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「日本の霊峰・御嶽山大噴火」現地レポート

[週刊大衆10月20日号]

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91年の雲仙普賢岳を超える戦後最大の火山災害が突如発生。"熱気"を帯びた火山灰、岩石、有毒ガスの恐怖――!!

サッカーボール大の噴石が!
登山者が証言「生死を分けた瞬間」


紅葉に向け、木々が薄く色づいたばかりの名峰が、一瞬にして"この世の地獄"と化した――。

長野県と岐阜県の境に鎮座する霊峰・御嶽山(標高3067メートル)が突然、噴火したのは、9月27日の正午を迎える数分前のこと。当日は土曜日だったこともあり、多くの登山客でにぎわっていた。

「爆発後、同日夜までに約230人が下山しましたが、それがかなわず多くの登山者が取り残されて被災。10月1日現在、死亡確認が取れたのは47人。安否不明者は少なくとも20人以上で、その数はまだまだ増えそうです」(現地で捜索に当たっている消防関係者)

そこは、まさに地獄絵図だった。

「ドンッ……」という鈍い音とともに黒い噴煙が立ち昇り、秋晴れの空は一瞬にして真っ暗に。一歩先も見えない闇の中、立ち尽くす登山者たち。

その直後、彼らの頭上には轟音が響き、サッカーボール大の噴石が雨アラレと降り注いだ。

山頂の剣ヶ峰(噴火口の周囲)にある御嶽神社の社務所に駆け込む人、はたまた、近くの山小屋や避難小屋に駆け込む人……。

一方、遮るものとてない尾根沿いに歩いていた人たちは、近くの岩陰に駆け込み、うずくまるしか術がなかった。その背中に、粉塵や噴石を含む熱風が容赦なく襲い掛かる。同時に、強烈な硫黄臭が全身を包んだ。

「おそらく噴火から数分で、岩陰に隠れた登山者の全身は火山灰に覆われてしまったと推測されます。そのため、生き埋めになってしまった方もいらっしゃいます」(前出・消防関係者)

火山灰は粒子が細かいため、これを大量に吸い込むと肺胞が塞がり、窒息死してしまうという。

「熱風で呼吸器系が冒され亡くなった方も多い。火山性ガスを吸い込むのも大変危険だと聞いています」(地元の警察関係者)

火山性ガスとは、プーンと鼻について離れない硫黄の臭気が思い出されるが、その成分は亜硫酸ガスや硫化水素。いずれも、呼吸器系統に大きなダメージを与え、昏倒を招く。

「今回目立ったのは、降り注いだ噴石に当たり、怪我をしたり命を落とした方々です。軽トラックを超える大きさのものもあったと言いますからね」(前同)

恐怖の一夜を、山頂近くの「五の池小屋」で過ごした約30人の登山者もいた。火山灰で覆われた木造小屋の中は真っ暗。ドスン、ドスンという音とともに、屋根を突き破ってボウリング球大の噴石が降り注ぐ。

噴石が頭に当たり、血を流している人。不安で泣き叫ぶ女性や子どもの声。なかには、死を覚悟したのだろうか、嗚咽しながらスマートフォンで遺書を送る登山者の姿もあったという。

この山小屋で難を逃れたという鈴木岳載(たかのり)氏(28=東京都在住=会社員)は、噴火当日、王滝頂上山荘の前で、昼食の準備に取り掛かろうとしていた。この日は知り合いの仲間8人パーティの一員として、初の御嶽山登山だったという。

「異変を感じた山小屋の人が、即座に"危ないから(小屋に)入れ"と声を掛けてくれました」

ヘルメットとマスクが配られたが、すでに山荘の屋根は直撃した噴石で穴だらけ。噴石の直撃を受けたのか、頭から血を流して床に横たわる登山客が何人もいたという。

「大小さまざまな噴石がひっきりなしに小屋を襲い、建物がメキメキときしみ、崩れ落ちそうでした。熱風と灰も容赦なく小屋の中に押し寄せてきて、息をするのもやっとの状況でした」

小屋の中で死を覚悟したという鈴木氏。

「なぜかわかりませんが、その途端、意外と冷静になれました。おそらく1~2時間だったと思います。真っ暗だった窓の外に光が射してきたんです」

外は、雪でも降ったかのように膝の高さまで火山灰が積もっていたという。噴火で飛んできた岩石があたり一面に転がる。

「小屋の人から"体力に自信のある人たちは、今のうちに下山してください"との指示がありました。ただ、怪我をしている人たちを見捨てるようで複雑でした。ぬかるんだ火山灰の中、雪山を滑るように下山しましたが、道中、灰の山から人の手が突き出ている現場なども目撃しました……」

運、不運――などでは語ることのできない、生死を分けた"それぞれの瞬間"があったのだ。


予測不能「水蒸気爆発」が告げる
富士山噴火と伊豆・小笠原沖大地震


「単に一つの火山が噴火しただけではなく、周辺火山の噴火や大地震の予兆である可能性が高い」

わが国有数の火山学の権威である琉球大学名誉教授の木村政昭氏は、御嶽山の噴火をこう分析する。

今回の噴火は、「水蒸気爆発」と呼ばれるものだ。水蒸気爆発は、地下の水脈がマグマに触れることで急激に熱せられ生じる。水が気化する過程で体積が膨張し、上昇圧力となって噴火するのだ。マグマに熱せられた地下水脈が気化すると、その体積は1000倍にもなるというから驚きだ。

火山の水蒸気爆発は、1995年の焼岳(長野県)、2000年の有珠山(北海道)の時も確認されている。

御嶽山は07年にも噴火しているが、その時もやはり水蒸気爆発が原因だった。

「地下水脈の正確な位置を把握するのは不可能。そのため、突発的に発生する水蒸気爆発は予測が非常に難しい」(気象庁関係者)

今回の噴火が、予兆に乏しく突如として発生したのはそのせいだ。ただ、「噴火が"突発的なもの"である以上、"噴火の連鎖"を心配する必要はない」とは言えない状況だという。

「水蒸気爆発が生じたということは、マグマが上昇したことに他なりません。ポイントは"なぜマグマが上昇したか"です。それは3年前に起きた東日本大震災の影響が残っていると考えるべきなんです」(前出・木村名誉教授)

2011年3月の東日本大震災は、日本列島が乗る海底プレートが大きくズレたことで起きた。

「地震を引き起こした太平洋プレートは、現在も日本列島の下に潜り込む動きを止めていません。それが火口下にあるマグマ溜まりへ圧力をかけ、マグマを上昇させているんです」(前同)

マグマの上昇が招くのは、水蒸気爆発だけに限ったことではないのだ。

「昨年11月に噴火した西之島(東京都・小笠原諸島)ではマグマが地表に出る火砕流噴火でした。今も溶岩が噴出しています。続いて今回の御嶽山の水蒸気爆発。これは富士火山帯周辺のマグマ溜まりが上昇している何よりの証拠。御嶽山が最北、西之島が最南。そして中央には富士山。つまり、富士山を含む御嶽山周辺の火山は、いつ噴火してもおかしくない状況と考えるべきです」(同)

さらに火山の噴火だけでなく、「大地震も起こり得る」と木村氏は言う。

「太平洋プレートの両端には"地震のストレス"が残っています。プレートの南端は小笠原諸島の東側。ストレスが大きくなれば、ここを震源とする大地震が起きても不思議ではない」

"火山大国"ニッポンの宿命か……。


緊急出動して救援に向かった陸上自衛隊
「山岳レンジャー集団」の凄すぎる実力


9月27日14時31分、御嶽山噴火を受けて、長野県知事は、陸上自衛隊第13普通科連隊長に対して、災害派遣要請を出した。第13普通科連隊は松本駐屯地(長野県)に所在し、山岳機動(山地での各種活動)を得意とする「山岳レンジャー部隊」を有している。

レンジャーの基本は、敵に見つからずに山中を移動し奇襲攻撃を仕掛けること。全国各地の部隊でもレンジャー隊員の育成を実施しているが、第13普通科連隊の主な展開先は日本アルプスであることから、特別に「アルペン(山岳)レンジャー」と呼ばれている。

彼らは、標高3000メートルを越える山々での戦闘を専門とした日本唯一の部隊である。

そんな第13普通科連隊が所属する第12旅団は、"空の騎兵隊"とでも言うべき、"空中機動旅団"の別名も持ち、"隊員の足"となる大型ヘリを多数配備する第12飛行隊が編制されている。山岳レンジャーの移動にヘリは不可欠。そのコンビネーションは、御嶽山でもいかんなく発揮された。

彼ら、山岳レンジャー以外に、今回の任務を遂行できる部隊はない。ただ、この"山の精鋭"をもってしても、御嶽山でのミッションは困難を極めたという。

「実は運悪く、隊員の多くがワシントン州で行われていた日米共同訓練に参加していたんです。すべての隊員が帰国するのは28日でしたが、駐屯地に待機していた隊員たちで直ちに出動しました」(防衛省関係者)

火山特有の有毒ガスが充満していたのも、大きな障壁となった。被災者はもとより、救助に向かった隊員たちの2次被害の恐れがあったからだ。そこで、第12化学防護隊も派遣された。

化学防護隊とは、「NBC(核・生物・化学)兵器」に対処する専門集団だ。飛び交う噴石への対応も求められた。頑丈な装甲車が有効だと考えられたが、大量の火山灰のため、タイヤ式の装甲車では動けなくなる可能性がある。


雲仙普賢岳での経験が生きる

「ヘリ機動を主とする第12旅団には、タイヤでなくキャタピラ式の重装甲車は配備されていない。そこで急遽、富士にある普通科教導連隊から、89式装甲戦闘車4両と、40年前の装備である"古参兵"73式装甲車を1両借りたんです。これら装甲車は頑強な車体を持ち密閉性も高いため、ガスにも耐えられますから。今回は、雲仙普賢岳での災害派遣の経験が大いに生きました。早くから装甲車に目を付けたのもあの時の経験があったから。また、雲仙ではヘリのエンジンに火山灰が入り込み、飛行中にトラブルを起こしたこともあったため、今回はヘリの使用に細心の注意を払いました」(東部方面総監部)

そのため、テレビでも連日報じられ、大活躍した万能ヘリUH-60JAは、「エンジン吸気口にフィルターがかけられており火山灰対策も万全」(前同)だった。同ヘリの愛称は「ブラックホーク」。米軍では特殊部隊の輸送にも使われているほどで、イラクやアフガンで活躍している。夜間や荒天に強く、パワーもあり、輸送能力も高い。ブラックホークは、山岳レンジャーたちを乗せて、火山灰で埋もれる山頂を目指して飛行。気流の激しい地上3000メートルの場所でのホバリングによる救助は至難の業だったが、彼らは恐るべき練度と勇気で、それを見事やってのけた。

日本最大の霊峰・富士山が万一噴火した際も、第12旅団並びに第13普通科連隊の山岳レンジャーたちが出動するのは間違いない。

(この項=取材・文/ジャーナリスト・菊池雅之)

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