日刊大衆TOP 社会

イスラム国「日本人殺害脅迫事件」壮絶舞台裏

[週刊02月16日号]

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

内戦中のシリアと米軍撤退後、混乱を極めるイラクに巣くう武装集団が邦人を人質に日本政府を恫喝!! その時――!?

それは突然起きた――。

安倍首相が中東歴訪中の1月20日、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国(日本政府の呼称はISIL)」が、拉致した日本人2名の身柄と引き換えに72時間以内に、2億ドル(約240億円)を支払うことを要求。2名の人質の傍らで、目出し帽姿の男が、ナイフを片手に要求を述べる動画が公開された。
人質とされたのは、民間軍事会社社長を自称する湯川遥菜氏(42)と、中東取材経験豊富なフリージャーナリストの後藤健二氏(47)だった。
「24日には湯川さんと思われる人物の遺体の画像を持たされる後藤さんの動画が公開されましたが、政府は米情報機関等からの情報で、確度が高いことを確認しています」(全国紙記者)

その後、イスラム国側の要求が、2億ドルの身代金から、「ヨルダンで収監されている女テロリストの釈放」に変化したことはご存じのとおり。後藤氏はイスラム国側の要求を、英語スピーチで代弁させられた。
「後藤さんを巡っては一時、解放されるとの報道がなされました。これはヨルダン総合情報部(GID)が、イスラム国に潜入させているエージェントから得た情報だったようです。ヨルダンは交換条件として拘束されている自国パイロットと後藤さんの解放を求めましたが、イスラム国の幹部の一部がこれに反発したようなんです」(前同)

本稿の締切である29日夜現在もギリギリの交渉が続いているが、日本政府にとって一連の対応は苦難の連続だったという。
「エルサレムで第一報を受けた安倍首相は、即座にパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談し、人質解放への協力と情報提供を要請しました。間髪入れずに、ヨルダンのアブドラ国王、トルコのエルドアン大統領、エジプトのシーシ大統領ら中東首脳に対し、電話会談で協力要請をしています」(外務省関係者)

同時に、同行していた中山泰秀外務副大臣をヨルダンのアンマンに派遣。現地司令塔に任命している。「打てる手は尽くした」が、日本政府の本音だったという。

イスラム国が期限とした72時間が過ぎた23日の金曜日のこと。夜まで何も起こらなかったことで、ある政府高官は「メッセージが届いたんだろう」と自信ありげに語ったという。
「そもそも72時間というのは無理筋。元外務省主任分析官の佐藤優氏が指摘するように、身代金は通常、現金か金塊で支払う。2億ドルだと、百貨店の紙袋に100ドル紙幣を一杯に詰めて400袋、金塊なら4トン必要になります。このことから政府高官の一部は、当初から"イスラム国側の真の狙いは別にあるはずだから、人質をすぐに殺すことはない"と信じていたんです」(永田町筋)

しかし、湯川氏とされる遺体が公開されたことで、事態は急激に悪化する。
「その直後、赤坂の宿舎に帰ったばかりの菅官房長官がすっ飛んできて、深夜に官邸で会議が行われましたが、すでに日本に当事者能力はなく、ヨルダン政府に移っていました。会議は、すぐにお開きになったといいます」(前同)

ある外務省職員は反省を込めつつ、こう語る。
「今回はテロリストとの交渉は不可と、米国は横やりを入れてくるばかりで頼れない。日本には自前の情報機関がないから、中東の友好国から内調(内閣調査室)に情報を集めたが、その真偽をチェックする能力がなかった……」

イスラム国ばかりではない。安倍首相は、世界中ののテロ集団が、今回の日本政府の対応を脳裏に焼きつけていることをお忘れなく。
無法集団イスラム国最高指導部は「サダム・フセイン残党」だった!!

単なるテロ集団とは一線を画し、「国家」を自称するイスラム国。かの集団の正体はいったい、いかなるものなのか!?

「イスラム国が生まれ、組織が急膨張した原因は二つあります。一つは、イラク戦争後のイラクの混乱と、もう一つがシリア内戦です」(中東事情通)

イスラム国はそもそも、アルカイダ系の過激派組織であり、シーア派政権となったイラクで反政府闘争を行っていた。それが、シリアの内戦を機に反政府軍の一員として介入。瞬く間に肥大化していき、シリア反政府軍とも対立するようになっていった。

「現在の支配エリアは、イラク西北部からシリア東北部に至る広大なもの。これは四国と九州を合わせた程度の面積です。そこで暮らす人々は約800万人程度と見積もられています」(外務相関係者)

昨年6月にはイラク第2の都市モスルを制圧。これを機に、指導者バグダディ(昨年12月に米軍主導の空爆で死亡とも)を「カリフ」(マホメットの後継者の意味)と仰ぎ、イスラム国家樹立を宣言。それから1年を待たずして、シリア北部のアレッポからイラク中部のディヤラに至る一帯を占拠してみせたのだ。

米国のヘーゲル前国防長官が、「(イスラム国は)テロリスト集団の域を超え、イデオロギーと、戦略や戦術に長けた高度な軍事力、そして資金力がある。これまで目にしてきたどの組織とも違う」と嘆いたように、今や国家としての体裁をも整えつつあるという。

その組織は、指導者であるバクダディの下、2人の副官が最高指導部を支えているとされる。『イスラム国の正体』の著者であるジャーナリストの黒井文太郎氏は、
「この副官の2人は、イラクがフセイン政権だったときの軍人です。アブ・ムスリム・トゥルクマニ(昨年12月、米軍主導の空爆で死亡とも)が"イラク担当"。もう一人のアブ・アリ・アンバリは"シリア担当"とされています」

イスラム国には"アルカイダ系"の人脈と、イラク人イスラム過激派の人脈が入り乱れているという。
「どこかのタイミングで、旧フセイン政権の残党が入り込んできたんでしょう。副官のトゥルクマニもそうなんですが、イラク駐留米軍のキャンプに収監されていた時期に、多くのフセイン政権時代の軍人の幹部が一堂に会し、その後、イスラム国の中枢を担うようになった可能性がありますね」(黒井氏)

米国のヘーゲル前国防長官が「これまでのどの組織とも違う」と言った理由は、このあたりにありそうだ。
十字軍入りでささやかれ始めた日本国内テロ「気になる可能性」

外遊先のエジプトで「イスラム国対策で2億ドルを供出」と発表した安倍首相。これを受けてイスラム国は「日本も十字軍入りした」と反応した。日本でもテロが頻発するのか!?

米英を中心に欧米で頻発するイスラム過激派によるテロ。「十字軍入り」声明は、日本人にとっては大いに気になるところだろう。
「十字軍は、イスラム教国から聖地エルサレムを奪還するために組織されたキリスト教徒の軍事組織。イスラム教徒にとっては"不倶戴天の敵"とほぼ同義です。日本政府は、声明を重く見ています」(全国紙記者)

日本国内でテロを起こす場合、最もターゲットになりやすいのが原子力発電所である。
「国内17か所に54基設置されている原発を狙われたら、ひとたまりもないのが実情」(警察関係者)

2011年に起こった東日本大震災でメルトダウンした福島第一原発。この原発事故は、テログループにとって大きなヒントになったという。
「敷地内に潜入し、建屋にプラスチック爆弾を設置できれば核汚染テロが可能。その被害は甚大で、その国の経済、輸送、政権まで吹っ飛ばす威力があることを知ったはず」(前同)

肝心の日本の原発の警備は、決して万全とは言えない。
「他国では武装した軍人や警察関係者が警備を行っていることがほとんど。地対空ミサイルを設置している国もありますが、日本は民間の警備会社に委託しています」(前出・記者)

現状の警備態勢では、敷地への侵入は容易にできるということだ。
「イスラム国はネットを通じて、世界中から兵士をリクルートしている。日本も例外ではなく、昨年10月には、北大生がイスラム国の拠点であるシリア北部に渡航を計画しています。これが意味することは、実行犯はひと目でそれとわかる中東の人間ではなく、同じ日本人かもしれないということです」(公安筋)

となると、もはやテロは避けられないのか?
「それほど心配することはないですよ。日本では爆弾の材料となる火薬の入手が困難ですし、テロの標的は対立関係にある欧米が優先。イスラム国が日本を標的としたテロを起こすことは考えにくいですね」(軍事ライター・古是三春氏)

とはいえ、警戒するにこしたことはないだろう。
怒りのオバマ大統領根絶宣言も… 米軍空爆2000回でも「奪還領地1%」

新興の過激派組織が"国家樹立"を宣言したのは昨年6月のこと。その1か月後から米軍主導で空爆が開始された。しかし、その"効果"はというと……。

「空爆だけでイスラム国を壊滅させることは、絶対に不可能でしょうね。また、どんなに気をつけていても、空爆には誤爆がつきものですから、無辜(むこ)の市民が巻き添えになる。そうなると、イスラム社会はもとより、国際世論の反発を招くことになるでしょう」(軍事ジャーナリスト・井上和彦氏)

米国のオバマ大統領がイスラム国に対する空爆という軍事オプションを決断したのは、昨年の8月のこと。
「イスラム国の軍隊が、イラク北部のクルド人自治区に侵入したため、限定的に空爆を承認したんです。1か月後にはシリア領内に空爆を拡大、フランス軍、イギリス軍も空爆に参加し、現在も継続されています」(全国紙外信部記者)

日本人2名を拉致し身代金を要求が出されたのを受けて、オバマ大統領の怒りは頂点に達した。米両院合同議会で、「イスラム国を根絶する」と演説してみせた。

現時点で、米軍と有志連合軍による空爆は2000回近く行われている。
「駐イラク米国大使は、"これまでの空爆で6000人を超えるイスラム国戦闘員を殺害し、その約半数は指揮官だ"と発表しました。米情報機関が算出したイスラム国の総兵力は2万人弱とされていますので、これは大きな成果です。ただ時をほぼ同じくして、米国防総省から"空爆開始から約5か月で、イスラム国に占拠された地域のうち、奪還できたのはわずか1%"と公表があったんです」(通信社記者)

やはり空爆だけでは、限界があるようだ。前出の井上氏が言う。
「空爆で戦闘員を失っても、"義勇兵"が世界中からやってくるので、すぐに補充できる。彼らの戦い方は、究極的には個人戦。個々の力を高める訓練は、教官が一人いればいくらでもできるので、空爆だけで戦力をそぐことは難しいでしょう」

米軍と有志連合軍は今後、イラク政府軍の指導、シリアの穏健な反政府軍の指導を通じて、地上部隊を組織する方針を打ち出している。
「イスラム国の資金源である原油価格が暴落している今こそ、彼らの息の根を止める好機。特殊部隊を含む地上部隊を速やかに派遣する必要があります」(前同)

空爆だけでは、何年かかっても彼らを"根絶"することはできないようだ。

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.