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阿修羅原が教えてくれたマスコミの「うそ」。[プチ鹿島コラム]


阿修羅原さんが亡くなった。

「日刊スポーツ」は天龍源一郎とのタッグ(龍原砲)の写真を一面にして原さんの訃報を伝えた。

私にとって阿修羅原とはリング上のファイトだけでなく「マスコミ報道」について色々思い出を残してくれた人だ。

まずは「雪崩式ブレンバスター事件」。

子どもの頃に読んだ東スポで、国際プロレス(当時)の阿修羅原は日本初公開の雪崩式ブレーンバスターを写真入りで予告していた。初めて見るその豪快な技の公開を私は待ちわびた。

しかし事件はライバル団体の新日本プロレス「ワールドプロレス」生中継で起きたのだ。たしか阿修羅原の記事が出た当日か翌日の夜だったと思う。

木村健悟が試合の土壇場で雪崩式ブレンバスターを仕掛けたのである。驚きはそれだけではない。相手の藤波に空中で切り返されてまさかの逆転負け。

「え、え、え!?」

昨年、木村健吾さんにお会いした時にこの時の話を聞くと「あ、あれね。偶然でなく狙ってやった」と、あっさり。

「巡業バスの中であの予告記事を見たんだよ。だからテレビ中継で先にやっちゃえって」

「試合の流れではなく最初から狙っていたんですか」と聞くと「やったもん勝ちでしょ」。

最後に木村健悟さんは「原、ゴメン。」

ちなみに、「国際プロレスや原からのクレームを考えなかったかって? あの時代、そんな小さいことしないよ」とこれまたあっさり。ちまちましてない時代。
次に阿修羅原をめぐるマスコミ報道の思い出は「SWS」である。メガネスーパーが資本を投入して旗揚げした新団体に天龍が参加した。

この新団体に対して「週刊プロレス」が大バッシングキャンペーンを展開したのだ。試合内容から何から全否定して叩いた。

今にして思えば「俺たちの『村』に新規(企業)が入って来るな」という、既得権益を守ろうとしたマスコミの狭量な振る舞いだったのだが……。

そんなことに私はまだ気づかないなか、SWSは東京ドームでビッグマッチを開催した。メインは天龍源一郎 vs ハルク・ホーガン(1991年)。

「週刊プロレスに酷評されているSWS」というイメージが抜けきらず、私はいちばん安い席のチケットを買った。ドームの二階席だ。それぐらい疑心暗鬼での観戦だったのである。

しかし!

実際に見たSWSは本当に面白かった。天龍とホーガンも名勝負だったが、興行の途中からSWSのレスラーの武骨で激しい戦いを見て認識をあらためた。なんたってドームの二階席までゴツゴツしたぶつかり合いの生音がハッキリ聞こえてきたのだから。

阿修羅原がキング・ハクらと「ゴツゴツしていた」のだ。なんだ、SWSに移籍してもすごいプロレスをやっているじゃないか。

私は「週刊プロレス」に騙されたと気づいた。利益がからむと専門誌でも平気で「うそ」をつくことを実体験したのだ(専門誌だからこそ、かもしれないが)。

とりあえず、確認できるものはできる限り自分の目で確認しよう、判断はそれからだ。そんな教訓を教えてくれたのがあの日のSWS勢のファイトだった。

以上、阿修羅原をめぐるマスコミ報道の思い出のエピソードでした。

原さんお疲れさまでした。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





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