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[プチ鹿島]世間に流布する「プロレス」の使われ方について


政治を語るときに使われる「プロレス」という言葉について考えてみたい。

断言してよいが、「茶番」「打ち合わせ済み」という意味で”勝手に“使われている。プロレスに全く興味のない人こそ簡単に使う。先日もコメンテーターが「これはプロレスで」とふつうに言っていた。お前は何を言っているのだ。

プロレスは、まず相手の技を受けるというのが基本だ。ロープに飛ばされたら、ちゃんと返ってこなきゃいけない。自分の強さを見せるのはそこから。そういう競技だ。

あなたは「プロレスは互いの信頼関係で成り立っている」という言葉を聞いたことがないだろうか。実はここが偏見や誤解が生まれやすい部分でもあり、重要な点でもある。相手の技を受けるということは茶番ではなく真剣勝負ということを理解しなければならない。

仮にあなたが異性とコミュニケーションを取る場合、自分の欲望だけ暴走したら、好ましい未来が「見える」だろうか? そうではないだろう。プロレス心が重要なのである。

では、プロレスはただお互いの技を受けるだけの「協力的な競技」なのか? いや、断じて違う。相手の技だけ受けていたら刺激も前進もない。相手を尊重しながら、いかに自分の主張を出していくか。

だから、プロレスは互いの思惑がぶつかり合っている。わずかな間隙を縫ってレスラーたちは自己主張してくる。踏み越えてくる(その瞬間を見つけることが観客の醍醐味でもある)。
これに似ているのが「議論」だ。

一方的な自分の主張だけで、相手を否定ばかりしていたら、ただの無秩序になってしまう。相手の言うことも聞きながら、自分のプラン、意思もきちんと表明する。

先日、朝日新聞からインタビューされた。安倍首相にしろ、野党にしろ「プロレス心がないのでは?」ということを話した。

「安倍さんは相手の技を受けない。王者のプロレスをしない。相手が野党でも夕刊紙でも、最初から攻撃的になる。プロレスと議論は本当に似ているんです。まず相手の技や話を受けとめないと。そうじゃないと観客(国民)もポカンとしてしまう。安保法制について多くの世論調査で『説明不足』とされるのも、そんなところに一因があるような気がします」(「安倍さん、相手の技受けるプロレス心を」プチ鹿島さん 7月11日朝日新聞デジタル)

安倍さんだけではない。採決のとき、テレビカメラをチラチラ見ながら立ち位置を確認して大仰なパフォーマンスをする野党議員もいた。白々しいの一言。みんな自分のことしか考えていない。

これは政治家だけか? 我々のことも思い起こしてみたい。

ツイッターやフェイスブックなどSNSの普及で、誰もが意見を表明できる素晴らしさを獲得できた。でも一方で、意に沿わない、あるいはうかつな発言や行動に対してすぐに罵倒を投げつける人も出てきた。そうなると次第に強い言葉がかっ歩する。『狭量な時代』である。政治家はそれを代表して体現しているのだ。『狭量な時代の狭量なリーダー』である。日本だけではなく韓国も中国も似たようなものだろう。

そんなことを考えていたら、最新号のスポーツ雑誌「Number 」で野田佳彦元首相がプロレス心について語っていた。

《プロレスは、相手の技を一生懸命に受け止めて、お互いの良さを引き出しあうからこそ、感動できる。「受け」が重要なんです。政治も言論の戦いですから、相手に一定のリスペクトをもって話を聞けば、建設的な議論になる。総理大臣がヤジを飛ばしているようでは、お話になりませんよ。》

私が朝日新聞のインタビューでしゃべったことと全く同じではないか。

気になるのは、野田氏は「実践」ではそんなにプロレスがうまいようには見えなかったことだが……。

それはともかく、「プロレス心が足りない」説は今の時代に投げかけたいことである。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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プチ鹿島氏のコラムが読める雑誌「EX大衆」は毎月15日発売!


ブログ:http://orenobaka.com/
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