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大谷翔平の二刀流、広島カープの躍進…2016年プロ野球「マニアック解説」

[ヴィーナス2016年12月04日号]

大谷翔平の二刀流、広島カープの躍進…2016年プロ野球「マニアック解説」

 渡り歩いた球団を必ず優勝に導き、数々の大打者から慕われ、「伊勢大明神」とも呼ばれた日本を代表する名コーチに今シーズンを振り返ってもらった。プロの中のプロの視点で見ると、野球って、こんなに奥が深いんです!

 2016年のプロ野球は、セ・リーグでは広島カープが25年ぶりに優勝し、パ・リーグでは日本ハムが11.5ゲーム差をひっくり返して逆転Vを果たすなど、大いに盛り上がりを見せた。すでに来年に照準が向いている野球ファンも多いと思うが、その前にもう一度、今季を振り返ってみたい。

 そこで、野村克也監督の下、ヤクルトで打撃コーチを務め、3度のリーグ優勝、2度の日本一に輝き、その後も近鉄、巨人など、行く先々のチームを優勝に導いた伊勢孝夫氏にインタビュー。レジェンド級の裏話まで飛び出した!

 インタビューが行われたのは、日本ハムがCSファイナルステージでソフトバンクを撃破した翌日のことだった。「凄いのが出てきたね。大谷(翔平)は限界を超えとんな。日本人じゃ打てない。あれは無理や」

 1戦目、大谷は7回1安打無失点と好投。5戦目には、7-4で迎えた最終回、リリーフでマウンドに登り、日本最速の165キロを計測。圧倒的な投球で、試合を締めくくった。「もしワシが打撃コーチやったら、タオルを投げてるな。ノムさんが監督だったら試合中に“おい、なんとかしろよ”って言うんやけど、“なんとかなりません”って言うよ。大谷が投げる試合は捨てさせるな。松坂大輔は“平成の怪物”っていわれてたけど、大谷は何やろな。“平成のゴジラ”か(笑)」

 伊勢氏が白旗をあげるほど、大谷の投手としての才能はズバ抜けているのだが、打者・大谷について聞いてみると、「打者としては、けっこう攻めるところがある」と話す。

「上背があって、リーチが長いから、ベルトから上、つまりインハイは絶対に打てない。ただ、それには条件があって、145キロ以上の真っすぐな。CSでも攝津(正)や岩嵜(翔)が徹底的に、そこを攻めてたけどな。でも、それだけ大きなウィークポイントがあるのに、そこまでマークせなアカンのかと。それやったら、中田(翔)やろと思って見てたんやけど。結局、中田に打たれたよな。マークの仕方が悪かったんとちゃうかな」

 もう一つ、CSで印象的な場面が伊勢氏にはあったという。「3戦目の初回、ソフトバンクの千賀(滉大)がレアードに3ランを打たれたけど、なんでやねんと。1-1から4球続けてフォーク。最後に高めに浮いてホームラン。“そこは1球インサイド挟まなアカンやろ!”って、思わずテレビの前で口に出してたよ。次の打席は徹底してインサイド攻めてたけど、打たれてからじゃ遅いわ。実はベテランの捕手(細川亨)だと、一か八かの勝負をせんのよ。安全策に行く。年寄りの捕手には大きな落とし穴があるんよ」

 この細川の配球と同じようなシーンが15年前にあったという。それが近鉄対ヤクルトの日本シリーズ。伊勢氏は近鉄のコーチとして古巣ヤクルトと対決することになる。相手の捕手は“野村IDの申し子”古田敦也だった。

「1戦目、(石井)一久にピシャリと抑えられて、2戦目や。8回に五十嵐(亮太)が出てきたのよ。打席にはタフィ・ローズ。2-2からストライクからボールになるフォークを悠々と見逃した。フォーク待ちやったんや。それで2-3から敦也は続けてフォークを投げさせた。それを打って3ランや。あくる日“なんで真っすぐじゃなかったんや? フォーク待ってたの分かってたやろ”って聞いたら、“もちろん分かってました。フォークなら打たれても長打はない。真っすぐならホームランがある。だけど、フォークが落ちなかったんですよ”って言うとったけどな。ローズに“フォーク待っとんたんやろ?”って聞いたら、“ボクにはフォークしかないでしょ、イセさん”って。お前も、だいぶ日本の野球に慣れたなって言うた記憶があるよ」

 このとき、古田の年齢は36歳。名捕手といえどもベテランとなって、配球に偏りが出てしまったのか。「敦也は球種がたくさんある投手が好きで、ねちっこくリードするんだけど、球種が少ないと“もう邪魔くさい”ってなるタイプなんや。カーブがボール、スライダーもボールになると、“あー、これでいけ!”って真っすぐを投げさせる。ノムさんが“なんで、そこで真っすぐやねん”ってよくボヤいてたわ」

 配球については、野村IDを受け継ぐ伊勢氏にとって大の得意分野。興味深い話が次々と飛び出した。その中で特に印象深かったのが、「セとパのリードの違い」だった。

「たとえばセではシュートを投げてボールだった場合、次もシュートという配球はない。80%の確率でないな。シュートがボールになったら、次は外にスライダーとなるわけよ。だけど、パではシュート、シュート、その次もシュート。4球続くこともある。伊東勤に聞いたことがあるんだけど、勝負球らしい。96年にコーチで近鉄に移ったときも、古久保(健二)が2-2のカウントで、ようシュート使うねん。ボールになったら2-3で投手が不利やん、他に使いやすいカウントがあるやろって言うんやけど、古久保も同じこと言ってたわ。勝負球やと。この流れは今も続いてると思うわ」

 配球といえば、セ・リーグCSファーストステージの巨人対DeNAで、DeNAの左投手陣が巨人右打者の内角を果敢に攻めて沈黙させたのが記憶に新しい。「正解やね。今の左投手はインコースを攻めるのが下手。外角に真っすぐ、そのあとまた外に緩いチェンジアップを投げる子が多い。その点、DeNAの今永(昇太)は、インコースにいい球を放ってる。今の時代、貴重やね。もちろん、甘く入ると打たれるよ。次の広島戦では内を狙って甘くなって、エルドレッドに打たれたやろ」

「だけど、右投手のアウトロー、左投手のインロー。これが投手の原点。ヤクルトの石川(雅規)が128キロで見逃し三振が取れるのは、外を思わせておいて、内に投げられるからや。それができてたのは、一久かな。インコースを投げられるから、外のスライダーも決まるんや」 野村氏もよく話す“原点”、右打者のインローに投げられない左投手は、投手にあらずということなのだ。

 今季のプロ野球で最も話題をさらったのは、広島の躍進だろう。伊勢氏は、どう見ていたのだろうか。「新井(貴浩)がガラリと変わったね。阪神時代に比べて、最初の構えでタメが十分にできとる。それをほどかずにステップできてるから、逆にも打てる。阪神時代は、それを指摘するコーチがいなかった。広島で誰かが指摘したのか、自分で変わったのか。あいつが打つと、ムードメーカーになるしな。新井が打つと、田中(広輔)とか菊池(涼介)は出塁することに専念できる。新井がいなかったら、優勝できなかったかもな」

 各自が役割を理解し、きちんとこなせているのが、広島の強さにつながっているのだろう。「田中や菊池は走塁にしろ、自分で判断できてやれとるよな。ノムさんは“攻撃のサインはいらん。自分たちで考えたら、何をすればいいか分かるやろ”って言ってたけど、広島はそれができる。先に進んどるわ」

 広島が抜け出した一方、高橋由伸、金本知憲ら“新人監督”の手腕は、伊勢氏の目に、どう映ったのだろうか。「由伸は何をどうしたいのか、分からんかったよな。送るのかエンドランなのか。ただ、コーチ陣に原(辰徳)君の残党が残ってるでしょ。ヘッドコーチが村田真一で、2軍監督が斎藤雅樹やし。小耳に挟んだんやけど、“前の監督のときはこうだった”って言うやつもおるそう。そういうのを一掃しないとアカンよな。これじゃ由伸色が出せない。やりにくいと思うわ。これは会社の責任や」

 開幕前に“超変革”を謳った金本阪神の1年目は、どうだったのだろうか。「新聞に“金本が早出特打ち指導”って出てたけど、コーチは何してんねん。組織って、信頼の置けるやつを置いて、その人に任せるもの。それでダメなら、コーチに“こうしてほしい”って言わな。だったら一人でやれよってことだし、片岡(篤史)も監督の意向を聞きつつ、自分の理論を出さなきゃアカン。何してんねんってなる。金本が悪い、片岡が悪いじゃなくて、超変革って言うなら、そこらから変えなアカンわ。2チームとも、どう変わるか。見させてもらうわ」

 71歳となった今でも、過去のことを事細かに話す伊勢氏。また、ユニフォームを着るに違いない。

大谷翔平の二刀流、広島カープの躍進…2016年プロ野球「マニアック解説」

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