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[プチ鹿島]新日本プロレス・内藤哲也に学ぶ人生の「壁」の壊し方



プロレスをみる醍醐味のひとつは、壁にぶち当たっている選手を見ることである。いや、見させてもらうことができる。プロレスは人生の縮図ではなく、人生がプロレスの縮図なのだから。

伸び悩む選手がどうやって現状をぶち破るか。これは我々の現実世界に当てはめることができる。レスラーのもがく姿をみて共感する人もいるだろうし、生々しくて目をそむけたくなる人もいるだろう。

長いあいだくすぶっていた長州力が藤波辰巳(当時)にケンカを売ったとき、長州の人気が爆発した。自分の立場に置き換えて思い入れたっぷりにみる大人のファンが続出したのだ。天龍が全日本プロレスで行動をおこしたとき、熱く支持する人が続出した。今の空気を変えてくれ天龍! という思いが一致したのである。

橋本真也はトニー・ホームや小川直也に負けるたびに人気を上げたのかもしれない。負けが重なるほどファンは次に託した。

もっと現実的な例もある。蝶野正洋はG1を優勝しても模索しているようにみえた。どうしても「巧さ」が先立つタイプ。技術だけでなくインパクトも必要だ。蝶野は一大決心してヒールに転向した。グッと華が出た。観客はこのプロセスを共有できただけで嬉しいのである。まさに「蝶」になる瞬間を見れたことが。
現在で言うなら、何か打ち破ろうとしているのは内藤哲也ではないか。G1優勝実績もあり立場的には申し分ないのに、ファンはどこか内藤を見るのがじれったかった。

今年1月に私が棚橋弘至選手とトークライブをしたとき、内藤の現状に言及するトークがあった。会場にいたファンの多くが棚橋が内藤の名前を出したとき「ああ……」と声を出した。それは期待しているからこその裏返しの共感でもあったのだろう。

私個人の感想で言うなら、内藤はファンの目を気にしすぎな印象があった。それは内藤がいい人である証明でもあるのだが、ファンというものは難しいもので、そうなるともっとなりふり構わず自分に集中してほしいものなのだ。じれったい。

そして内藤はヒールへ転向した。この選択は成功だと思う。ベビーフェイスでいくら頑張っても客席からブーイングが飛ぶのであれば、ヒールに転向して「声援としてのブーイング」と相殺してかき消すことができる。その結果、本人は客席を気にすることなくのびのびと新境地を発見できる。

最近の内藤哲也は実に楽しそうだ。生き生きしてる。

どこまで新日本プロレスひっかきまわすのか、できるのか。新しい自分をどこまでつかめるのか。今の内藤をみることは、観客が自分を見ることでもある。人生に大きなヒントを与えてくれそうではないか。

内藤に注目である。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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プチ鹿島氏のコラムが読める雑誌「EX大衆」は毎月15日発売!


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