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安倍首相「恐怖のマスコミ支配術」完全公開

[週刊大衆02月02日号]

歌うことも笑い飛ばすことも許されない……どこか遠くの外国の話なのだと思いたい。これは“美しい国”なのか?

「全部ダメって言うんだよな。あれは腹立ったな」(爆笑問題の田中裕二)
お笑いコンビの爆笑問題が7日未明に放送されたTBSのラジオ番組『JUNK爆笑問題カーボーイ』で、3日に放送されたNHK『初笑い東西寄席2015』に出演した際、事前に用意していた内容を「政治家さんのネタは全部ダメ」と、一方的に没にされたことを明かし、波紋を呼んでいる。

「爆笑問題が司会を務め、漫才も披露した高視聴率番組でしたが、裏では検閲まがいのことが公然と行われていたというんですからね……」(テレビ誌記者)

真相はいかに。
NHKは本誌の取材に対し、事の経緯について「娯楽番組の際の通常の打合せを行いました」(広報局)というが、「打合せの中身に関することについては、普段からお答えしておりません」(同)という。

だが、あるNHK関係者が打ち明ける。
「権力におもねるというか、そういった問題に触れたくないという空気は強まっている気はします」

同局広報局は、そういった雰囲気は「ありません」と否定するが、
「マスコミは第4の権力ともいわれ、その中でも最も大きな影響力を持つNHKが! まさか、まさかの話ではあるんですが……」
と憂い顔を隠さないのは、舌鋒鋭い論評で定評がある、さる放送評論家だ。

「正直、いまだNHKの中立性、公共性を信じたいんですが、ここ最近の姿勢を見ていますと、残念ながら権力の走狗になったと断じざるをえません」(前同)

彼がこう嘆くように、同局に対して疑義が呈される事態は頻出しているという。
「昨年大みそかの紅白歌合戦にも、キナ臭い話が流れています」(テレビ誌記者)

平和へのメッセージソング『ピースとハイライト』を歌ったサザンオールスターズの同番組起用、選曲に当たって、裏で凄絶バトルがあったというのである。
「桑田佳祐はヒトラーを思わせるチョビ髭で登場。"都合のいい大義名分で争いを仕掛けて裸の王様が牛耳る世は……狂気"と高らかに歌い上げました」(前同)

これを放送したところから見ると、爆笑問題の件とは姿勢が逆のようにも思える。ところが、この歌詞が勝手(=都合のいい)な憲法解釈(=大義名分)で集団的自衛権を容認した安倍首相(=裸の王様)を揶揄したものと、NHK番組スタッフが解釈。サザン側に"自粛"を求めたという。

「NHK側は、最終段階まで"政治色は出してほしくない"と、サザンに強談判。ただ、最終的にはサザン人気の前にNHKが折れましたが、裏では相当もめたようです」(同)
NHKは「そのような要請をした事実はありません」(広報局)としているが、先のNHK関係者は「さもありなん」だという。
辛口で鳴る政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が嘆く。
「アーティストは表現の自由が担保されている存在です。それをメディア側が規制していくというのは、正直、NHKもここまで落ちたか、の感は否めません」

さらに、こんな話も。長州藩士・吉田松陰の妹・文(ふみ)を主人公とする放送中の大河ドラマ『花燃ゆ』の決定に当たり、
「その舞台、山口県は安倍首相の地元。これが、NHKが時の権力に"配慮"した結果だ、と言われているんです」(地元関係者)

そして地元に莫大な経済効果をもたらすことにもなる、と囁かれているのだ。
時の権力を厳しくチェックし、国民から絶大な信頼を得ていた"みなさまのNHK"が、あろうことか"安倍さまのNHK"に――? 一体、何があったのか?

「12年に誕生した第2次安倍政権は、すべての面で第1次政権時代の教訓を生かそうとしているリベンジ内閣です。その大きな教訓の一つとしているのが、マスコミとの距離感。これを間違えば政権の存亡自体に響くと、政権幹部は深く肝に銘じているんです」(前出・鈴木氏)

第1次政権時、多くのテレビ局が「消えた年金」問題や閣僚の失言問題を大きく取り上げ、それが07年参院選の敗因、最終的には政権崩壊へつながったと安倍首相は見ているという。
「その同じ轍を踏むまいと、第2次安倍政権では対マスコミ戦略に、かなりの重きを置いています。なかでも、テレビ界の巨頭であるNHKの攻略には、菅義偉官房長官、世耕弘成内閣官房副長官らを中心とする"マスコミ対策班"が全精力を注いでいます」(ベテラン政治記者)

その安倍内閣とNHKは、かつて犬猿の仲だった。
発端は01年。NHKが"従軍"慰安婦問題番組を放送しようとしたところ、当時の安倍官房副長官がクレームをつけ、番組改変を巡って丁々発止。
「結果的には、NHKは番組を改変、放送したといいます。内部から、これが介入の結果であるという声も上がるなどし、問題は紛糾、遺恨の発端でした」(前同)

ただ、この"検閲"(安倍首相は否定)で、かえって逆風を受けた安倍首相は、
「第2次安倍政権発足から以降は"搦め手"で(NHK)攻略に乗り出してきたんです」(前出・NHK関係者) 選挙報道が前回比4割減に!

その第一手が、首相が人事権を持つNHK経営委員の交代だった。
「ここに安倍首相は"お友だち"を強引に送り込み、大きな布石としたんです」(前同)

この12人の経営委員会によってNHK会長人事は決まるのだが、安倍首相はまず、そこを牛耳ったのだ。
そして、第2次安倍政権発足から1年後の13年12月、首相は"お友だち"籾井(もみい)勝人氏をNHK会長にねじ込むことに成功する。
「この籾井会長は、"政府が右ということを左と言うわけにはいかない"と公言。これは、政府の広報機関になるといっているのと同じ。マスコミとしては、白旗を揚げたも同然です」(同)

この籾井会長だが、"政治ネタ検閲疑惑"に関しては、8日の定例会見で「個人名を挙げてネタにするのは品がない」と、逆に爆笑問題に注文をつける始末。

「安倍首相は、まんまと会長の首をすげ替え、NHK乗っ取りに成功。それにしても、新たな会長となった籾井氏は、正義感を持たない人物が警察のトップに立ったようなもの。言語道断の人事です」(同)

こうした搦め手で局内の空気も変わっていったと、このNHK関係者は憤る。
「爆笑問題の太田光も件のラジオ番組で"自粛"で没にされたと言っていました。むしろ、それが問題です」

そう、これこそが安倍流操縦術の成果。
「従軍慰安婦誤報問題で朝日新聞が自滅、そんな中、権力のチェックという意味でNHKには期待が集まっていたんですが……」(前出・放送評論家)

柔らかく締めつけ、事ここに至り、安倍首相の対NHK抗争は全面勝利、数々の"検閲"がまかり通ることになった、という。さらには、直接的な"圧力"も。

安倍自民党が大勝した昨年暮れの総選挙。その解散直前の11月20日のことだ。
自民党が突然、萩生田(はぎうだ)光一党筆頭副幹事長、福井照党報道局長連名で〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正確保についてのお願い〉なる文書を、在京キー局に突きつけたのだ。
「文書自体は丁寧で、お願いする形を取っていましたが、その中の一文"街頭インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたい"とのくだりに、多くのテレビ関係者が凍りついてしまったんです」(制作会社関係者)

街頭インタビューは、庶民が何を感じ、どう考えているか、その声や実感を伝える選挙報道にはなくてはならない大切な取材方法。
「そこには当然、権力側にとって耳の痛い話も出てくるでしょう。それを公平中立の名の下、報道するなと、事実上の圧力をかけてきたんです。この要望書以降、街頭インタビューを放送すると自民党から抗議が来るかもしれない、なら、いっそのこと、やめてしまえとばかり、各局の街頭インタビューは激減しました」(前同)

街頭インタビューだけではない。選挙報道の時間自体も、前回衆院選(12年12月)に比べて約4割も減ってしまったのだ。

「民放は、総務相から放送免許が交付され、5年ごとに更新。また、NHKの予算は国会が承認。各社には、このような"縛り"があり、今回のような与党からの要望書を前にしては、萎縮せざるをえないんです」(同) マスコミ幹部と「食事会」で…

これについて、各局は、「日頃から、多くの団体や個人から、さまざまなご意見やご要望をいただいており、個別の件について、お答えはしていません」(NHK広報局)
「申し入れは、受けております。これまでも選挙に際しては、各政党から公平中立な報道を求める申し入れを受けたことはあり、今回もその一環と受け止めています」(TBS広報部)
「文書を受け取りましたが、従来から放送法や公職選挙法に基づいて公平公正な選挙報道を心がけております」(テレビ朝日広報部)
「常に不偏不党、公平中立な報道を行っており、今後ともその方針は変わりません」(フジテレビ広報部)
「ニュース報道全般について、従来から公平公正かつ不偏不党であることに留意しており、今後もその方針に変わりありません」(日本テレビ広報・IR部)
と"毅然たる報道"を行っているとする。信じたいが、現実はどうだったか……。

また、安倍首相は圧力だけではなく懐柔策も駆使。
その一つがマスコミ幹部との「食事会」だ。マスメディアの動向に詳しい五十嵐仁・元法政大教授が言う。
「重要な政策や外交問題があるときに、必ず会合や食事会をしています。メディア側も、首相自ら出向いてきたら筆先も鈍りますよ。こうした癒着的関係で国民の知る権利は守られるのか、疑問は拭えません」

具体例を挙げると――。
13年12月26日、首相就任後、靖国神社を訪問した当日、東京・赤坂の高級日本料理店。14年4月1日、消費増税施行日当日に東京・四谷の居酒屋、翌日は赤坂の日本料理店。14年5月15日、集団的自衛権の行使容認を公式に表明した当日、東京・西新橋の高級すし店。さらに、総選挙投開票で大勝判明の2日後の14年12月16日、同じ西新橋の高級すし店……。

「おそらく、食事会では報道の指針などが密かに決められたと思います。実際、これら食事会以降、メディアの政権批判は極端に少なくなっています」(前出・ベテラン政治記者)

ちなみに、昨年、安倍首相の弟・岸信夫外務副大臣の次男がフジテレビに入社。このフジテレビの日枝久会長と安倍首相は、ゴルフや会食を重ねる親密な仲だ。
「常に不偏不党、公正中立」(フジテレビ広報部)に疑いが出なければよいが……。

歴代政権をつぶさに見てきた政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「古今東西、庶民は権威や権力者を笑いの対象にすることで、その愚かしさや間違いを浮き彫りにしてきました。なのに今、一人天下を謳歌する安倍首相は、動向をチェックするマスコミを骨抜きに。これは健全な民主主義とはほど遠く、愚かというしかありません」

パリでは各国首脳が自由を標榜し、デモに参加した。翻って、日本。これが安倍首相が目指す"美しい国"なのか――。

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