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安倍晋三首相VSトランプ新大統領「日米ガチンコ対決」の行方

[週刊大衆2016年11月28日号]

安倍晋三首相VSトランプ新大統領「日米ガチンコ対決」の行方

 アメリカがくしゃみをすると、日本は風邪を引く。“一蓮托生”とされてきた日米関係は激変を避けられないのか!?

 世紀の番狂わせが起きたアメリカ大統領選。下馬評で圧倒的優位を誇っていた民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(69)が逆転負けし、共和党のドナルド・トランプ候補(70)が第45代アメリカ合衆国大統領に就任することが確実になった。

「米大統領選は、国民の投票結果を受けて、州ごとの選挙人(上院、下院議員や党幹部、州知事ら)が投票する間接選挙制。全州から選出された538人の選挙人の投票は、12月19日(現地時間)に行われ、そこで改めてトランプ大統領が内定します」(全国紙外信部記者)

 聖書に宣誓する正式な就任式は年明け1月20日。アメリカどころか、全世界が仰天した結果に終わったが、不可解なのは事前に「トランプ優位」を報じたメディアがほとんどなかったこと。米共和党関係者が言う。

「CNNをはじめ、アメリカの大手メディアは、すべて“ヒラリーびいき”でした。逆に言うと、それが異常だったんです」 トランプ氏は選挙期間中、精力的に集会を開き、1万人近く入る会場でも立ち見が出るほどの盛況ぶり。一方のヒラリー氏は、動員力に自信がないためか、体育館やフィットネスクラブなどの収容人数の少ない会場ばかりで集会を開いていたという。

「報道は会場の大きさまで伝えません。しかも、メディアはトランプ氏の集会の熱狂ぶりを黙殺し続けました」(前出の共和党関係者) 選挙戦終盤にヒラリー氏のスキャンダルが噴出し、トランプ氏に“神風”が吹いたのも幸いした。

「かねてより、金に関する疑惑は囁かれていましたが、決定的なダメージとなったのはメール問題です。ヒラリー氏は国務長官時代、機密情報を含む職務上のメールを私用のアカウントで送信していました。FBIが捜査に乗り出したものの、捜査関係者にヒラリー陣営のスタッフが接触。もみ消しを図り、訴追を免れたともいわれています」(前出の外信部記者)

 米国のエスタブリッシュメントを多く取材する国際ジャーナリストの大野和基(かずもと)氏が、こう指摘する。「ヒラリー氏が“カネの亡者”であることはよく知られています。一番分かりやすいのは、クリントン財団。表向き、非営利を謳いながら、集まった金のほとんどは、私利私欲に使われているといわれています。彼女がウォール街の大手金融機関で講演し、巨額の謝礼を受け取っている話は有名ですが、金の儲け方がまともではありません。一方、トランプ氏は自らビジネスをして儲けていますからね」

 金の問題が選挙に影響するのは、どの国でも同じだが、それだけではないという。大野氏はヒラリー氏の政治家としての能力にも疑問符をつける。

「彼女が大統領選を争うまでの地位に上り詰めたのは、夫であるビル・クリントン元大統領の威光があったからこそ。ビルがいなければ、そもそも政界入りもかなわなかったはずです。彼女は決して仕事ができるタイプではありません。それは、国務長官時代のベンガジ事件を見ても明らか。危機管理能力に欠点があるんです」

 ベンガジ事件とは、2012年9月11日にリビアのベンガジにある米領事館とCIAの活動拠点がイスラム過激派に襲撃され、死者が出た事件。このとき、ヒラリー国務長官(当時)は、事前にたび重なる警告を受けていたにもかかわらず、セキュリティ強化を命じなかったという。

 本当は叩けば“ホコリまみれ”だったヒラリー氏だが、「大統領はウォール街が決める」との不文律が働き、これまで、あえて“優位”という歪められた情報が喧伝されてきたようだ。

 トランプ氏の大統領選を応援し、『トランプ革命』(双葉社刊)の著書のある共和党全米委員会顧問でアジア担当のあえば直道(じきどう)氏は、「世論調査では表に出てこなかった“隠れトランプ票”が、今回の選挙でかなり上積みされましたね。“隠れトランプ票”とは、体裁が悪いので表立ってはトランプ支持を明言しないけど、本当は支持者である人たちの票です」

 これまでの世論調査では、トランプ支持の数字は約5%程度低く表れていたともいわれ、それが今回の選挙結果につながったようだ。こうした“隠れトランプ現象”を、日本政府も見過ごしていた。

「安倍首相は大統領選の最中、ニューヨークでヒラリー氏と会っています。選挙戦の最中、一方の大統領候補と日本の首相が会うことは、極めて異例なこと。これは、知日派で“ヒラリー政権”で要職を務めることになっていたカート・キャンベル元国務次官補からの要請でした。一方、野党・民進党の長島昭久衆院議員はアメリカ中枢に情報源があり、事前に“トランプ勝利”の情報をつかんでいたようで、トランプ側近と10月に接触しています。トランプ当確を受けて、安倍首相周辺は長島氏を官邸に呼び、情報収集したともいわれています」(全国紙政治部記者)

 安倍首相としては、“後手に回った”感が強いのだ。「首相はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を、陰りが見えるアベノミクスの起爆剤にしようとしていました。実際、8日に衆院でTPP承認案と関連法案が可決される見通しになっていたんです。ところが、大統領選の投票3日前になって“トランプ優位”という情報をつかみ、8日の採決をいったん見送る決断を下しました」(前同)

 トランプ氏がTPPからの撤退を公約に掲げているのは事実。前出のあえば氏も、「(TPPは)議会からの評判も悪く、仕切り直しになるでしょう」という見通しを持っている。安倍首相としては、ハシゴを外されたようなものだ。

 “大逆転男”との「ガチンコ勝負」で、まずは手痛い一撃を食らいそうな安倍政権だが、TPPより、むしろ重要なのは防衛・外交問題。ここからが、安倍首相の腕の見せどころだ。まずトランプ氏は選挙中、海外に駐留するアメリカ軍の撤退を訴えている。

 このため、防衛省関係者は、「日本が独力で中国などの脅威に備えるには、年間23兆円の国防費が必要と極秘裏に試算されている。現在の国防費は約5兆円。そんな金は出せない……」と危機感を募らせている。

 トランプ政権は、日本の安全保障にとって大きな痛手となりそうだが、「人員や武器配備が量的に変化するかもしれませんが、あっさり(駐留米軍が)撤退することはありません。日本国内の基地、特に沖縄は、米軍にとって最重要拠点ですからね」(前出のあえば氏) ただし、過酷なビジネスの世界で名を成したトランプ氏だけあって、“現状のまま”というわけにはいかないようだ。外交評論家の小関哲哉氏がこう続ける。

「トランプ氏は過去の経験や、しがらみが邪魔しないという点で、逆にそれが最大の強みになっています。TPP問題もそうですが、“それは、あくまで民主党政権時代の話。アメリカに利益になるのか、再検討しよう”という強弁を使って、自分のペースに持っていくことが考えられます。特に、日本を含むアジアの在外米軍問題では、その傾向が強くなるでしょう。民主党と違って共和党は、防衛予算の負担増を“駐留している国”に求める姿勢が強いからです」 今後、駐留費の日本負担増などを巡り、安倍首相とトランプ氏とのガチンコ対決が見られそうだ。

 続いて、12月にプーチン大統領が来日するロシアとの関係も気になるところ。特に北方領土のうち、歯舞・色丹両島の返還が噂される中、トランプ政権に横槍を入れられたら、積み上げてきた日ロ関係が一気に冷え込みかねない。

「1956年の日ソ共同宣言では、2島返還は合意に達していました。ところが、アメリカのダレス国務長官が日本を恫喝し、2島返還を断念させた経緯があります」(外務省関係者)

 ロシア経済分野協力担当相なるポストを新設し、子飼いの世耕弘成氏を就任させるほど対ロ外交に鼻息荒い安倍政権だけに、気が気ではないかもしれない。「それは杞憂でしょう。現在、ニューヨークの不動産にはロシア資本が流入していますから、トランプ氏は親ロシア外交を展開していくと思います。プーチンもそれを知っており、両者は相思相愛とも伝わります」(外信部記者)

“不動産王”と呼ばれ、実業家の顔も持つトランプ氏にとっては、ロシアは大事なビジネスパートナーのようだ。もう一つの懸案は、対中国政策だろう。

「トランプ氏は公約で、中国政府による為替操作や、不当なダンピングに対して厳格に対処すると宣言しています。ですから金融経済面では“アンチ中国”となるはずですが、安全保障は微妙です。“世界の警察の放棄”と“アメリカ・ファースト”を掲げるため、南シナ海での人民解放軍の狼藉を放置する可能性もありますね」(前出の外務省関係者)

 これは、安倍政権としては絶対に見過ごせない事態。「対中政策をどう転がすかが、安倍政権の正念場になるでしょう。プーチン大統領と関係を深め、中国を牽制するオプションも視野に入れるはずです」(前同)

 とはいえ、外交は、とどのつまりトップ同士の信頼関係で決まる。トランプ氏はどんな人物なのか? 「ワンマンというイメージがありますが、普段は人の話を熱心に聞き、穏やかな人物です。一方で負けん気が強く、敵に対してはとことん攻撃する性格ですから、強面に映るんでしょうね」(あえば氏)

 こうした“ジキルとハイド”に対峙する安倍首相は、「東京五輪誘致の演説で“放射能は完全にコントロールしている”と大見得を切るほど、図太くなった感があります。ソリが合うかどうかはともかく、トランプ氏相手でもうまく対応できるはず」(前出の小関氏)

 総裁任期延長を決め、長期政権まっしぐらの安倍首相。11月17日、ニューヨークで2人は直接会談したが、さて、今後どうなる!?

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