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映画「セッション」「ザ・トライブ」をプロレス視点でみてみると[プチ鹿島コラム]


今年は「プロレス映画」の当たり年だ。

DDTとマッスル坂井監督が仕掛けた『劇場版プロレスキャノンボール2014』があれば、いじめ、レイプ、自殺未遂などを乗り越え、女子プロレスに輝ける場所を見出した安川惡斗のドキュメンタリー映画『がむしゃら』もある。

今回私が紹介したいのは、プロレスが題材じゃないけどこれプロレスそのものだよね、という映画である。2本紹介する。まずは『セッション』。

《名門音楽学大学に入学したニーマンはドラムを専攻している。伝説の教師フレッチャーのバンドにスカウトされ、偉大な音楽家になるという夢は叶ったも同然と喜ぶニーマン。だが、そんな彼を待ち受けていたのは、0.1秒のテンポのズレも許さない、異常なまでの完璧さを求めるフレッチャーの狂気のレッスンだった。フレッチャーはニーマンに様々な心理的ワナを仕掛け、彼を追いつめていく。》(パンフレットより抜粋)

上記の説明を読むと、鬼教師に耐えて頑張って、努力が認められる感動スポコン物語の匂いがするけど違う。最後まで不穏な緊張感にあふれていて目が離せない。安心の『ビリギャル』と見比べてほしい。

とくにラストシーン。よく「プロレスとジャズは似ている」という指摘があるが、まさにそれ。この映画は全編にわたって「相手が仕掛けてきたらきたらどうする?」という覚悟を問われている。良い不穏試合とはこういうものだと思う。

そして「劇中の観客」の反応を、「本当の観客(つまり我々)」が想像する嬉しさも与えられている。行間たっぷりの仕掛け。プロレスファンにもぜひ観て欲しい映画だ。



映画『セッション』より。
http://session.gaga.ne.jp/


映画『ザ・トライブ』より。
http://thetribe.jp/


続いては『ザ・トライブ』。

台詞や音楽は一切なく、字幕も吹き替えも存在しない。なぜならすべての登場人物が聾唖者だからだ。

なので、観客は何が語られ、何がおこなわれているのか、すべて彼らの一挙手一投足をみながら想像しなければならない。すべて言葉で説明してくれる『ビリギャル』と見比べてほしい。想像力が問われる。

途中、主人公の青年が、売春にはげむ女子に恋心を抱くシーンがある。「お金」を払って情交を重ねるが、青年にとっては片思いなのだ(そのシーンはこの映画のポスターになっている)。

あれ、このシーンどこかで見たぞと思った。そうだ思い出した。1986年2月におこなわれた「アントニオ猪木VS藤原喜明」なのである。藤原が猪木にアキレス腱固めをさっそうと極めるのだが、猪木は「極めるポイントが違う」と藤原に指を差した伝説のシーン。

藤原にとっては屈辱の瞬間である。UWFで自分は大きくなって帰ってきて、今こうして猪木とメインイベントで試合をしている。しかし猪木はまだ自分を「弟子」としてしか扱っていない。そういう態度を観客にアピールしている。藤原の「片思い」が切ないシーンだったのだ。

猪木の非情さもあらためて教えてくれた『ザ・トライブ』という映画。

今年は「プロレス映画」の当たり年である。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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プチ鹿島氏のコラムが読める雑誌「EX大衆」は毎月15日発売!


ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

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