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一般家庭にもあった「仁義なき遺産相続」骨肉バトル

[週刊大衆11月03日]

相続争いなんて縁のない話。そうお考えの皆さん。わずかな金銭、いや負債でも もめ事は起きるんです。その戦慄の実態 とトラブル回避の方法をプロに聞いた!

宇津井健ややしきたかじんら有名人の遺産を巡るトラブルが一部マスコミで報じられ、その記憶も新しい10月某日――編集部の電話が鳴った。
「姉にだまされ、遺産を放棄するハメになったんです」
その額、なんと10億円という! 取材班は詳しい話を聞こうと、電話の主・A氏(60代)の住む葛飾区に向かった。

その話が本当だとすれば、あまりにもひどい話だ。 A氏の話を総合すると、3年前に亡くなった父親の遺産、約10億円を、姉2人と亡くなった妹の子どもたちが、多く手に入れようと結託。 A氏がうつ病であるのをいいことに、言葉巧みに"相続放棄"をさせ、これに抗議すると、事件をデッチ上げられ、逮捕までされてしまったという。

「私は父の死亡時、うつ病が深刻で、まともな判断ができない状況でした。それをいいことに姉たちは、遺産が10億円もあることを隠し、毎月15万円あげるからと言って、私に"相続放棄"の書類にハンコを押させたんです」(A氏)
A氏はうつ病のため定職に就けず、生活保護を受けていたから、月々15万円の現金が手に入ることを喜び、ハンコを押した。 だが、口約束だったため、証拠もなく、月々の15万円は未払いのままだという。

ほどなく、だまされたことに気づいたA氏は抗議。 すると、姉は「相続放棄」は本人の意思で行ったことだとして、相続権を有していない確認訴訟を昨年提起。一審がA氏敗訴に終わり、控訴の準備を進めていた渦中の今年2月、A氏は恐喝容疑で逮捕されてしまう。
「姉の代理人弁護士と電話で話していたところ、私が"俺は医者から、あと1年しか生きられないと言われた。その前に皆、殺してやる"と脅したというんです。私はそんなこと言ってません!」(A氏)

この件、録音テープなどの証拠がまったく存在しないにもかかわらず、警察は弁護士の証言に基づいて、A氏を逮捕。 勾留中、相続権の裁判の控訴期間(2週間)が過ぎてしまったため、A氏の敗訴が確定したという。
「姉と弁護士が結託してやったとしか思えません。それにしても、なぜ、弁護士の証言だけで逮捕なんですか。裁判所も、生活保護の私より、弁護士の言うことを信用するんでしょうか。姉とは、父の生前は仲良かったのに、態度が豹変して……。本当に悔しいです」
そう言って涙ぐむA氏。
さらに、A氏によれば、本来なら遺産の2分の1(5億円)が母親に支払われるはずだが、90代の母親が認知症であるのをいいことに、姉らは財産の引き渡しを渋り、母親の後見人とももめているという。

あまりに壮絶な話だが、相続放棄の再審を考えているというA氏のため、相続の相談を数多く受けている 「堀敏明法律事務所」(東京都中央区)の堀敏明弁護士に助言をもらうと、 「このケースでの再審のハードルは非常に高いと言わざるをえません。15万円の支払いも"口約束"だけだから、厳しいでしょう」との回答。 さらに「遺産相続という問題は、一般の人でも他人事ではありませんよ」と、こう続ける。

「遺産にはマイナス(借金)分も含まれ、たとえば亡くなった父親が知人の借金の連帯保証をしていれば、相続放棄といった手続きをするなどの対策をしなければ、連帯保証は相続人に引き継がれてしまうんです。財産がないから関係ない、では済まされないケースも多いんですよ」
と、預金はなくとも借金には覚えのある記者の心まで震え上がらせるのだ。

では、我ら庶民が心配すべき相続トラブルには、どんなものがあるのだろう。
会社員のB氏(50代)一家は都内の一軒家に母親と同居していたが、今年3月、母親が亡くなった。
一軒家の所有者は母親で、ほかのめぼしい財産はない。父親はすでに他界しており、その一軒家をB氏と弟が2分の1ずつ相続する形になった。 すると、弟が家を売ろう、そして売却代金を半分寄越せと言いだしたことから、バトルが勃発。

「弟は定職に就かず、借金漬け。早く遺産が欲しいのでしょう。当初、自分の遺産分を現金でくれと言われましたが、私にはそんな預金はありません。かといって、思い入れのある家には住み続けたいので、売却する気にもなれない。弟には、私はこれまで母の介護をしてきたんだから、毎月数万円払ってやる、それで我慢しろと言ったんです」(B氏)
すると、数日後、B氏の自宅前に首なしの猫の死体が転がっていたという。 認知症の父に兄が馬乗りに…

「B氏のようなケースでは、とりあえず2分の1ずつ所有権登記し、家賃名目で、B氏が月々、弟に相場分の支払いをするのが、一つの解決方法でしょう」
こうアドバイスしてくれたのは、遺産相続に詳しい「勝部法律事務所」(東京都たまき中央区)の勝部環震弁護士。 ただ、猫の死体が弟の仕業とすると、うまくいくかどうかわからないが……。続いて、C氏の場合を見てみよう。

トラブルの元は「遺言書」だった。
2年前に父親が死去。遺言書があり、「遺産はすべて兄に」と書かれていたが、弟のC氏はそれが"偽装"されたと考え、無効確認訴訟を起こして争っている。
「父は長く認知症でした。面倒は兄が見ていたんですが、亡くなる1か月ほど前、私の妻が家を訪ねると、兄が父に馬乗りになって何か紙に書かせているのを見たと言うんです」(C氏)

それを目撃した時期と遺言書(自筆証書遺言)の日付は、ほぼ一致するという。
この件に関して勝部弁護士は、
「目撃したというだけでは難しいでしょう。このように私製の遺言書には限界があるんです。では、公証人役場が作成してくれる『公正証書遺言』は大丈夫かと言えば、そうとも言えません。たとえば遺言人が病気の場合、公証人が出張して作成してくれます。ですが、その実態はと言えば、あらかじめ親族が作成したとされる遺言書の下書きを公証人が読み聞かせ、遺言人が"はい"と答えただけでOKというケースもあるんです」

ただ、やはり遺言書は、どんなものでも作成しておくと、一般的にトラブルが減るということで、残すケースが増えているとか。
次に遺言書がなかったため、後妻に手玉に取られたD氏(50代)のケースを見てみよう。
約1年前、父親が死去。 小さな会社を営んでいた父には、それなりの財産があるはずだった。だが、数年前、父と再婚した後妻は、彼女と同様に法定相続人であるD氏に、
「お父さんは借金も多く、差し引き2000万円ほどしか遺産はないの。だから、あなたは1000万円で納得して」
と言って合意書にハンコを求めてきたという。

「確かに、大きな不動産はなかったとはいえ、あの守銭奴の後妻が正直に半分を出すはずがない」(D氏)
そう思ったD氏は、後妻に亡父の財産状況開示を求めたところ、態度が豹変。鬼の形相で
「私を疑うの?それなら一銭もやらないよ!」と言い放ったとか。
大増税で争いはさらに熾烈に

「こうしたケースは弁護士を立てても、本人が遺産総額を知らず、相手が開示しない以上、特定するのは難しい。どんなに怪しくても泣き寝入りするケースが多いですね。だから、遺言書を生前に作り、確認しておくことが望ましいのです」(前出・堀弁護士)

来年1月1日から相続税の「大増税」が始まる。
「これまで標準世帯(夫婦と子ども2人)は8000万円まで相続税がかかりませんでした。その基礎控除額が来年から4800万円まで下がる。すると、一般家庭にも相続税がかかる恐れがあるんです」(前同)

一般の家庭は預貯金が少ないため、相続税を納付できず、持ち家を安値で売却しなければならないなどの最悪のパターンもある。
「当然、相続人の間の争いも、今以上に熾烈を極めるでしょう」(堀弁護士)

ああ、なんて嫌な世の中だろう……。

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