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中川学(漫画家)「くも膜下出血になって、本格的に漫画を描き始めた」死の淵から生き返った人間力

[週刊大衆2017年02月13日号]

中川学(漫画家)「くも膜下出血になって、本格的に漫画を描き始めた」死の淵から生き返った人間力

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 29歳のとき、くも膜下出血を発症して、生死の境をさまよった。その経験を漫画にしたのが、今回映画化してもらうことになった『くも漫。』です。

 当時、小学校の臨時講師の仕事をしていたんですが、冬休みになって、自分へのご褒美として、札幌の風俗に行ったんです。雑誌を読んで、悩みに悩んだ末に、“この子だ”と決めて、いざ店に行ってみると、写真より断然カワイイ子が出てきたんです。もう、絶好調でしたよ。ここは天国なんじゃないかと。でも、一気に地獄に落ちましたけど(笑)。

 本当に何の前触れもなく、金属バットで頭をガーンっと殴られたような激痛が頭に走った。ベッドにうずくまっていると、再び激痛が走って、脂汗がとめどなく流れてきたんです。女の子が救急車を呼んでくれたんですが、来るまでに脂汗でベッドに水たまりができるくらい。

 救急車に乗せられて、病院に行くんですが、全身麻酔をかけられるまで、意識があったんです。店の雑居ビルから出ると、外は人だかりで声が飛び交っているのを認識できるくらいでした。集中治療室で、手術を受けて、意識が朦朧としたまま3、4日は生死の境をさまよったんですが、その後徐々に意識が戻ってきて、大きな後遺症もなく、無事に退院することができました。

 風俗でくも膜下出血になるってなかなかない経験だなと思って、漫画として描くことにしたんです。でも、けっこう気まずかったですね。家族には早い段階でバレていたんですが、連載を始めたら、親戚にまでバレちゃいましたからね。ずっと、僕の漫画を読んで、応援してくれている叔父さんがいるんですが、SNSでも繋がっていて、本が出るたびに“いいね”って押してくれていたんですが、そのときだけは、押してくれませんでした(笑)。

 本が出てから、親族の集まりがあったんですけど、めちゃくちゃ居心地が悪かったですよ(笑)。何を言われるんだろうってビクビクしていたら、誰もその話題に触れてこないんですよ。触れられたほうが気楽なのに、逆に気まずい。

 でも、いとこのお兄ちゃんが“あれ、見たよ”って言ってくれて、それから、みんな“この話題に触れていいのか”って思ってくれたのか、“おもしろかったよ”って声をかけられました。いまでは叔父さん含め、みんな応援してくれています。

 病気になって、実感したのは、人間っていつ死ぬかわからないんだなっていうこと。それまでは、ほとんどニートで、たまに働いたりとフラフラしていて、自分の好きなことを極めようとかってこともなかった。正社員になって、安定しなきゃいけないっていう気持ちと、好きなことをやりたいっていう気持ちの板挟みで、身動きが取れないまま、時間だけが過ぎていっていたんです。

 でも、くも膜下出血になって、いつ死ぬかわからないんだから、生きているうちに好きなことをやっておいた方が、すっきりするかなと思って、本格的に漫画を描き始めようと思ったんです。くも膜下出血になってなかったら、あのまま中途半端な生活のままだったかもしれません。だから、偉そうかもしれませんが、“人生に絶望するのは、『くも漫。』を読んでからでも遅くないですよ”ってことが伝われば、うれしいですね。

 死にかけたおかげで、好きな世界で仕事ができるようになったので、漫画は一生描き続けていきたいなと。自分でルールを決めているんです。オファーがこなくても、毎日4コマ漫画1本と、デッサンひとつ、その日のおもしろい出来事をメモすると。

 仕事はもらえる方が、もちろんいいんですが、そのルールだけは守って生きようと思っています。まあ、なんだかんだで、漫画を描くのが楽しいですからね。

撮影/弦巻 勝

中川学 なかがわ・まなぶ
1976年、北海道生まれ。大学卒業後、小中学校の臨時講師、シイタケの収穫など様々なアルバイトを経験。11年、漫画家志望の若者に格安で住居を提供するトキワ荘プロジェクトに応募して上京。コミックエッセイ『僕にはまだ友だちがいない』で単行本デビュー。最新作は、自身の失踪体験を綴ったコミックエッセイ『探さないでください』。また、『家電批評』にて『家電黙示録マナブ』を連載中。中川学先生が原作の映画『くも漫。』は2月4日より、新宿バルト9ほかにてロードショー。

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