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小池百合子都知事を悩ませる「東京五輪のドンブリ予算」

[週刊大衆2016年11月21日号]

小池百合子都知事を悩ませる「東京五輪のドンブリ予算」

 増えるぞ、増えるぞ、倍率ドン! 雪だるま式に膨らむ開催費用は、まぎれもなく我ら庶民の血税。“プライスレス”とは言わせない!

「まるで“底なし沼”ですね……。いつ決着するのか、見当もつきませんよ」 東京都のある部局の職員は、こうため息を漏らす。以前から高騰が問題視されていた2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催費用が、まさに天井知らずであることが判明しつつあるのだ。

「小池百合子都知事がコスト削減に努めていますが、正直言って、どこまで増えるのやら……」(前同) “都民ファースト”を掲げる小池知事は就任後、すぐさま有識者らからなる調査チームを立ち上げ、その詳細なリサーチを開始。9月29日に発表されたその結果は、驚くべきものだった。

「招致時に“コンパクト”を売りにした東京五輪は、当初は総予算およそ7340億円の予定でした。ところが、調査チームからは、実際にかかる費用が3兆円超になるという結果が上がってきたんです」(同)

 実に4倍以上。法外と言えばあまりに法外だ。そもそも、なぜ、これほど費用が膨らんでしまったのか?「五輪には、競技場の建設・整備はもちろん、周辺環境の整備、大会運営に関わる費用など、さまざまな細かいお金がかかります。ですが、大会組織委員会(以下、組織委)が招致の際に示した予算はあまりにも希望的観測であったり、そもそも盛り込まれていない事項もあったりして、完全なドンブリ勘定だったんです」(全国紙社会部記者)

 組織委を率いるのは、森喜朗会長(元首相)。小池知事の就任前から、五輪予算に切り込もうとする小池氏をたびたび牽制し、火花を散らしてきた。「ソチ五輪の際は5兆円かかっている。五輪は大変なお金がかかると、あえて申し上げたい」と開き直った発言も残している森会長。

 とにかくジャブジャブ税金をつぎ込もうとする一方、その工事の受注企業などとの、あまりに“親密な”関係を取り沙汰する報道もあっただけに、森氏の言葉を額面通りに受け取るわけにはいきません。都知事も、それを分かったうえで予算削減の狼煙を上げているんです」(前同)

 ひと言で「五輪の経費」と言っても、いったい、どのようなものがあるのか?現在、“予算戦争”の主戦場は、いわゆる「恒久施設」。五輪後も継続的に使用され続ける施設で、いったん決まった設計者が変更になったりとドタバタが続いたことで問題となった新国立競技場が代表例だ。

「他にも、ボート、バドミントン、セーリング、テニスなどの競技場がそれに当たります。五輪招致時は1538億円といわれていた費用が、舛添要一前都知事時代に再検討したところ、なんと約3倍の4584億円という計算になり、驚愕しました」(前出の都職員)

 舛添前知事がいくつかの施設を建設中止し、全体に予算を見直した結果、現状の費用は2241億円(建物本体のみの金額)にまで減っている。現在、最も話題になっているのは、ボート競技が行われる予定の『海の森水上競技場』(東京湾臨海部)。招致時は69億円だった新設費用が、舛添氏の検証で15倍の1038億円に膨らむことが判明し、その後491億円までコストを引き下げた。

「しかし、まだまだ巨額。そこで小池知事のチームは競技場の新設をやめて宮城県の登米市にある長沼ボート場を使い、開催費用を約150億~200億円に抑えることも提案しました。恒久施設の建設費は東京都負担なので、1円でも節減したいところです」(前同)

 他にも、コストがそれぞれ倍以上に膨らんだバレーボール競技場の『有明アリーナ』(東京都江東区)を横浜アリーナで賄う、水泳会場の『オリンピック・アクアティクスセンター』(同)の座席数を減らすなどして、ボート競技場を加えた3施設合計で440億円の削減が可能と、小池氏のチームは判断した。だが、小池氏も陰で頭を抱える、大きな問題がある。

「実は、すでに『海の森』の関連工事費用として、約50億円がゼネコンに支払われているんです。今から会場を移転する場合はゼネコンへの賠償金として数十億円が必要になる可能性もあり、合計100億円近い税金をドブに捨てることになりかねません」(前出の社会部記者)

 実質、それでもなお宮城県に移転したほうが安くは上がるが、削減効果は少なくなる。それでも移転を強行すれば「パフォーマンスだ」という批判も浴びるし、アスリートの負担は増す。はたして、どうするか。“小池流”のお手並み拝見、というポイントだ。一方、仮設施設は五輪後に取り壊すことを前提にした施設だ。体操、自転車、トライアスロンなどの競技場が含まれる。

「こちらも、当初見積もりの約723億円から2800億円に激増。仮設施設の整備費用は組織委の収入から負担することになっていましたが“とても払えない”と泣きつかれ、都も最大1500億円を負担することになりそうです」(前同) 自分で予算を立てておいて「払えないから金をくれ」とは、なんとも勝手な話だが……。

「実は、組織委が資金不足に陥った場合はその分を東京都が補填し、東京都が補填しきれない場合は、最終的に日本政府が補填する決まりになっているんです。つまり、ドンブリ予算を組んで足りなくなったら、都や国が面倒を見てくれることは最初から織り込み済み。税金を“打ち出の小槌”代わりにしてもらっては困ります」(同)

 都民の税金を少しでも節約しようとする小池知事と、他人の金だからとお手盛り予算を積んでいく森会長。なんとも対照的ではある。「諸外国の五輪組織委員会の会長には、各国の財界人が就任するケースがほとんど。費用対効果で物事を考えられるからです。しかし森氏には、そんな民間の感覚はありません。税金を投入することに慣れている政治家が組織委のトップであることが、会場費がかさむ一つの要因だと思います」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)

 もちろん、建設費の増加には震災復興による資材の高騰など、やむをえない事情もある。だが、それにしても、たとえば恒久施設での1538億→4584億→2241億という上下幅の大きさは異常に見える。

「今の状況は、いわば家を建てるときに、あれもこれもと自分の理想を詰め込んでいる状態ですね」というのは、建築エコノミストの森山高至氏。最大限にゴージャスな施設を造ろうとして、いったん予算が跳ね上がったわけだ。

「予算が2000万円しかないのに、理想だけを詰め込んだら6000万円の家になってしまうのは当然。五輪施設の問題は、それでも(税金で)払えてしまうことです。今後は施設ごとに大枠の予算を決め、その中で、どのような施設にしていくかを考えるという決断も必要かもしれません」(前同)

 仮設施設とは別に、選手村の整備費もかかる。小池チームの報告書では建設費945億円とされたが、こちらは民間のゼネコン連合が負担することが、猪瀬直樹元都知事の時代に決まっている。だが、用地の取得費用(221億円)や上下水道の整備、防潮堤の建設(410億円)など、都もすでに600億円以上を投入しているのだ。この選手村、終了後には高層マンション化して売却される予定なのだが……。

「実は、都が整備した土地をゼネコンに払い下げる価格がたった129億円と、明らかに不自然な安さ。一等地なのに、坪単価は伊豆諸島並みなんです。税金を投入して作った土地を赤字覚悟で投げ売りされたんじゃ、たまったもんじゃないですよ」(社会部記者)

 ここまで見てきただけでも、ハコモノ行政や業者との癒着の見本市といった趣。しかし、ここからさらにドンブリ具合を発揮するのが、我らが東京五輪だ。左の表中で「その他諸経費」とされているものは、たとえば要人警護やテロ対策、セキュリティなどの運営費。これが調査チームの試算では、なんと1兆6000億円にも上るという。

 ロンドン五輪での事例などを考えて、このように算出されたようだが、唖然とするのは、招致時に国民に発表した当初予算に、そもそも、この経費の多くが含まれていなかったことだ。「組織委の関係者は、“IOCの規定に合わせ、数字を出した”と説明しています。招致までは施設整備費だけを予算として申請すればいいので、それは分かりますが、それとは別に“総経費は、これだけ”と、きちんと国民にアナウンスしなければ、今さら言われても同意など得られるはずがありません」(前出の鈴木氏)

 招致反対の声が上がることを予想して、あえて、この数字を隠したのでは……と邪推もしたくなる話だ。「組織委が“開催ありき”で突っ走ったがゆえの事態です。必要経費はある程度仕方ないのだから、じっくり説明するべき。それをしないから、よけい利権ずくに見えるんですよ」(社会部記者)

 さて、ここまで解説してきたのは、あくまで「現状分かっている予算」。さらに怖いのは、今後、資材や人件費のさらなる高騰、工期の短縮などによって、さらに金額がかさむことだ。

「都の調査チームは今後の増加分を最低6300億円と見積もっていますが、現状のようなドンブリ発注が続くようなら、この金額は青天井になる可能性があります」(前出の都職員)

 経済評論家の杉村富生氏は、「総費用は3兆円でとどまらず、5兆円に達するのでは」という見方を示す。そして、忘れてはならないことが、もう一つ。作られた建物やインフラの多くは、五輪後も残り続ける。つまり、その維持費や改修費などは、将来にわたって発生していくのだ。

「施設を適切に運用して元を取れればいいが、五輪開催だけが目的の組織委は何も考えていないでしょう。結果、未来永劫、赤字を垂れ流し続けるハコモノが残り、我々が税金で無限に“ツケ”を払い続けなければならないかもしれないんです」(社会部記者)

 はたして、この金は五輪後も生きる我々にとって“投資”になるのか、“死に金”になるのか。11月1日からは、都、組織委、IOC、そして日本政府の4者による経費削減のための協議が始まった。役者が増えて、さらにひと波乱ありそうな雰囲気だが、はたして、どうなる!?

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