日刊大衆TOP 芸能

【追悼秘話】名優・菅原文太 知られざる壮絶人生

[週刊大衆12月22日号]

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

また一つ巨星がこの世から去っていった。伝説の大物役者が生前に残していった逸話の数々を誌上大公開!

「まさか高倉健さんに続いて、菅原文太さんまでもが……。たった今、ニュースで知ったばかりですが、ショックのあまり、言葉も出ません」
俳優の菅原文太さん(享年81)の訃報が伝えられた12月1日、本誌がある芸能プロ関係者に取材したところ、こんな反応が返ってきた。
「高倉健さんも菅原文太さんも、まさに昭和の大スターです。健さんの死は8日間伏せられていました。一方、文太さんの死が発表された12月1日は、すでに葬儀が済んだあとのこと。転移性肝がんによる肝不全のために都内の病院で亡くなったのは、11月28日です。3日間、文太さんの死は伏せられたわけですが、奇しくも"男の中の男"と呼ばれた大スターは、死に様も似ていますね」(前同)

しかしながら、2人の晩年の過ごし方は対照的だったようだ。
健さんが最期まで映画にこだわっていたのに対して、文太さんは2007年に膀胱がんを発症して以来、役者の世界からは遠ざかり、山梨県で農業生産法人「竜土自然農園」を発足。農業の大切さを訴えながら、平和活動にも奔走していた。
「文太さんは、"戦争だけはしちゃいかん"と、全国を飛び回って講演活動をしていました。11月1日には、沖縄県知事選で翁長雄志候補(12月10日より知事就任予定)の集会に出席、当選を大きく後押ししました。"弾はまだ一発残っとるがよ"と、代表作『仁義なき戦い』の決めゼリフで会場を沸かせていましたね」(スポーツ紙記者)

映画評論家の秋本鉄次氏は、文太さんの死を悼みながら、スターの経歴を解説する。
「よく『仁義なき戦い』が文太さんの代表作だと言われますが、『人斬り与太』が、深作欣二監督と文太さんコンビの最初の作品なんです。映画が公開された1972年は、全共闘全盛時代の直後のことですね。私を含めて、当時の若者たちは暴力なくして腐敗した大組織は破壊できないものなんだと、この映画を見て、少なからず影響されたものです」
ヤクザの組長など荒々しい役が多かった文太さんだが、実際はインテリな少年時代を送っていた。
「宮城県の仙台市生まれで、出身高校は進学校で有名な仙台一高。新聞部に所属していて、部の1年後輩である作家・井上ひさし氏の原稿をビリビリに破いた話は、同校でも伝説として語り継がれていますね」(映画ライター)
進学校でもヤンチャなエピソードを残しているのはさすがのひと言。

卒業後は早稲田大学に進学したが、芸能界に足を踏み入れたこともあり、1年で中退。新東宝で映画人生のスタートを切り、後に東映へと移籍するが、当初は大した役をもらえなかったようだ。
当時の文太さんをよく知る俳優仲間の一人である曽根晴美さんは、懐かしそうに振り返る。
「あの頃は、オレにしても文太さんにしても、金には苦労していてねえ。ギャラは安いし、仕事も少なかったからね。東映の京都撮影所に缶詰になって撮影が始まっても、旅館やホテルは、役者が自分で手配したもの。小さなホテルに泊まって、毎晩のように焼酎飲みながら、仕事の愚痴だよねえ。酒はね、あの時代、だいたい焼酎だったね」

また、つきあう仲間も文太さんらしかったという。
「それに文太さんは、山城新伍とか、渡瀬恒彦とか、松方弘樹とか、もっぱら男とばかり、つるんでいたね。男の生き方がどうしたとか、将来はこんな役者になるとか、こんな仕事やってみるぞ、とかね」(前同)
役者の道を懸命に歩む文太さんがスター街道を突っ走るキッカケとなった作品は、やはり73年から始まる『仁義なき戦い』のシリーズだ。

今からちょうど1年前、本誌は文太さんに取材しており、こんな裏話を披露してもらっている。
「今の脚本家と違って、あの頃はみんな固太りの人で、(『仁義なき~』の脚本家も)ただ机に座って書いただけではなくて、舞台になった広島のヤクザ社会に1か月くらい潜入して脚本を書き上げたんだな。脚本家自身、迫力ある人だったけど、ヤクザにひどく脅されたっていうんだから。"おまえ、何しに来たんやッ"ってね」
役者もスタッフも死に物狂いで作品作りに挑んでいたからこそ、全編が鬼気迫るシーン満載の作品になったのだろう。

75年にスタートした『トラック野郎』ではコワモテの極道から一転、電飾輝く"デコトラ"のハンドルを握るコミカルなトラックドライバーを演じ、大人気を博する。文太さんの役者人生において大きな転機となった作品と言えよう。
その『トラック野郎』で文太さんの相棒役、やもめのジョナサン役を演じた愛川欣也さんは訃報を聞いて、こんなエピソードを明かしている。
「『トラック野郎』の頃、オレはすでに酒をやめててね。文ちゃんは、よく飲んでた。もしオレが飲めたら、赤ちょうちんでもどこでも、話ができたなあと。"(つきあえないで)悪かったな"と言いたい」

酒を飲みながらアドリブ演技

『トラック野郎』の撮影に携わったスタッフは、活気に満ちあふれた現場だったと、当時を振り返りながら話す。
「1日の撮影が終わったら連日のように宴会していました。酒場でトラック野郎たちが盛り上がるシーンの撮影では、ホンモノの一升瓶を使って、酒を飲みながらアドリブで演技したりしたもんです」
撮影現場での豪快なエピソードが語られる一方、健さんと同じで大スターらしく、私生活はあまり表に出さない人だった。
「文太さんが結婚したときも、披露宴を挙げると映画のイメージが崩れると言って、年賀状で知人に結婚の報告だけで済ませたりしていましたね。ただ、そんなことがあったからかどうかわからないけど、文太さんは文子夫人に頭が上がらなかったといいますね」(映画配給会社幹部)

愛妻家であると同時に、非常に家族思いな人物だったようだ。
「01年に俳優だった長男(当時=31)を踏切事故で亡くした際には、あまりにショックな亡くなり方だったこともあり、周囲に"もう、仕事する気にならないよ"と、柄になく弱気な面を見せていたね」(前同)
ただ、"昭和の頑固おやじ"らしく、子どもたちには厳しかった。実娘を知る人物によると、
「娘さんは若い頃に家出同然で家を飛び出したそうです。長男とは違い、彼女は芸能界にはまったく興味を示さず、海外に留学して現在もアメリカで生活しています」

しかし、そこはやはり親子。その生き様は父に通じるものがあるという。
「ボーイフレンドがアメリカ人のギャンブラーで、ポーカーで生活するプロなんです。そのためか、彼女もラスベガスのバックギャモンというゲームの大会で優勝して、数百万円の賞金を獲得していましたね。この10月に娘さんが日本へ帰国し、文太さんと一緒に出演しないかというオファーがテレビ局からあった際も辞退。その頑固さは、やっぱり父親譲りなんでしょう」(前同)
とはいえ、娘さんも文太さんのことを心底愛していたようで、
「彼女、父親の山梨の農園の名刺を知り合いに配って、嬉しそうに"今、父親はこんなことしているんですよ"なんて紹介していましたよ」(同)

「それは菅原文太じゃない」

俳優仲間に対しても面倒見のいい兄貴分だったようだ。
「梅宮辰夫さんがクラウディア夫人と結婚する前のこと。初めてのデートの際、梅宮さんは照れ臭くて、文太さんに頼んで付き添ってもらったそうなんです」(芸能事務所関係者)
晩年の文太さんは、そうしたお茶目な一面を、バラエティ番組でも見せるようになっていた。
「文太さんが『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の"ビストロSMAP"のコーナーに出演したときのことです。本番中であるにもかかわらず、文太さんは大好きな焼酎を飲み続けたんです。さすがに、司会の中居正広から"もう文太さん、酒臭すぎますよ"と言われると、"映ってるか? ああ、顔真っ赤だな!"と言って笑っていましたが……」(テレビ誌記者)

芸能界での豪放磊落(らいらく)な姿とは違って、私生活は至って庶民的だったという。
「中華料理が大好物で、ボクシングやプロレスなどの格闘技のファン。読書や、パソコンでネットサーフィンするのが趣味という、知的好奇心が旺盛な一面もありました。外出する際には一切、車を使わず、電車などの公共の乗り物を使っていたそうです」(芸能リポーター)

しかしながら、プライベートでも豪快な仰天エピソードも残している。
「文太さんの自宅の冷蔵庫の中には、大量の点滴用の液剤が入っていたそうです。それを見た人がビックリして聞いたら、文太さん、ナント、"飲むんだよ"と言って、点滴の袋をハサミで切り、コップに注いで飲み始めたというんですよ。菅原文太は、疲れがたまると点滴用の液剤をそのまま飲んでいた!――この話は、今や伝説になっています」(前同)
亡くなった今となっては真偽を確かめる術もないが、大物俳優らしいエピソードだ。そして人生の最期の瞬間までとことん"男"というものにこだわった。

「文太さんが膀胱がんを発症したとき、担当医に膀胱の全摘出を勧められたんです。そこで文太さんは、親交のあった諏訪中央病院の名誉院長に相談したそうです。そのとき、文太さんの残した言葉が、彼の生き様を象徴しています」(芸能プロ関係者)
文太さんは、こう言って手術を拒否することを決意したという。
「おしっこ袋をぶら下げて生き延びたとしても、それは菅原文太じゃない」
死を前にしても、"男"にこだわり続けた男。文太さんが残していったのは、現代に生きる男たちが忘れきょうじつつある心意気や矜持だったのではないだろうか。

不世出の大スターのご冥福を心より祈りたい。

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.