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金正恩「核のスイッチ」で加速する北朝鮮の暴走外交

[週刊大衆03月28日号]

金正恩「核のスイッチ」で加速する北朝鮮の暴走外交

 核弾頭をいつでも撃てるようにしろ!――北の三代目独裁者は“まさかそこまで”を着実に実行してきた。狂犬は本気なのだ!!

「我が国の核弾頭をいつでも発射できる用意がなくてはならない!」(3月4日『国営朝鮮中央通信』)「核弾頭を軽量化した弾道ミサイルに合うように標準化、規格化を実現した!」(3月9日『労働新聞』)“狂犬”と称される北朝鮮の金正恩第1書記は、これまでも激しく世界を恫喝してきたが、今回の内容はいつにも増して尋常ではない。「4日の発言は、“核兵器の発射準備を指示した”ということ。国際基準からすれば、世界中に宣戦布告したに等しい。しかも核の小型化に成功、つまり、いつでも日本、そしてアメリカにも核ミサイルを発射できると豪語してみせたのです」(全国紙国際部記者)

 北朝鮮の国営マスコミでの発言ゆえ、“いつもの瀬戸際外交、ブラフに違いない”とみる向きもあろう。だが、北朝鮮事情に最も精通するとみられる韓国政府の報道官は、この『労働新聞』による“核小型化成功”のニュースを受け、「(2006年の)1回目の核実験以降の期間、その他を考量すると、核関連の小型化技術をある程度確保しているのではないか、と判断している」と、デタラメとはいえないと公式発表したのだ。

「一方で、“北朝鮮は核弾頭をミサイルに載せる技術はない”というアメリカなどの分析もあるものの、さらなる情報収集が必要です。本来、我が国も臨戦態勢を敷かねばならない非常事態です」(前出の国際部記者)

 ここ最近の金第1書記の発言は常軌を逸しているが、それには事情がある。今月7日から行われている米韓合同軍事演習だ。「31万人が参加と昨年比倍増、史上最大規模になりました。北朝鮮のすぐ隣の韓国各地でのこの演習が、北朝鮮を牽制するのは明らか。おまけに、この米韓演習においては金第1書記個人を狙った“斬首作戦”が含まれているとの情報もあり、なおさら金第1書記は反発。3日に6発、10日には2発の短距離ミサイルを発射してみせています」(前同)

 そして、この演習が史上最大になった背景には、最近の北朝鮮の暴挙があるという。これまでの軟化路線を一変させて、1月に核実験、2月には事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行。当然のことながら、国際社会は猛反発した。「日本は独自制裁。そして、ついに後ろ盾として慎重姿勢を貫いていた中国も米国と制裁に合意し、国連安保理で北朝鮮に対し、かつてない厳しい制裁が課されることになりました。韓国は開城(ケソン)工業団地を閉鎖するなど、北朝鮮に対する包囲網は強まっています」(同)

 外交評論家の小関哲哉氏は、こう言う。「金正恩は、恒例のように食料支援のための瀬戸際外交をしているだけのつもりかもしれませんが、今回は必要以上に強硬に出てしまった。結果、中国までもが国連の制裁に賛成することになりました。北朝鮮と核開発を行っていたイランも、米国と核合意して核開発をストップ。サウジアラビアも原油安の影響で国家予算すら組めず、デフォルト(債務不履行)が危ぶまれる状況です」

 サウジは北朝鮮と、中国や、核保有国で数少ない北朝鮮友好国のパキスタンとともに、弾道ミサイルの技術交換を行っているとみられる国。こうした中で、北朝鮮は、今まで以上に孤立し、さらなる逆ギレを起こしているのだという。

 その緊張状態は、近年例を見ないもの。3月8日、中国の王毅外相が現在の朝鮮半島情勢について、「一触即発で火薬の臭いが充満している」と危機感を表明するほどなのだ。

 では、万が一、朝鮮半島で“火薬に火がつく”こと、さらには金第1書記が「核のスイッチ」に手をかけることはあるのか? 前出の小関氏はこうみる。「北朝鮮は、一度振り上げた拳を簡単に引っ込められません。一方の米国といえばトランプ氏などの強硬派が支持を得ています。こうした支持が広がり、北朝鮮に対し、なんらかのアクションを求められる場面がオバマ大統領に訪れないとも限りません。その中には、北朝鮮を潰しておこうとの決断も含まれます。北朝鮮は米国は動かないとみて、挑発をエスカレートさせていますが、偶発的アクシデントも重なれば、場合によっては、“第2次朝鮮戦争”という展開も最悪考えられます」

 実際そのとき、どんなことが起きるのか。小関氏が続ける。「北朝鮮が韓国に対して核兵器を使う可能性は低いでしょう。核汚染されては、南北統一をしても自国民を住まわせることはできませんから。でも、日本や米国に対してはその限りではない。核弾頭を積んだミサイルだけでなく、放射性物質を撒き散らすダーティーボムを使うことだって考えられます」(前同)

 一方、外交評論家の井野誠一氏は、北朝鮮が核兵器を使用するケースを、こうみる。「2つあって、1つは韓国と武力衝突が避けられない状況になったとき、先制攻撃として、韓国の戦意を喪失させるために。もう1つは韓国ないし第三国と武力衝突に至り、北朝鮮の劣勢が必至になったとき、戦況を有利にするためです」 井野氏は、北朝鮮が実用化(ミサイルにおいては小型化、軽量化)が、どの程度進められているか、確かな情報を各国ともつかめていないとしながらも、「弾道ミサイル、中距離ミサイル、潜水艦からのSLBMはじめ核魚雷、核地雷など様々な核兵器の開発・改良が進められています。そして、通常の核兵器のみならず、放射性物質をばら撒くダーティーボムは、生物化学兵器とともに、北はいつでも使用できる。この核汚染戦術は見逃せません」(前同)

 だが、万が一、北朝鮮が核兵器を使用した場合、核の抑止力を担う“世界の警察”アメリカは即座に報復の核兵器を発射、結果、金正恩政権は崩壊する。ゆえに北朝鮮は先制攻撃するはずがないといわれてきた。

 ところが、前出の井野氏は北朝鮮が「全土の要塞化と主要施設の地下化」をすでにかなり行っているゆえ、そうとも言い切れないと驚くべきことを話すのだ。「金正恩第1書記の祖父、金日成主席時代から続けられている一つが、全土の要塞化と主要施設の地下化です。この間、主要な軍事施設、研究・貯蔵施設、非常用の備蓄(食糧、薬品など)の多くは地下に埋設されてきました。そして、その構造はもろもろの貫通兵器の改良、進歩に伴い、より深く、より複雑化しているといいます。今日、その地下空間は全国に広がっているとされています」

 さらに続けて、「この地下都市の存在は、現在、公にされているシェルター以外、一般的には知られていません。しかし、できる限り多くの者を長く生存させること、そして金体制の統制システム=“大本営”機能を維持するために、その存在が、ますます拡大されているのは事実です」

 一説では、その地下都市は地下約300メートルの所にあり常時、15~20万人が生活でき、ハイウェーや地下鉄も走っているとも言う。このように、狂気の一方で、用心深さも併せ持つ北の独裁者。「金第1書記は自分の側近、自分に忠実な選ばれた一部エリートさえ生き残れば、他の約2300万人の国民は死んでも仕方ないと思っているでしょう。しかも、国連安全保障理事会での過去に例のない厳しい制裁決議に基づいて、日本も含め各国が本格的な制裁処置を取るのは、これからです。つまり、今後、北朝鮮、そして金正恩の孤立化はさらに深まるわけです。もう、暴発は目の前かもしれません」(国際部記者) 独裁者の孤独が核の暴走を招かないことを祈るばかりだ――。

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