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【武豊】 競馬にも通じる「百聞は一見にしかず」

[週刊大衆06月29日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
競馬にも通じる「百聞は一見にしかず」


百聞は一見にしかず。みなさんも経験があるのではないでしょうか。

――すっげぇかわいい子がいるから、とにかく1回、見てみなよ。
で、実際見たら、そうでもなかった。

――あの人と仕事をするときは、気をつけたほうがいいよ。
耳打ちされ、心配していたら、実はいい人だった。

悪気はなくても、真顔でささやかれると、「えっ、そうなの!?」と思ってしまうのが人間です。だから僕は、自分の耳で聞き、自分の目で見たこと以外は、話さないようにしているのですが。競馬の世界にも、この手の話は、たくさんあります。

1994年7月17日、佐山優厩舎のゴールドマウンテンと挑んだ、記念すべき第1回「札幌スプリントS」もそのひとつでした。

父フォティテン
母エンペリーズゴールド

このレースまで21戦して8勝。僕とは4回コンビを組んで2勝と相性もよく、しかも前3走は、角田晃一騎手と組んだオープン特別「シルクロードS」、岸滋彦騎手とのGⅢ「阪急杯」をともにレコードタイムで快勝。続く、GⅡ「CBC賞」(角田晃一騎手)でも3着と力をつけていて、久々のコンビ復活に大きな期待を寄せていたのですが、新聞を通して入ってくる情報は、どれもあまり芳しいものではなかったのです。

〈調教で遅れる〉〈栗東から札幌までの30時間を超える長距離輸送はあきらかにマイナス〉〈連日、軽めの調整に終始〉……えっ、そうなの!? と心配になったものでした。しかし、それもこれもすべて佐山先生の思い描いていたとおりの仕上げだったのです。
予断を持つことは間違いのもとに!?

ゴールドマウンテンにとってはこのレースが、この年6戦目。調子はすでにピークを迎えていて、どうこれを維持していくのか――ポイントをその一点に絞り、考えに考え抜いた末、辿り着いたのが、馬が夏負けしないように早めに追い切りを済ませ、長距離輸送で札幌に入った後は、オーバーワークにならない程度の軽めの調整ですませるというものだったのです。

これが記者の方の目には物足りないと映ったのでしょう。文字になり、印刷され、それを目にした僕は、同じように不安に襲われてしまったのです。

それが間違いだと気づいたのは、実際に、自分が馬に跨ったときでした。「これなら勝てる」。自信を持って臨んだ結果は、余裕の1馬身3/4差での優勝。勝利の歓びと一緒に、予断を持つことの危うさを教えてもらいました。

4回目から舞台を函館に移し、名称も、「函館スプリントS」とあらためられたこのレースが、今週末、函館競馬場で行われます。
父の実家がある函館は、僕にとっても第二の地元。一昨年は17戦して7勝2着1回。昨年は14戦して4勝2着1回、バツグンの相性を誇っています。夏休みにはまだちょっと早いですが、ムリをすれば日帰りも可能です。今週末は北海道で会いましょう!


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】 競馬にも通じる「百聞は一見にしかず」

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