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【武豊】たった一度の事故が輝きを消すことも

[週刊大衆12月22日号]

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
たった一度の事故が輝きを消すことも


人生はトーナメント戦じゃない。ファイティングポーズを取り続ける限り、何度でもやり直せる――。
一流と呼ばれるジョッキーでも勝率が2割に届かない世界で生きている僕らにとって、いい意味で、負けることに慣れるのも大切なことです。
1日12レース。ドラマのように連続しているようでいて、ひとつひとつが独立した違うレース。パートナーも違えば、ライバルたちの顔ぶれもまるで違う。その中で闘っていくためには、勝っても負けても、常に新しい気持ちで次のレースに臨むことが求められます。

しかし。時にはたった一度のアクシデントがすべての輝きを消し去ってしまううこともあります。あれは……デビュー8年目、オグリローマンで「桜花賞」を勝った年のことでした。
サドラーズウェルズと並ぶノーザンダンサー系の後継種牡馬に挙げられるダンジグを父に、アメリカのGⅠを2つ勝っているアルセアを母に持つアメリカ生まれの女の仔。
ヤマニンパラダイスと名付けられたその仔は、師匠・故武田作十郎先生と並び、僕にとっては絶対に忘れることのできない故浅見国一先生が、大きなタイトルを確信したほどの逸材でした。

デビューは、1994年9月10日、中京競馬の新馬戦。レース内容もさることながら、驚いたのはそのタイムです。レコードだろうなとは思っていましたが、古馬のレコードに0秒3差と迫るその時計を見た瞬間、背中がゾクリと震えました。
続く2戦目、「いちょうS」もレコードで快勝。3戦目の舞台として浅見先生が選んだのが、世代ナンバー1決定戦であるGⅠ「阪神3歳牝馬S」……現在は、「阪神ジュベナイルF」と呼ばれるレースです。
跨るたびに強さに心が弾んだものの

外国産馬のため、クラシックに出走できない彼女にとって、ここは負けられないレースです。普段なら乗っている僕自身が力まないようにと心がけるところですが、このときは、まるで負ける気がしませんでした。
――競馬は何が起きるかわからない。
細心の注意を払いながら、それでもなお、心には余裕を感じていました。
単勝1.2倍。
彼女はそんなファンの期待に応え、デビューから3連連続のレコードタイムで大きなタイトルを手に入れたのです。どこまで強くなるんやろう!?
彼女に跨るたびに、大きく心が弾んでいたことを思い出します。

ところが……。その後、
故障を発生し、残念ながら、大舞台に進むことができませんでした。
今週末は、阪神競馬場を舞台に、彼女が最高に光り輝いたレース、GⅠ「阪神ジュベナイルF」が行われます。
僕のパートナーを務めてくれるのは、レオパルディナ。前走GⅢ「ファンタジーS」は外枠が響き、力を発揮できませんでしたが、新たな気持ちで挑みたいと思います。
みなさん、今週末は阪神競馬場で会いましょう!


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

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