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「安倍VS麻生」消費増税をめぐる“不協和音”

[週刊大衆2016年04月11日号]

「安倍VS麻生」消費増税をめぐる“不協和音”

 アベノミクスという錦の御旗を降ろしてでも、来る選挙のためアメをバラ撒きたがる首相に、官僚の「狗」が反旗を翻した?

「アベノミクス」と「消費増税」を錦の御旗に掲げてきた安倍晋三首相が、7月に予定される参院選を控え、ついに“大衆迎合路線”へと舵を切った!?

 3月18日付の読売新聞は<安倍首相は、2017年4月からの消費税率10%への引き上げについて、景気の足踏み状態が続いた場合には先送りする方向で検討を始めた>と報道。「その後も自民党の溝手顕正参院議員会長や稲田朋美政調会長ら執行部から、増税見送りの発表を首相に求める発言が相次いでいます」(全国紙政治部記者)

 こうして“消費税率8%遵守派”が党内で主流となりつつある中、ある閣僚が、増税見送りの方針と報じた読売新聞の記者に噛みついた。その閣僚とは、あの麻生太郎財務大臣だ。麻生氏は、読売新聞の記者をつかまえて、「おまえ、勝手に話を作るな。いかにも政府が言っているような話に書き換えているが、あんまり上品なやり方じゃないな。そろそろやめたほうがいいぜ」と、“おまえ呼ばわり”をして毒づいたという。「麻生財務大臣は消費税を予定通り引き上げるべきだという“10%増税派”。その苛立(いらだ)ちが記者に向けられたのでしょう」(官邸筋) 経済政策をブチ上げる安倍内閣において、要とも言える財相の不協和音。その内幕や、いかに――。

 まず、当の安倍首相自体は、いまだ明確な態度を示していないものの、本音としては“8%遵守派”であることは事実。「安倍首相が2012年に再登板した際の最大の眼目は憲法改正。その視点で見ると、今回の参院選は任期中、最後の選挙となります。なんとしてでも3分の2以上の議席を勝ち取り、改憲に向けて進みたいのが本音でしょう。そのために衆参ダブル選を仕掛け、衆参で圧勝するのも手の一つ。つまり、選挙を勝ち抜くには、増税の延期が必要になっているのです」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)

 実際に安倍首相は、前回の総選挙前に消費増税の1年半延期を表明し、その後の選挙で圧勝している。「“2匹目のドジョウ”を狙っているのでしょう。すでに布石を打っているのです」(前出の政治部記者)

 まず、3月16日、日本に招かれたノーベル経済学賞受賞者の米コロンビア大学・スティグリッツ教授が消費増税への慎重論をブチ上げた。続いて22日には、同じくノーベル経済学賞受賞者のニューヨーク市立大学・クルーグマン教授が増税先送りを日本政府に訴えてトドメを刺したのだ。「増税を延期するかどうかは、最終的に首相の判断になりますが、その前に経済学者ら第三者から延期や凍結などの意見を引き出し、“アリバイ作り”をしておく必要があったのです」(前出の鈴木氏)

 この安倍首相の心変わりに「内心、カチンときているのが麻生財相」(自民党関係者)だという。今年に入り、政府与党内に先送り論が台頭するや、麻生氏は、ことあるごとに、「(安倍首相の考えと)私や財務省の考え方に隔たりはない」と牽制。返す刀でスティグリッツ氏の増税延期の提言には、「私どもとは見解が違う」と、真っ先に噛みついた。“8%派”の安倍首相か、“10%派”の麻生財務大臣か――。消費税増税導入を巡り、仁義なきバトルが勃発しているのだ。

 だが、そもそも安倍首相は増税派だったはずである。国の借金返済のためには消費税の増税は至上命題。しかし、増税にはデフレや不景気が付き物だ。それを防ぐための大規模な経済対策がアベノミクスだったはずだったのだが、「安倍首相を焚きつけているのは参院自民党や執行部。彼らの増税見送りの根拠とは、日本経済の失速です」(前出の自民党関係者)

 実際に、昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に転落。5月にも発表される1~3月期のGDP速報値も2期連続のマイナスとなる可能性がささやかれている。今や、国民の7割が不況という意識を持っている――それがアベノミクスの現状だ。それが安倍政権の支持率低下にもつながっている。つまり、「アベノミクスの失敗」が人気凋落の原因なのだ。増税を先送りしたら、それを認めたことになる安倍首相だが、ここで選挙に負けては最大の目標である改憲を成し遂げることはできない――。首相にとっても、8%据え置きは苦肉の策と言っていいだろう。

 しかし、そこで黙ってはいられない人たちもいる。なんとしてでも税率を上げなくては困る面々――それが「麻生財務相の背後にいる財務官僚たち」(前同)だ。「G20(20か国財相・中央銀行総裁会議)やG7、さらには財務官僚が出向するIMF(国際通貨基金)では、国の財政健全化のために増税はあってしかるべきという理論が支配しています。そのことから、財務官僚は日本の国家財政が先進国の中でも最悪に属し、財政健全化のために増税は必要というロジックを打ち立てています」(鈴木氏)

 彼らは、そのロジックを振りかざし、自民党の有力議員に相次ぎ接触。鈴木氏が取材した与党の大物議員も、そうやって財務官僚に口説かれたという。

 東大卒がズラリと並んだエリート官僚陣に理屈で説得されたら、政治家とて太刀打ちできない。麻生氏も財務官僚に丸め込まれた一人だろう。元法政大学教授の五十嵐仁氏は言う。「その財務省の代弁者である麻生氏は、軽減税率導入の際にも“小売業までシステムを浸透させるのは手間がかかる”と抵抗したくらいですからね」

 軽減税率は、消費税増税に伴い、低所得者への配慮から導入が検討されていたもの。ところが、麻生氏はかつて、軽減税率の財源約1兆円に充てるため、将来的に消費税率を10%から引き上げる可能性について「論理上は十分ありうると思う」と発言したほどだ。これでは低所得者の負担は増すばかり。軽減税率など、なんの意味もなくなってしまう。確かに国家財政の立て直しは必要だ。しかし、財務官僚たちが財政立て直しを金科玉条(きんかぎょくじょう)に掲げる裏には、こんな事情があるという。「安倍政権は“経産省内閣”といわれ、“最強官庁”を自認してきた財務省の影響力が低下してきています。そこで今回、消費増税が流れたら、前回の見送りに続き“連敗”となり、権威は地に落ちます」(元財務官僚) なんともはや、財政健全化のため、いくら理屈をこねようと、“省益”を優先しているというのだ。

 さらには、こんな話も。「これは財務省に限った話ではありませんが、役人の天下り先は今でも無尽蔵に増えています。かつて民主党政権下で事業仕分けが行われた際は、20兆円もの行政のムダがあるとも指摘されていました。これらのすべてが本当にムダかどうかは疑問の余地も残りますが、これが切り崩されないように増税派の政治家を一人でも多く懐柔したいという腹が官僚たちにあるのは間違いないでしょう」(ベテラン政治記者)

 権力保持の次は、“既得権益”の確保。それが、財務官僚が増税したがる“本音”だというのだ。そもそも、消費税の増税は、社会保障の充実とセットで行う前提で、12年に自民・公明・民主の三党合意によって決定したはず。「ところが、消費税だけが独り歩きし、社会保障充実の制度設計や年間工程が不明瞭なまま、現在に至っています」(前出の五十嵐氏)

 つまり、社会保障との一体改革は置き去りに、ただただ消費税率だけが引き上げられているわけだ。それどころか、「安倍内閣が発足した12年の翌年に、社会保障プログラム法が成立していますが、これによって、70歳以上の医療費は跳ね上り、また、介護保険の要介護1と2を対象から外すことも検討されています」(鈴木氏) これでは、社会保障との一体改革が、増税するための名目にすぎないことを暴露したようなものだ。

 選挙のために増税先送りというアメをバラ撒く首相も首相なら、私利私欲に走る官僚の「狗(いぬ)」になり下がった財務相も財務相! まさに、国民そっちのけの“仁義”なきバトルだ。どちらが勝つにせよ、国民を欺き、贅をむさぼる政治家たちには、次の選挙で鉄槌が下ることだろう。

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