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紫雷イオ インタビュー後編「王者になっても腰にベルトを巻けなくて、ずっと肩に担いでた」

紫雷イオ インタビュー後編「王者になっても腰にベルトを巻けなくて、ずっと肩に担いでた」

女子プロレス団体・スターダム。そのリングにおいて10回連続でベルトを防衛、さらに5代王座を獲得し、団体初のグランドスラムの偉業を飾るなど、スターの座を不動のものとしている紫雷イオ。「コアなプロレスファンではない一般の読者へ向けて、スターダムの魅力を伝える」というテーマを想定していたが、あの事件に関することからベルト論まで“逸女”ならではの至言が連発し、結果的に団体そのものの本質に迫るインタビューとなった。

高校生だった少女がスターダムを駆け上がった8年間とは、果たしてどんなものだったのか。いま最も注目される女子プロレスラー紫雷イオのインタビューをお届けする。


辞めたくないけど辞めなきゃいけないと思ってた

※インタビュー前編「姉の美央がいたから辞めずにこれた」
https://taishu.jp/16511.php


――愛川ゆず季戦での悔しさから、さらなるプロ意識が生まれた?

紫雷イオ(以下、イオ) ……実は、そこからしばらくはまだ伸びあぐねましたね、メンタルの弱さで。あがきまくったし、スランプにハマって。何をしても日の目を見ないというか。前座試合ばかりですし、自分でも薄かったと思います。でもスターダムという団体が輝いていたから、のし上がりたい、耐えるしかないって。メラメラと悔しい思いをしながらも、絶対、いつかは……って思っていましたね。それまで、色々なことがあったし……。

――それは、あの一件のことだと思うんですけど、触れても大丈夫なんですか?(註:2012年5月、遠征先のメキシコから乾燥大麻を密輸しようとした疑いで紫雷イオは逮捕されてしまう。しかしのちに、それが他レスラーからの遺恨で仕掛けられた冤罪であったことが発覚した事件)

イオ いまはようやく。だって、避けて通れない過去ですもん。あのときに「プロレスを辞めよう」というか「辞めたくないけど辞めなきゃいけない」と本当に思いました。デビューしたころ「辞めたいけど辞めちゃいけない」って思ってた私とはまったく反対の気持ちでした。

――その後の復帰からは、暫くは断罪というか、十字架を背負っている印象がありました。現在のイオ選手が背負っている“責任感”とは違って、当時は“責任”そのものを背負っているようで。

イオ 私自身いまひとつでしたね。それは分かっています。復帰して、両国大会でベルトを獲ってもいまひとつ……。正直にいうと、両国で王者になったあと、2週間くらい、ずっと泣き続けたんですよ。内容に納得がいかなくて。

――それは思うようにできなかった?

イオ 実力が無かったんです、あの時は。だから、ダメな試合内容になってしまったと。その試合直後から大泣きして、2、3週間、落ち込みましたね。

――自分に体する評価が変わったのは?

イオ 手ごたえというか、「変わったね!」って言われるようになったのは、高橋奈苗(現:高橋奈七永)さんと闘った3度目の防衛戦(2013年11月4日)辺りからです。あの試合で残り数秒のところで丸め込んで勝って。そこで自分に自信がついたというのもあるんですけど……。それまで私、ベルトを腰に巻かなかったんです、王者になっても。

――どうしてですか?

イオ 王者としてベルトが自分の手元にあるのは現実で、誰にも渡しちゃいけない。だけど、当時は初代王者の高橋奈七永という選手のイメージが強かったと思うんです。私自身、その奈苗さんがベルトを巻いている残像が目の前でこびりついて離れなくて。だから、自信が無くて腰に負けずに、肩にかけてましたね。それに気付いた人がどれ位いるかわかりませんけど……。だけど、奈七永さんとの防衛戦が終わった瞬間に巻きました。そこからの巻き返しは自分自身でもすごかったというか、成長できたというか。
赤いベルトがなくなって自由になれた

――たしかにそこからは王者としての風格が出てきました。

イオ 防衛回数ごとに自信がつきました。V10の里村明衣子戦(2014年7月)では、爆発した~! って感じです。あの時は自信しかなかったです(笑)

――個人の見方ですが、その後ベルトを落としても印象はそのままというか。

イオ そうなんですよ。おもしろいことにベルトが無くなって、チャンピオンって立場じゃなくなったらガクッと落ちていくのかと思ってた。だけどじつは逆で、ベルトを獲られた自分は一皮向けたんだって思えたんです。自由になったんですね。

――紫雷イオという選手が単にベルトを外しただけです、みたいな身軽な感じなんですよね。

イオ ベルトは団体の最高峰で、巻いている人が団体の顔。チャンピオンベルトって、そういうものじゃないですか。ベルトに価値が無かったら、何の意味も無いし、それこそ団体力が問われてしまう。でも私は、それをまっとうして、「チャンピオンとはこうあるべき!」というものを作り上げていたし、追い求めてた。でも、無くなったら無くなったで、今度は紫雷イオのやりたいプロレスを好きなようにやれるようになったんですよ。背負うものがようやく取れたというか、自由になった分、すっごく楽しいんですよ!

――イオ選手にとっての「ベルト=高橋選手」という強烈なイメージがあったように、いまのファンには「赤いベルト=紫雷イオ」というイメージが出来上がったと思うんです。たとえ、いまは巻いてなくても、いつでも巻き返すだろう、という。

イオ おぉ~、そう言っていただけるのは、すごく嬉しいですね! それだけ自分が防衛してきた印象が残っているということですから。積み上がっていたということですもんね!

――それこそ、11回目の防衛戦で世IV虎選手に敗れたことが意外なほどでした。それほど、王者として完成したということだと思うんですけど。

イオ 確かにベルトは奪われました。だけど、積み上げたものが崩れたわけではないんですよね。それはやっぱり、ベルトを巻いている期間につけた“自信”が、ベルトにくっついてたわけじゃなくて、ちゃんと私の身体そのものに巻きついたってことなんだと思います。ベルトが無くなったいまは、その自信を自由に爆発させられるようになったって感じなのかな。いや~、ここまで褒められるようになるとは(笑)。だって私、クソみたいなレスラーだったじゃないですか? いや、レスラー以前の問題だったじゃないですか? それが、ここまで褒められるようになるとは!

――いやいや!

イオ でも、プロレスのファンでもなかったし、昔の全日本女子プロレスの時代は何千人もの入門希望者がいて、なりたくてもなれない時代だと聞いたんですよね。狭き門だったと。だから、私は完全に時代に拾われましたんだと思ってますよ(笑)。こんな時代の、このタイミングでなかったら、私はプロレスラーになれていないですよ!

――それが現在ではスターダムのトップスター選手ですから!

イオ いやいや。でも、時代に拾われたのであれば、スターという役をまっとうして、しっかり時代を救う救世主になりたいと思います。ぶっちゃけ、女子プロレスって、低迷しているじゃないですか。それをスターになって救いたいんです! ゼッタイできる自信がありますから!
会場にきてもらうためならどんなカードでも切っていきたい

――最近ではももいろクローバーZのライブで試合をしたり、イオ選手自身もヌード写真集を出したり、ほかの団体にはない珍しい話題が豊富なスターダムですが、そのことへの反響は?

イオ おかげさまで増えてますね~。私たち選手は試合後に売店に立つんですけど、そのときに「ぼくモノノフです!」みたいな感じでお話してくださったり、ももクロTシャツを着て応援してくれていたりとか。会場での反響は嬉しいですよ。でも、それって実際に試合の内容が伴ってなかったら出来ないことじゃないですか。

――初めて会場に来た人をプロレスにハメる絶対の絶対の自信があると。

イオ いま女子プロレスを好きな人って何人いるんだろう? って考えたときに、女子プロレスファンの中だけを見るんじゃなくて、スターダムを観たことのない人たちにどうやったら広められるのかを見ていたいんです。だから使える武器は全部使ったほうがいいし、切れるカードは全部切りたい。じゃないと届かないと思ってるから。だから、グラビアもやって、下心スタートでもいいから振り向かせて、そこで試合を見にきて欲しいんです。実際に会場に来てもらえれば、一発で「すごいことやってるな!」って思ってもらえる自信がスターダムにはあるから。

――さすが“逸女”と呼ばれるイオ選手。新日本プロレスの棚橋弘至選手も同じテイストの発言をしてまして、自分が前面に出て、例えば見た目から興味を持ってもらって「え、プロレスラーなの?」と興味を抱いてもらえれば、そこからプロレスに夢中にさせる自信があるという意味合いの発言だったんですが。

イオ そうですそうです、まさに。で、興味を持ってもらったとしても「全然おもしろくないじゃん!」って思われたら本末転倒で。でもそうじゃなくて、試合を見た人から「うわっスゴイ!」って思ってもらえる絶対の自信があるから、だからセミヌード写真集も自信をもって出せるんです。

――スターダムの選手は本当にルックスも実力もあるので「プロレスラーなの?」という問いも逆に有利ですよね。

イオ はい。だから、それこそネイルサロンに行ったり、こまめに美容室に行って見た目を綺麗にするとか、コスチュームを可愛らしいデザインにして、子供とか小さな女の子に興味を持ってもらうとか……。小さなことですけどコツコツやってますね。

――いや、小さいどころかスゴい大変なことですよ! 

イオ 見てくれた人に「私もスターダムの選手みたいになりたい」とか憧れてもらうことって大切だと思うんですよね。それで、有能な新人が入門してくれたら最高じゃないですか!

――でも、これまでの女子プロレスって、そことは真逆だったといいいますか。

イオ 自分の居場所がなくなるからって、出る杭を打っていたんですよね……。私がそういう扱いを山ほど受けたから絶対にやらないって決めました。

――なるほど。

イオ いや、だって、後輩がスターになったとしますよ。その分、団体の価値も上がるんですよ? イコール、自分にも返ってくるんですよ? それなのに、浅はかなことをやったって誰も笑顔にならないじゃないですか? 私はお客さんのためにプロレスをやっているんであって、自分のためにやっているわけじゃないんで。
スターダムはすさまじいスピードで昨日が遠ざかっていく

――団体の顔として、下の選手たちを引っ張る立場だというのは、リングの外から見ていても十分伝わってきます。今年2月に後楽園ホールで事件が起きたあの日(世IV虎 vs 安川惡斗の一戦における顔面殴打事件)、会場が騒然となっているなか、和田京平レフェリーから「オマエが(その場の雰囲気を)締めろ」って耳打ちされてましたよね?

イオ そうですね、確かに言われました。

――あのときの心境はどのようなものだったのでしょうか。

イオ あれは京平さんに言われる前から、私自身そのつもりだったんです。その時は、自分がお客さんの前に立って言わないとダメだって。だから、京平さんには背中を押してもらったんですよ。

――あの事件を乗り越えて、スターダムは速度を増したというか、団体として更にカタチを変えたと思いますが。

イオ お騒がせしてしまったことに関して、本当に申し訳なく思っています。私たちもそれを望んでいたわけではなく、でも起きてしまって……。今回、そういうピンチがあると人間って成長するんだって実感しました。人間ってそこが逞しくて、自覚ってものがそういうところから生まれてくるんですよね、自分がどうにかしなきゃっていう。

――なるほど。今後、スターダムはどうなっていくんでしょう?

イオ いまのスターダムは毎日毎日が変化の連続で、すさまじいスピードで昨日が遠ざかっていってるんですよ。この数ヶ月、ものすごい速度なんですけど、ようやく気後れせずについていけるようになったんですね。現王者の宝城カイリや、私のパートナーである岩谷麻優とか。彼女たちの火事場のクソ力というか、成長力って目を見張るものがあって、ホントに面白いんですよ。たとえば宝城カイリが、女子プロレス界の女帝といわれている里村明衣子選手(センダイガールズプロレスリング代表)とメインイベントで対等にやりあって、試合後に大仁田厚選手ばりのマイクで締めているんです。そして、お客さんが笑顔になって……。そんな光景を2月に、いや三ヶ月前ですら、誰も想像してなかったですよね。

――今後、イオ選手が目指していく場所は?

イオ とりあえずダントツ世界的トップの女子プロレス団体にしたいですね。具体的な目標でいえば、女子プロレスの試合を地上波に乗せたいというのが、ひとつの分かりやすい目標です。そこからブームを起こしたい。スターダムならそれが出来ると思っているので。



取材◎ライターゐりゑ

profile
紫雷イオ
1990年5月8日、神奈川県生まれ。2007年3月に実姉・美央とともに「紫雷姉妹」としてデビューを果たす。数々の団体にフリーとして参戦後、2012年よりスターダムに所属。器械体操の経験を活かした華麗な空中技を武器とし、スターダム初の5大王座を制覇。ニックネームは「天空の逸女」。

■7月26日に後楽園ホールで行われる「STARDOM×STARDOM2015」大会で姉・紫雷美央との3年ぶりのタッグマッチを発表。
チケットなどの詳しい情報はオフィシャルサイトへ!
http://wwr-stardom.com/

紫雷イオ インタビュー後編「王者になっても腰にベルトを巻けなくて、ずっと肩に担いでた」

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