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強制執行業者の激ヤバ仕事現場

[ヴィーナス10月21日号]

強制執行業者の激ヤバ仕事現場

見知らぬ人の住まいに正々堂々と土足で入り、一気呵成に片づける!知られざる"お掃除"の仕事が今、明らかに。その衝撃の実態とは!?

うず高く積まれた衣類の山や日用品で汚れた部屋、玄関はおろか、家の前の公道にまでゴミが溢れ出る住宅……。"汚部屋"や"ゴミ屋敷"と称される、その壮絶な有様をテレビなどで目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

「そういう現場に初めて派遣されたときは、そりゃ驚きましたよ。本当に足の踏み場もないぐらい。まぁ、気にせず、文字どおり土足でドカドカ入りますけど」こう語るのは、7か月前から「強制執行業者」でアルバイトとして働く都内在住のカズキ氏(29=仮名=以下同)だ。
言葉としては耳にするが、実際はどんなものかよくわからない「強制執行」。だが、本誌は建物の明け渡しの強制執行に携わるカズキ氏と知り合い、その仕事内容を密着取材する機会に恵まれた。

「基本的な仕事は、賃料が未払いの物件や部屋の中にある荷物の梱包や搬出、それと清掃作業。引っ越し作業をイメージしてもらえればわかりやすいです。一般募集はしてないんじゃないですかね?俺もフリーターでフララフしてるときに友達に誘われて、今の会社に。会社っていっても、その会社のオフィスには1回も行ったことないですけどね(笑)」
聞けば、契約書らしきものを交わしたことはおろか、労災保険への加入もしていないという。仮に作業中にケガをしたら、どうするのだろうか……。
建物受け渡し請求から強制執行まで

「基本、土・日は休みでシフト制。空いている日を前の週の金曜日までに会社の担当者にメールしておくと、だいたい、前日か前々日の夕方には集合時間と住所が送られてきます」カズキ氏に実際の仕事の様子をたっぷりと語ってもらう前に、まずは、建物明け渡し請求から強制執行までの流れを、債権者(大家)の立場から簡潔に説明しよう。

たとえば、家賃の滞納者が催促に応じなかったり、近隣のトラブルや苦情が来て退去してもらいたい住民がいるような場合、(1)借主と保証人に内容証明郵便送付(契約解除・未払い賃料の催促など)(2)反応がなければ、訴訟提起(訴状を裁判所に提出)(3)裁判所で口頭弁論(4)判決言い渡し(5)判決確定(6)強制執行申立(7)執行官との打ち合わせ(8)明け渡し催促期日の設定(9) 明け渡し催促期日における催促(10)明け渡し断行(強制執行日)(11)明け渡し完了となる。この(7)において、カギ屋の手配や荷物の搬出や保管の手配がなされるのだが、後者を担うのが強制執行業者であり、(10)の強制執行日に、執行官立ち合いのもと、大家さんがカギを開けた他人の家に入っていくのである。ちなみに(7)で出てくる執行官とは、地方裁判所下に置かれる独自の司法機関である。裁判所の命令を受けて現況調査を行ったり、(9)や(10)で現場に立ち会う裁判所職員だ。
現場が埼玉県でも交通費は実費負担

再び、カズキ氏の説明に耳を傾けよう。
「作業当日の朝は、起きたら、起床連絡を、集合の1時間前までに現場のリーダーにメールします。で、現場に現地集合。早いときは朝5時とかもあります。恰好ですか?汚れてもOKな黒い無地のTシャツやトレーナーに、カーゴパンツが基本。靴は自由。ゴム付きの軍手は必須ですね。タオルやマスクなんかも自分で用意しています」

カズキ氏は耳にピアスをつけているが、「作業中はピアスを外しますよ。髪を染めている人は無地のキャップを被らされます。見えなきゃいいんです。俺以外も、ほとんどが20
代~30代じゃないかな。外国人や女性と一緒になったことはありませんね」

不思議なことに、集合したら、まず、その日の給料が支払われるという。
「基本は日給8000円。作業は平均3時間ぐらいかな。でも、開始30分で終わっても、6時間でも、この金額です。ほとんど片づけられている部屋に当たった日は超ラッキー(笑)。明細書?そういえばもらってないな。手渡しで、そっと渡されますからね。どういう項目なんだろ?」

法の名の下に強制執行を断行するのに、何やら法律的にグレーな様子が垣間見えるが……。

「あ、でも、8時間近い作業になった日は、1万円でしたね。ただ、交通費は自腹なんですよ。その日は埼玉の現場だったんで、結局、手取りはいつもどおりでしたね(笑)」
カズキ氏は訪れたことがないという会社のオフィスは都内に存在(するはず)。

現場は、都内はもちろん、神奈川、千葉、埼玉の関東近郊ならば、どこへでも行く可能性があるという。
「大豪邸でもなければ、引っ越しのときに10人も業者さんが来ることはありませんよね?でも、こっちは、他の会社の人たちと合わせて30人ぐらいでダダダッと片付けますからね」

神奈川県・横浜市。その日の現場は、元は飲食店だった建物と思われる2階建ての古い民家だった。
「歩道にもゴミが溢れ返ってる家でしたね。うちの会社ではないけど、2トントラックも5台来て、土嚢とかに使われる、あの麻の袋を何百枚と渡されました」

玄関に到達するまでに軽く1時間。ドアを開けると、そこには……、「玄関から俺の身長以上に山積みにされた洋服。奥を覗くと、6畳のワンルームもすべて洋服。窓もふさがっていて、換気もできない中で3時間、5人ギュウギュウで麻の袋に詰め込みまくりましたよ」
猫と暮らす孤独な老人から死体まで

日用品やゴミならば問題ないが、貴重品の扱いには注意が必要らしい。
「パソコンとか通帳、請求書、遺影なんかは赤いガムテープを貼って会社で保管します。こういうものは勝手に処分できないんです。その後?俺らは捨てるだけなんでわからない(笑)」

作業後、最後にドアに張り紙をし、カギ屋がカギを取り替えて、この日は終了した。
「基本、強制執行をされる側は現場には来ないもんですが、作業中に来て、"やめてくれ!俺の部屋だ!"って騒いで暴れることもあります。俺らは別に悪いことをしてるわけじゃないのに、なんだか辛い気持ちになりますね……」

その一方、こんなケースもあったという。
「東京の下町にあるその部屋には、お婆ちゃんが大量のペットの猫と住んでたんですが、なぜか、当日、作業を見守っているんです。で、"ありがとう、綺麗にしてくれて"って言いながら、俺らに金を配ろうとするんです。ボケちゃってるのか、状況を把握してないんでしょうね……」
近隣からの苦情か家賃の滞納か、事情はわからないが、孤独な老人のその後も気がかりだと言う。

「2時間に1回はリーダーの号令で休憩に入ります。道端での休憩中は、ほとんどがギャンブルと女の話。一応、腕章を巻いているから、通行人に眉をひそめられない程度には笑い声に気をつけながらですけどね」

そんな、どこにでもいる若者の彼ら。だが、その笑顔を一気に凍らせる現場もあるらしい。
「俺は実際には経験したことないけど、先輩から聞いた話だと、風呂場から死体が見つかったこともあったみたいです。大騒ぎになりそうなもんですが、"警察に任すぞ!さ、解散!"となって、5分で仕事が終わったらしいです」

日給で考えれば"美味しい"だろうが、後味の悪いトラウマになってしまいそうだ。
取材の最後に氏が発した言葉とは?

「やっぱり、汚部屋やゴミ屋敷に住んでいる人って、どこか、おかしい人が多いんじゃないかな、と思いますね……」
カズキ氏が先月、作業で訪れたのは、千葉県松戸市の築数十年と思われる一軒家。
「家の外壁だけでなく、ガレージの車にもツタがビッシリ絡まっていました。家に入ると、床はところどころ抜けるし、窓という窓は、なぜかアルミホイルで光が入らないように完全に覆われているし……。床には雑誌が散乱してたんですが、見たこともない古い戦時中の雑誌もありました。捨てられないもんなんですかね……」

3時間近くに及んだ今回の密着取材。最後にカズキ氏がつぶやいた言葉が印象に残った。「俺なんて、まだ働いて短いですが、社会の歪みを垣間見る仕事だと思いますよ。自分だって、家賃が払えなくなったり、一人寂しく老いていく可能性だってありますから……」
今日も、どこかで強制執行が行われている――。

強制執行業者の激ヤバ仕事現場

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