耐え切れなくなったんでしょうね。今年に入って、購読者離れも進んでいると聞きますしね。そのために、批判の中心にある"慰安婦問題"にケリをつけようとした。ただ、この問題は朝日にとって喉に刺さったトゲ。これまでの報道で"誤報"を垂れ流していたんですから……」(政治ジャーナリスト)

朝日は同検証記事で、これまでの慰安婦問題報道における主に二つの誤りを認めた。

●戦時中、日雇い労働者らを統制する山口県労務部報国会下関支部で動員部長をしていた吉田清治氏(故人)の「(韓国)済州島で、200人の若い朝鮮人女性を"狩り出した"」との証言(「吉田証言」)を、80年代から90年初めに取り上げたが、この証言は虚偽だったと判断したこと

●戦時下の日本国内や植民地であった朝鮮・台湾で、労働力として動員された女性のことを「女子挺身隊」といったが、彼女たちと、将兵の性の相手をする「慰安婦」とを、90年代初めに混同したこと

同記事で、朝日は〈読者のみなさまへ〉として、「吉田証言」に関する記事を〈虚偽と判断し、記事を取り消します〉とのみ記し、謝罪は一切行われなかった。


自社批判のコラムを掲載拒否

「結局、この問題の潮目が変わったのは、今年に入って安倍政権の手で『河野談話』の見直し作業が進んだからですよ」(自民党中堅議員)

91年、韓国の元慰安婦らが補償を求めて日本政府を訴えたことを受け、この問題の本格的な調査が始まる。

国際的な注目を集める中、93年8月に当時の河野洋平官房長官から発表されたのが河野談話だった。

「慰安婦に関して同談話は"総じて本人たちの意思に反して行われた。お詫びと反省の気持ちを申し上げる"として、強制的な連行を認め、政府として公式に謝罪と反省を示しました。ところが、河野談話作成に際して、朝日で"慰安婦の作り話"をしていた吉田清治氏とも政府関係者が接触していることがわかった。談話の根拠が揺らぐ事態だが、朝日は"河野談話には採用されていない"として素知らぬ顔です」(前同)

普通に考えれば、組織で重大な誤りが判明すれば、然るべき立場の者が記者会見を開いて謝罪するもの。

普段、企業の不祥事やミスを追及する立場にあるメディアが自らの過ちにどう対応するのか、当然、世間は注目している。

「朝日のような大メディアが"間違っていました。だから取り消します"だけでは、済まされないでしょう。おまけに、『女子挺身隊』と『慰安婦』の混同は、他紙でもあったと"逆ギレ"する始末。ホント、恥ずかしいですよ」(朝日新聞A記者= 30代)

こうした朝日の態度に怒ったのが、従来から慰安婦の「強制連行」は存在しなかったと主張している読売新聞や産経新聞、『週刊文春』や『週刊新潮』などの各メディアだった。

「ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、8月15日に開催された『日本の前途と歴史教育を考える議員の会』の会合で、"朝日はまず1つ2つやるべきこと(釈明と謝罪)をやったうえで、廃刊にすべきだ"とまで言っています」(自民党関係者)

評論家の小沢遼子氏は、こうした現状をどう見るか。

「櫻井さんの廃刊要求はいくらなんでも言い過ぎ。攻撃しているメディアだって、誤報はなかったかと言えばそんなことないでしょう。いずれにしても、慰安婦問題をキチンと再検証すべきでは。むろん、朝日は虚偽部分はちゃんと謝るべきよね」

批判の集中砲火を受けた朝日は、自社批判を行う週刊誌の新聞広告掲載を拒否するという愚挙に出た。

ところが、「報道の自由を守るべき大新聞がいかがなものか?」との批判が社の内外から噴出すると、今度は、広告掲載はするが、記事の見出しの一部、たとえば「売国」「誤報」(週刊新潮)の文言を黒塗りにする対応に切り替え、さらに火に油を注ぐ結果となった。

「『声』欄(読者投稿欄)もバッシングの原因になりました。8月5日以降、当然ウチの検証記事についてのさまざまな意見が大量に寄せられているのに、それが一件も出ていない。それを指摘されるや、やっと『声』欄に批判的な声が載せられた。本当にやり方がせこい」(朝日新聞B記者= 40代)

もはや、バッシングの対象は検証記事にとどまらず、過去の朝日の誤報記事や別のスクープ記事への疑問、さらには社そのものの体質にまで拡大。そんな8月28日、朝日は第2弾の検証記事を出す。

「ところが、ここでも謝罪の言葉はなし。〈慰安婦問題 核心は変わらず 河野談話、吉田証言に依拠せず〉のタイトルからも察せられるように、開き直りとも受け取れる内容だったことから、火に油を上回る"炎上状態"となりました」(前同)

打つ手打つ手が、ことごとく裏目。まさにドツボにハマりまくっている朝日。

だが、何より致命的だったのは、池上彰氏のコラムを掲載拒否した一件だろう。

元NHKの記者で、わかりやすいニュース解説が人気のジャーナリスト・池上氏は、新聞各紙の報道を分析する『新聞ななめ読み』というコラムを朝日で月に1回連載している。8月29日掲載予定分で、この検証記事を取り上げたところ、朝日は掲載を拒否。池上氏は連載中止を申し入れたという。

ところが、各メディアがこの"言論弾圧"に一斉に異を唱えると、一転、謝罪し、9月4日にコラムが掲載された。

「池上さんのコラムのポイントは、"訂正が遅きに失した" "謝罪の言葉がない" "他社を引き合いに出すのは潔くない"と、非常にシンプルで真っ当なもの。それだけに、掲載拒否には社内でもかなりの抗議の声が出たと聞いています」(朝日新聞C記者= 40代)

6日には、わざわざ〈読者の皆様におわびし、説明します〉と題し、この"池上コラム騒動"の経緯を説明したが、池上氏の今後の執筆は現時点では未定だ。

しかし、なぜ、朝日は30年以上も虚偽の記事を放置し、いまだに謝罪さえしないのか?

絶対匿名を条件に、朝日新聞政治部のベテラン記者が語る。

「2012年6月に就任した木村伊量(ただかず)社長は、45年ぶりの早稲田大学出身の社長。左に寄りがちなウチでは珍しい保守派。だから、安倍政権に"スリ寄りたい"気持ちから今回の検証記事で"反省"のポーズを見せたかったんでしょう。社長にすれば、"俺だから今回の訂正を実現できたのに、なぜバッシングされるんだ!?"というのが本音なのかも……」

この説、社内ではそれなりに流布しているという。


国内では四面楚歌状態の朝日

朝日を取り巻く状況は悪化の一途だ。

「吉田証言」報道が、日本人のイメージを世界的に悪くしたとして、慰謝料、謝罪広告、購読料返還などを求め、100万人規模の集団訴訟を起こす動きも出てきた。

現在、朝日の販売部数は約730万部。しかし、700万部を割り込むのは時間の問題だという。販売業績の悪化に加え、こんな不気味な予兆もある。

8月21日夜、豊中支局(大阪市豊中市)で朝日の看板や駐車していた車がコンクリートの塊で傷つけられる事件が発生したのだ。

「冗談抜きに、(阪神支局が襲撃され、小尻知博記者が死亡、同僚1人が重傷を負った、1987年の)赤報隊事件が頭に浮かびました。まさかとは思いますが、時期が時期だけに非常に不安です」(前出・C記者)

韓国で最大部数の『朝鮮日報』は、8月9日付で、〈旧日本軍慰安婦をめぐる朝日新聞の闘いは20年以上になる。加害者の国の新聞が常に被害者側で闘ってきたのだから、孤立し、疲れが見えてきた。知恵を絞って助ける方法が韓国政府にはあるはずだ〉と報じたが、朝日の味方は、もはや韓国メディアだけとでも言うべき四面楚歌状態のようにも思える。

朝日新聞の今後の対応に注目したい。

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