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『劇場版プロレスキャノンボール2014』を観て思ったこと。


昨年、AV監督のカンパニー松尾が撮った『劇場版 テレクラキャノンボール2013』が大ヒットした。私も映画館で笑いが止まらなかったり、グッときたり、それはそれは大変な映画だったのだが、今度はプロレス団体DDTが仕掛けてきた。それが『劇場版プロレスキャノンボール2014』である。監督はマッスル坂井。「100年に1人のDDT映像班」(と勝手に思っているレスラー)。

東京で2月に公開されたのだがチケットは完売し、その反響ぶりから3月も各所で上映が決定した作品だ。

この映画、ひとことで言うなら本当に無駄な映画であった。どれぐらい無駄か説明していきたい。

プロレスキャノンボールのルールは簡単。チームに別れ、2日間かけて目的地をめざして車で競争する。途中で対戦してくれるレスラーをブッキングし、プロレスの試合でポイントを稼ぐのもルール。

そして初日。トップに立ったのは自費で志願参加したあるチームだった。しかし旅館でおこなわれたその日のプレビュー(道中の報告)で、他チームからのダメ出しが集中する。

1位になりたいあまり、ポイント稼ぎが目に余ったからだ。

DDTの大社長・高木三四郎は彼らに苦言を呈する。「ルール内でやってるから別にいいんだけどもさ、画として見せるもん、もっとあるんじゃないの?」「試合で見せなくちゃしょうがねえだろ」。

他のレスラーからも「俺たちはポイント稼ぎを捨てて大ホームラン狙ってる」とか「君たちはコツコツ勝ちにいけばいいじゃん。ボクたちも勝ちたいけど、やっぱりやりたいよね、いろんなこと」と散々なことを言われる。

ハッとした。この「プロレスキャノンボール」は映画にみせかけてやっぱりプロレスだったのである。

観てる人を驚かす試合やブッキングをしたいがために、わざわざ目的地から遠回りしているチームもあった。みんな、大いなる無駄をやっているのだ。しかしファンはこの無駄こそ愛す。

よく「プロレスはプロセス(過程)」と言われる。試合結果も重要だが、もっと大事なのは内容であると。いかに観客の心を揺らすことができるかが勝負だと。
映画を観てゆくとわかるが、みんなキャノンボールの優勝は二の次のように見えてくる。頭と時間を使って見てる人を楽しませようとしている。無駄だが、でも無駄ではないことがわかる。

初日にダメ出しの集中砲火を浴びたチームも、かっこ悪さをさらけ出しながら2日目から動き出す。でもやっぱりかっこ悪いのだ。しかし、過剰なかっこ悪さが観客の共感も生み始めるのだからプロレスってやっぱり凄い。プロレスの持つ救済力である。

プロレスキャノンボールのもうひとつの真髄はツイッターだった。昨年の開催当日にツイッターで各チームが実況し、その過程を誰もが見ることができた。なかにはファンから対戦相手のアイディアを提案され、それを実行するチームもあった。展開が予測不能であり、ツイッターを追う「観客」には可視化されている。これってプロレスそのものではないか。

そして終盤、「プロレスにできること」の壮大なミーティングで、あるレスラーが高木社長から大役を指名される。

ひるむ本人に対し、鈴木みのるがこう叫ぶ。「できる、できない、じゃないよ。やるか、やんねーかだよ!」。まさにプロレスラーの言葉。

実は『劇場版 テレクラキャノンボール2013』がのキャッチコピーが「ヤルかヤラナイの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」だった。

鈴木みのるの叫びはリンクしていたのだ。ちなみに鈴木は、発売中の「KAMINOGE」39号でテレクラキャノンボールは観ていないと証言している。なら、なおのこと奇跡のリンクだったことになる。

『劇場版プロレスキャノンボール2014』は本当に無駄な映画だ。ポイントを着実に稼いで何事にも1位になりたい人にはおススメできない。過剰な無駄でできているからだ。

しかし私は、プロレスキャノンボールを観るか観ないかの人生なら、観る人生を選ぶ。

映画ではこう言ってる場面があった。「バカばっかりだわ」。

サンキュー、プロレス!


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





今もっとも注目すべき文系芸人・プチ鹿島氏による初の新書が双葉社より発売! 「どの週刊誌よりも売れていた」という90年代黄金期の週刊プロレスや、伝説の編集者・井上義啓氏の週刊ファイトなどの“活字プロレス”を存分に浴びた著者による、“プロレス脳”を開花させるための超実践的思想書。 「半信半疑力を鍛える」「グレーゾーンを許容する」「差別に自覚的になる」等々、著者が30年以上に及ぶプロレス観戦から学びとった人生を歩むための“教養”を、余すところなく披瀝。すべての自己啓発本やビジネス書は、本書を前に、マットに沈むこと必死!

ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

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