日刊大衆TOP コラム

【岩井志麻子】「裸の仕事がバレて」vol.4 自殺した春樹に殴られた!?

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

1isii1

岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー
「裸の仕事がバレて」vol.4 自殺した春樹に殴られた!?


春樹が自殺しても、桜子は春樹からは逃れられなかった。

春樹が死んだ日から、桜子以外は誰もいないのに壁がドンドン叩かれる。家具が、蹴られたかのように倒れる。机に置いていたお菓子が床に落ちていて、ぐしゃぐしゃに踏まれたようになっている。耳元で、汚くて卑猥な言葉をささやかれる。

生前の彼のやっていたこと、そのままだ。ただ、春樹の幽霊そのものは現れなかった。

●霊能力者って本当にいるんだ…

桜も散ってしまった季節なのに、桜子は嫌な寒気に震え続けた。おびえる桜子に、ある知り合いが「気休めにでもなれば」と霊能力者を紹介してくれた。そういうものをあまり信じない桜子だったが、お願いしてみた。

霊能力者は死んだ春樹と対話した後、こんなふうに苦笑した。

「また、間に余計な他人を入れやがって、と怒ってます。それに自分は一度もあなたの目の前に現れて脅したことはないと、そればっかり主張してましたよ」
桜子は、うわー、本当に霊能力者っているんだわと感心した。まさに春樹がいいそうなことだった。生きている頃は、俺は一度も殴ってないといい張っていたのだった。

死んでも人は変わらないんだと、寂しくもあり怖くもあり、なんだかちょっと笑ってしまいそうにもなった。彼の肌とベッドでの行為が、少しなつかしいとすら感じた。
 
その帰り道、桜子は横断歩道の向こうに春樹を見た、と思った瞬間にそれは目の前に飛んできて、彼女の頬を殴って消えた。確かに殴られた衝撃と痛みがあった。

以降、怪異はぱったりと消えた。春樹も本当に桜子を殴ったことで気が済んだか、気が引けたのだろう。妙なところでは筋を通す人だったもんねと、桜子は春になるたび彼を思い出し、少し涙ぐむ。

※この物語はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。

岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

【岩井志麻子】「裸の仕事がバレて」vol.4 自殺した春樹に殴られた!?

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.