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「憲法違反」指摘でも… 安倍首相「安保ゴリ押し」5つの理由

[週刊大衆06月29日号]

「憲法違反」指摘でも… 安倍首相「安保ゴリ押し」5つの理由

集団的自衛権の行使を可能にする法案成立に向け、猛進する総理。審査会で憲法学者すべてに違憲と明言されながら、なぜ茨の道を?

「サッカーだったら、オウンゴール(自殺点)。あれは完全な人選ミスだね」
と、ある自民党幹部が苦笑するのは、6月4日の衆院憲法審査会でのこと。参考人招致された憲法学者3 人全員が、集団的自衛権を可能にする安全保障関連法案について「憲法違反」との見解を示したのだ。

「民主党と維新の会推薦の参考人はともかく、自民党推薦の長谷部恭男早稲田大学教授までもが、国会審議中の安保法案に"ノー"の姿勢を見せたんです。安保は"違憲"だと」(自民党番記者)

すぐに、菅義偉官房長官は「違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と火消しに走ったが、その"著名な憲法学者"の一人に「そんな憲法学者がいるなら、ぜひご教示たまわりたい」と当てこすられる有様。
「自民党の谷垣禎一幹事長が、東京・新宿での街頭演説で"法案は違憲・合憲を判断する最高裁の憲法論の枠内で作られている"などと主張するや、聴衆からは"戦争反対! 帰れっ、帰れっ!"の大合唱。この反応にブチ切れたのか、谷垣幹事長は"帰れ、と叫ぶだけでは平和は来ない"と、聴衆に反論するという異例の事態になりました」(全国紙政治部記者)

総理の肝いりで進行している安保法案は、まさに正念場を迎えているが、その法案を審議する国会も"異例の事態"続きだった。

まずは、衆院の平和安全法制特別委員会で、安倍首相が閣僚席に着席のまま、民主党衆院議員の辻元清美氏に「早く質問しろよ」と、ヤジを飛ばしたのだ。
「国会でヤジが飛び交うのは常識ですが、首相が野党議員にヤジを飛ばすのは異例。結果、民主党が猛抗議し、首相は謝罪に追い込まれました」(ベテラン政治記者)

辻元氏といえば、2001年に、やはり国会で集団的自衛権が問題になったとき、閣僚にではなく、「ソーリ、ソーリ」と、答弁を小泉純一郎首相(当時)に求めたことで知られる。だが、今回はまるで逆。辻元氏は、中谷元防衛相に、
「中谷大臣、中谷大臣! 今、中谷大臣に聞いているんです。総理には聞いてません!」と、中谷氏の名前を連呼。答弁に立とうとする安倍首相を制し、中谷氏の答弁を要求したのだ。

首相が担当閣僚を差し置いて答弁に立つこともさることながら、辻元氏が中谷防衛相に発言を求めたのも異例中の異例。これには、以下のような狙いがあったからだという。

中谷氏は07年に出版した著書で〈(憲法の)解釈の変更は、もう限界に来ており、これ以上、解釈の幅を広げてしまうと、これまでの国会での議論は何だったのか、ということになり、憲法の信頼性が問われることになる〉と明言。また、
「2年ほど前、中谷大臣は雑誌でも同様の発言をしています。つまり、持論と担当閣僚の立場というギャップから、不規則発言にならざるをえないんです。その安倍内閣の弱点を辻元氏が突いたわけです」(民主党関係者)

推薦した憲法学者にはダメ出しされ、身内も当てにできず、四面楚歌の安倍首相。また、昨年7月に集団的自衛権を閣議決定した直後、内閣支持率は急降下。その後、株高などで支持率は盛り返したかに思えたが、6月5~7日に読売新聞が行った世論調査では、支持率は5ポイントも低下していた。

それにもかかわらず、安倍首相は、
「24日の国会会期末を8月まで延長しても、この法案を通すつもり」(政治評論家の浅川博忠氏)なのだという。

安倍首相が、そうまでして安保法案を成立させようとする理由は何なのか。
「まず、民主党の鳩山由紀夫内閣時代に(沖縄問題などで)壊れたアメリカとの関係を修復する狙いがあります。(民主党から政権奪取後)安倍首相が初めてアメリカのオバマ大統領と会談した際、オバマはソッポを向いていたと聞いていますから」(浅川氏)

2年前に安倍首相が初訪米し、オバマ大統領との昼食会に臨んだ際、大統領の手元にあったのはミネラルウォーターだけ。だが、今年4月に訪米した際には、
「オバマ大統領の態度は明らかに違っていました。まず、首相が差し伸べた手をオバマ大統領は固く握りしめました。その後、両首脳は互いに、"バラク""シンゾー"と何度もファーストネームで呼び合い、ホワイトハウスで開かれた夕食会では、安倍首相の地元・山口県の地酒で乾杯しています」(自民党関係者)

オバマ大統領の機嫌がよくなった理由の一つが集団的自衛権にあったという。
「アメリカの国力が低下している状況下、安全保障問題で日本がアメリカの役に立ちたいと、安倍首相が"国際公約"したわけですから……」(前出の浅川氏)

その結果が、水から地酒への待遇の格上げだったのだ。安倍首相からすれば、なんとしても安保は成立させなければならない法案と考えるのも頷けるのだ。
祖父・岸信介の遺志を継いで

続く、第2の理由だが、東アジアの覇権を狙う中国を抑え込むためだという。
特に安倍政権が注目しているのが、南シナ海だ。

南沙(スプラトリー)諸島と呼ばれるサンゴ礁は、中国のほか、ベトナム、マレーシア、台湾、フィリピンなどが領有を主張、複雑に絡み合い、"アジアの火薬庫"と言われる危険な地域。実際、6月6日には、南沙諸島を航行していたフィリピン漁船が中国の艦船から警告発砲を受け、一触即発の状況になった。中国はその火薬庫で、岩礁の埋め立てを行っているのだ。

「港や滑走路を作り、南シナ海を"中国の海"にしようという計画です」(防衛省関係者)
安倍政権は、こうした中国の動きに対し、アメリカと協力し、集団的自衛権を行使することは可能との見解を示しているのだ。

「中国軍がフィリピン船舶を拿捕するなどの事態になれば、アメリカはフィリピンとの同盟に基づき紛争に介入することになる。そうなると、アメリカと同盟国である日本は、集団的自衛権を行使し、中国を抑え込めるという目論見でしょう」(前出の民主党関係者)

ドイツ南部のエルマウ城で開かれていた主要国首脳会議で、安倍首相が中国の埋め立て行為を「放置してはならない」と発言したのも、そのためだった。

続く第3の理由が、安倍首相の祖父・岸信介元首相。岸元首相は60年に日米安全保障条約を改定して日米同盟を強化している。
「当時、安保改定に反対するデモ隊は南平台(渋谷区)にある岸元首相の自宅を包囲していました。安倍さんは、その祖父の自宅にもよく遊びに行っていました。日米同盟強化は、岸元首相の遺志を継ぐことにもつながるんです」(旧清和会関係者)

安倍政権の暴走ぶりを批判する経済アナリストの森永卓郎氏が、こう続ける。
「そもそも、安倍首相が日本の侵略行為を認めたくない理由は、岸元首相が太平洋戦争のときに東条英機内閣の閣僚の一人だったからでしょう。祖父が行った戦争は侵略ではなかった――そう思いたいというのが本音だと思います」

また、安倍首相が、国力低下に苦しむアメリカを集団的自衛権行使によって助けようとする背景には、こんな話もある。
「あくまで噂ですよ。岸元首相は戦後、A級戦犯として巣鴨拘置所に収監されます。しかし、そのあとすぐに政界へ復帰し、総理大臣にまで昇りつめました。なぜ岸元首相は、戦犯から首相になれたのか、その政治資金はどこから出たのか。戦後政治史最大の謎とも言われます。一説には、アメリカが政治資金を出していたとの話も」(森永氏)
改憲を実現するための布石!

では、第4の理由は?
安倍首相の"長州(山口県)生まれ"と、その長州魂が関係しているという。
長州といえば、幕末に海外列強から日本を守ろうとした吉田松陰が有名だ。
「安倍さんは、松陰同様、軍事費を増額し、軍事大国化を図る中国から日本を守ろうという気持ちが強いんだと思います。南シナ海で中国の野望を打ち砕くことは、日本の主権確保はもちろん、中国と覇権争いを繰り広げるアメリカの国益にも通じるという理屈です」(前出の旧清和会関係者)

そして第5の理由は、今回の法案成立を憲法改正の布石にするというものだ。
「(安保)法案を成立させても当然、違憲の批判が収まることはありません。そこで"違憲状態を解消するには憲法改正しかない"という論法に持っていき、改憲を実現する。あくまで、今回の法案は、改憲の野望を実現するためですよ」(政治評論家の本澤二郎氏)

浅川氏が、こう続ける。
「安保改定を実現した岸元首相も、改憲は実現できませんでした。安倍首相は祖父の果たせなかった夢を受け継ぎ、改憲に漕ぎつけようとしているんです」

長州人である安倍首相がアメリカに恩を売り、中国を封じ込め、敬愛する祖父も成し遂げられなかった憲法改正を実現する――。
そんな野望を胸に秘め、安倍首相は茨の道を歩んでいるのだろうか……。

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