日刊大衆TOP 娯楽

【武豊】巡り合わせでGⅠで乗れなかった名牝

[週刊大衆05月04日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
巡り合わせでGⅠで乗れなかった名牝


競馬は縁と巡り合わせの連続です。
東と西――昔と違って、関西の騎手が関東の馬に乗る機会も数多くあるし、その逆もありますが、今でも、入厩する厩舎が美浦か栗東かで大きく変わってきます。

普段からおつきあいのある厩舎かどうかも縁のひとつ。夏は小倉を主戦場にしている僕が、札幌や新潟で行われる重賞レースで騎乗依頼をいただき、たまたま巡りあった一頭の新馬とその後、長くコンビを組むようになったことも一度や二度ではありません。

GⅠレースと違って、毎週末、東西でひとつずつ行われる重賞レースでは、できれば、両方に乗りたいというケースがあります。
でも、身体はひとつだけ。先に約束をしていたから。将来性を見据えて。乗りたいという気持ちを抑えきれずに……理由は様々ですが、どちらかを選ばなければいけなくなったときは、巡り合わせを恨みたくなります。

そして、もうひとつ。同じ年に、同じくらいの力を持った馬と縁あって、巡りあったときは、もどかしさに、どうにもならないほど悩み抜くことになります。

父トニービン。母シヤダイフライト。1990年、北海道・大北牧場で生まれたノースフライトも、僕を大いに悩ませた一頭でした。
縁あって僕が彼女とコンビを組んだのはデビュー2戦目。雨の小倉で行われた500万下「足立山特別」でした。
西園正都騎手が手綱を取ったデビュー戦を9馬身差で快勝。内心、「いい馬がまわってきた」とは思っていましたが、このときは3か月の休養明けですから、勝ち方よりも勝つことに重点を置いていました。ところが、レースでは僕は乗っていただけ。2着に8馬身差を付けての圧勝で、その強さは乗っていた僕が呆れるほどでした。
彼女のGⅠ勝利は後輩騎手が騎乗…

「これはとんでもない馬がでてきたぞ」
この年の春二冠、「桜花賞」「オークス」を制したパートナー、ベガの三冠を阻むとしたらこの馬かもしれないと、本気で考えたほどの強さでした。

その「エリザベス女王杯」は、1着がホクトベガ。2着ノースフライト。三冠を狙った僕とベガは、レース中に他馬と接触するアクシデントなどもあり3着。あのときを思い出すと、今でも苦さが込み上げてきます。

彼女とはその後、GⅢ「阪神牝馬特別」、GⅡ「京都牝馬特別」、GⅢ「マイラーズC」と重賞3連勝。しかし、彼女が手にした2つの大きな勲章、GⅠ「安田記念」と「マイルCS」は、めぐり合わせにより、敵として戦い、敗れてしまいました。

そしてこの2つのレースで手綱を取ったのが……角田晃一騎手。今は角田晃一先生です。しかも、角田厩舎にとって初めての重賞制覇となった一昨年の「ファンタジーS」(ベルカント)は、僕とのコンビで挙げたものです。そう考えると彼とも不思議な縁で結ばれているような気がします。

こういうことは頻繁に起こるのが競馬――だから、競馬は面白いんです。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】巡り合わせでGⅠで乗れなかった名牝

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.