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【武豊】 “名牝"ベガと挑んだオークス

[週刊大衆06月01日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
"名牝"ベガと挑んだオークス


昨年の桜花賞馬、ハープスターが右前脚の繋靭帯炎を発症し、ターフを去ることになりました。その凄さは、一緒に走っていて脅威に感じることもあっただけに、ホッとしつつも、やはり、どこか寂しさも感じています。

父は僕の最高のパートナーだったディープインパクト。母はヒストリックスター。一度もレースで走ることなく繁殖牝馬になったため、馴染みのない方もいると思いますが、"名牝"ベガの血を受け継いだ超良血馬です。
――武さんにとって最高の牝馬は、どの馬ですか?
頭の中で一頭一頭、走る姿を思い浮かべると、すぐに4、5頭の名前が思い浮かびますが、間違いなくベガも、その中の一頭に入っています。

彼女とコンビを組んだのはデビュー2戦目でした。このときは2番手追走から直線抜け出して、最後は2着に4馬身差の圧勝。レース後、1600メートルの「桜花賞」はどうなるかわからないけど、2400メートルの「オークス」は勝てる……確かな手応えを感じたことを覚えています。
その「桜花賞」を、自分が乗りたいように乗って勝てたことで、「オークス」は心に余裕を持って臨むことができました。競馬に限らず、この余裕というのは、とてつもなく大きなプラス効果を生み出します。すべての歯車がガチっと噛み合い、いいことが雪だるま式に増えていきます。

レースの前日、僕が思っていたのはひとつだけ。
「普通に乗ろう!」
それだけでした。
スタートして、そのまま流れに乗って、道中は4、5番手。スローペースになったことも、位置取りも、何もしていないのに、ベガにとって理想的な方向に流れていきました。
繁殖牝馬としても超一流だったベガ

ゴーサインを出したのはラスト400メートルを切ってからです。
先頭を走るユキノビジンを捉え、追撃してくるマックスジョリーを抑え込み、1馬身3/4差でGⅠを連勝。この差をどう見るかは人によって違いますが、僕にとっては完勝といっていい内容でした。最高の舞台で、これほど"負ける気がしなかった"レースというのは珍しいと思います。

この「オークス」から6年後には、彼女の第1仔アドマイヤベガでダービーを制覇。第2仔アドマイヤボス、第3仔アドマイヤドン、第5仔(第4仔は生後すぐに死亡)キャプテンベガと、出走した馬がすべてオープン馬となるなど、彼女は繁殖牝馬としても名牝の名にふさわしい女性でした。

2006年、クモ膜下出血でこの世を去った彼女は、父トニービン、息子アドマイヤベガと同じ、社台スタリオンステーションの墓地に眠っています。
今週末、東京競馬場を舞台に、ベガで初戴冠の美酒を味わったこの「オークス」が開催されます。家族で、仲間を誘って、ぜひ競馬場に足を運んでください。
競馬の楽しさ、サラブレッドの美しさ、勝負に賭ける想い……すべてが、このレースに詰まっています。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】 “名牝

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