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Yuki Saito(映画監督)「ハリウッドで、めちゃめちゃに打ちのめされました」臥薪嘗胆の人間力

[週刊大衆2016年12月26日号]

Yuki Saito(映画監督)「ハリウッドで、めちゃめちゃに打ちのめされました」臥薪嘗胆の人間力

 小学3年生のときに、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て、将来は俺もこんな映画を作るって決めたんです。それで、高校卒業後すぐ、映画の勉強をするため、一人でアメリカに渡りました。昔からの夢をようやく叶える時が来たと意気揚揚と乗り込んでいったわけです。

 ただ、理想が大きかった分、現実とのギャップがありすぎて、まあ、めちゃくちゃに打ちのめされました。ハリウッドって、半端じゃない競争社会。映画の大学に入ったんですが、入学式でこう言われるんです。“今両隣にいる人と、互いに自己紹介してくれ。まずは、卒業までにその両隣の2人より上に行け。ウェルカムトゥーハリウッド。競争の社会へようこそ”って。それを聞いて、隣の連中は、“オフコース。やってやるぜ!”みたいなもう自信たっぷり。

 ひと学年に、100人くらいいるんですが、そのなかで監督になれるのは1人か2人。向こうの授業って基本的に挙手制なので、周りは積極的に挙手して、どんどん自分をアピールしていく。だけど、なかなか自分は積極的になれなかったんですよ。

 見兼ねた先生が、“今回は、Yukiにやらせよう”って一度チャンスをくれたんですが、自信がなかったんでしょうね。“I can’t speak ENGLISH”って英語ができないことを言い訳にして逃げちゃったんですよ。クラスの連中は、“ワーオ”って呆れた声ですよ。もうその時の声が今でも耳にこびりついています。

 その後、大学を卒業したんですが、ノーマン・パウエルっていうドラマ『24』のプロデューサーの方が、大学に週1回講義をしにきていたんですが、彼のアシスタントとして、大学に残ることができたんです。

 でも、先生が本業のほうが忙しくなって、大学を辞める時が来た。その最終日に、呼び出されたんですよ。内心、“おっ、ついに現場に連れていきたい”とか言われるのかなと思ったら、“今のままでは、君は200%監督になれない”って言われたんです。もう悔しくて悔しくて。

 ただ、先生はこうも言ってくれたんです。“アメリカにいる監督の50%は外国籍だ。彼らはアメリカ人にはない独自のルーツを持っているから重宝される。君は日本人なのに、必死にタランティーノになろうとしている。日本人ならではの視点で、映画を撮ることのほうがハリウッドへの近道だ。今すぐ日本に帰ったほうがいい。日本で自分の納得いくものが撮れたら、送ってくれ”と。自分自身、アメリカに来て、日本のことを知らないってことを痛感していたし、そのことがきっかけで、日本に帰ることにしました。それが、27歳の時でしたね。

 日本に帰ってからは、日本ならではのものを撮ろうと、銭湯や、しゃぶしゃぶとかを題材に映像を撮ってきました。最初は、ハリウッドで勉強してきたんだぜって感じで、生意気だったと思います。結局、日本でも天狗になった鼻を何度も折られて、打ちのめされました(笑)。

 そんな時に川端康成の名作『古都』の映画化の監督をやらないかと声をかけてもらった。“時は来た”って思いましたよ。ただ、原作の偉大さはもちろんですが、過去に中村登、市村昆と巨匠が映画化している。比較される対象の存在が大きすぎる。しかも、僕にとっては長編商業映画のデビュー作になる。失敗したら、もう声はかからなくなるだろうなって不安もよぎりました。

 でも、そんな時に“ワーオ”って、あの時の声が甦ってくるんです。あの時と同じ思いはしたくない。“チャンスがあるならやろう”って。プレッシャーはとてつもなかったんですが、一度、日本を外から見た自分だからこそ、わかる日本の伝統を描けた映画になったんじゃないかなと思います。この映画のDVDを先生に送ろうとは思うんですが、できるなら、アメリカの劇場でも上映されるほど、日本で映画をヒットさせて、アメリカの劇場で先生に見せたいですね。

撮影/弦巻 勝

Yuki Saito ゆうき・さいとう
1979年6月21日、千葉県まれ。高校卒業後に渡米し、ハリウッドで8年間映画を学ぶ。06年に帰国し、08年には『カクレ鬼』で、ショートショートフィルムフェスティバルで観客賞を受賞。また、被災地のペットたちの救援活動を記録したドキュメント『インスタントペットハウス』でカンヌ国際広告祭「Direct部門」でシルバー賞など数多くの賞を受賞。そのほかドラマやミュージックビデオなども手かげる期待の新鋭映画監督。松雪泰子、橋本愛、成海璃子、伊原剛史ら豪華俳優陣が出演する映画『古都』が公開中。

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