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【武豊】”先を見据えた騎乗”がもたらすこと

[週刊大衆03月23日号]

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
”先を見据えた騎乗”がもたらすこと


競馬は勝利至上主義――
なによりも、まず、勝つことが優先されます。
勝つためには、どう乗ればいいのか。道中、どこに位置し、どこでスパートをかけるのが一番いいのか……気がつくと、週末のレースのことを考えています。

しかし、勝つことと同時に、常に先を見据え、レースごとに課題を持って騎乗することもまた、騎手に課せられた使命のひとつだと思っています。
レース中、意識的に馬込みの中に入れ、我慢を覚えさせる。最後の直線、馬一頭分しかない隙間に鼻面をこじ入れる。
これ以上待ったら間に合わないというギリギリのタイミングまで、GOサインを出すのを待ってみるという場合もあります。

なぜ、そんなことをするのか!?
その馬が持っている能力はだいたいこのくらい……その思い込みが、結果として勝利を遠ざけるケースがあるからです。
もう、これ以上は無理というところからスパートしたときに見せるのが、その馬が持つ真の能力……もう一段上のギアというのは、そうやって引き出されていくものだからです。
2007年3月11日。阪神競馬場で行われた桜花賞トライアル、GⅡ「フィリーズレビュー」もそんなレースのひとつでした。
このレースで僕がパートナーを組んだのは、アストンマーチャン。顔はキュートで、馬体はグラマラスというアンバラスさが魅力の女の子でした。

このレース、アストンマーチャンは、単勝1.1倍の圧倒的な1番人気。道中、1つ2つの不利があっても、勝つということだけだったら、それほど難しいレースではありませんでした。
が、しかしです。僕がこのレースで意識したのは、レースには出走していない馬……前走のGⅠ「阪神ジュベナイルF」で、クビ差競り負けた、2歳女王、ウオッカの存在です。
強い敵に勝つためどう乗ればいいか

――あのクビ差を逆転するためには何が必要なのか。
大きな課題を持って挑んだレースだったのです。

一瞬、スタートから抑えずに、そのまま押し切ろうとしたらどうなるのかという考えが頭に浮かびました。
いるはずのないウオッカを思い描き、何度もシミュレーションしてみます。逃げるアストンマーチャン、猛追してくるウオッカ――何度やっても、ウオッカには勝てません。

気難しく、抑えるのに苦労しますが、彼女の力をすべて出し尽くすためには、やはり、前半は抑え、最後の最後のその力のすべてを爆発させる――それが、僕の出した結論でした。
道中、好位5番手でジッと我慢した彼女は、見事、その期待に応え、後続をちぎって優勝。3つ目の重賞をその手中におさめました。

本番、「桜花賞」では、パドック、返し馬で激しく入れ込み、ウオッカへの雪辱はなりませんでしたが、この「フィリーズレビュー」では、頭の中のウオッカをギリギリ抑えていましたから、僕にとっては、まさに会心のレースでした。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

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