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【武豊】キズナへの揺るがない信頼で勝負へ

[週刊大衆05月11日・18日合併号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
キズナへの揺るがない信頼で勝負へ


いよいよその真価を問われるときがやって来ました。
5月3日、京都競馬場で行われるGⅠ「天皇賞・春」(芝3200メートル)。パートナーは一昨年のダービー馬、僕にとっては特別な馬、キズナです。

レース中の骨折による長期休養明けで臨んだ2月15日のGⅡ「京都記念」が3着。"負けられない"という気持ちで挑んだ4月5日のGⅡ「産経大阪杯」が2着。何が起こるかわからないのが競馬で、勝負は時の運とも言いますが、キズナに関しては、そういうレベルの馬じゃないと信じていただけに、正直、レース直後はかなりショックでした。

しかし、僕はもちろん、佐々木晶三先生、厩舎スタッフをはじめとするチームキズナのメンバーは、「天皇賞・春」を前にして、悲壮感もなければ、追い込まれたという感じもなく、いつもと同じ、平常心で日々を過ごしています。

「こんなもんじゃない!」
キズナへの強い思いと信頼は、1ミクロンも揺らいでいません。

――そういえば、今回と似た気持ちでレースに臨んだことがあったなぁ。
思い出したのは、アドマイヤグルーヴです。

"アクシデントさえなければ勝てる"と思っていた2003年の「桜花賞」で、まさかの出遅れ。ゲートが開く前に突進してしまい、後ろに下がるため、後ろ脚に重心を移したまさにそのとき、ゲートが開くという不運に見舞われ、結果は優勝したスティルインラブから2馬身差の3着。

続くGⅠ「オークス」でも、馬場入りの際、スタンドの大歓声でテンションが上り、ゲートの中でパニック状態に陥ってしまい、またしても大きく出遅れ。彼女の武器である末脚にすべてを賭けたのですが、レースがスローで流れたことも大きく影響し、最後尾から7着まで追い上げるのが精一杯でした。
負けても負けても変わらぬ絆と信頼

キズナは2連敗ですが、アドマイヤグルーヴはもうひとつ、「秋華賞」でも、謎の失速で勝つことができなくて……。レース後に、"こんなはずじゃない"と臍(ほぞ)を噛んでいました。

しかし、結果は結果として受け止めましたが、想いはまた別で、一度として、彼女の持つ力に疑問を感じたことはありませんでした。
――絶対にGⅠを勝てる馬や。
絆と信頼は、微塵も揺らぐことはありませんでした。その結果が4度目の正直、「エリザベス女王杯」での激走につながったのだと思っています。

祖母ダイナカール、母エアグルーヴに続く、母娘3代のGⅠ馬誕生――その瞬間、変わらず彼女を応援し続け、スタンドでコブシを突き上げてくれたファンの姿に胸が熱くなりました。
キズナも同じです。
彼を応援し続けてくれるファンと歓びを分かちあうためにも、これ以上、負けるわけにはいきません。レース当日は、キズナらしい競馬で、真っ先にゴール板を駆け抜けるイメージだけを持って臨みます。GWの真っ只中、京都競馬場でお逢いしましょう。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】キズナへの揺るがない信頼で勝負へ

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