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佐藤天彦(第74期名人)「将棋には勝ち負けじゃない魅力がある」気持ちを整える人間力

[週刊大衆2017年04月10日号]

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佐藤天彦(第74期名人)「将棋には勝ち負けじゃない魅力がある」気持ちを整える人間力

 昨年の4、5月の名人戦で羽生善治さんの王様を詰ますことができたときは、信じられない気持ちでした。もちろん、名人になりたいとは思っていたんですが、気負いがマイナスになるとも思っていたので、極力、自然体で指そうと思っていました。

 それに、性格的な部分も大きいんですが、あまり緊張しませんでしたね。名人戦は大きな舞台ではあると思うんですが、それを運営したり支えたりしているのは、一人一人の人なんですよね。

 名人戦というイベントにいろんな役割を持った人が参加しているわけで、挑戦者として特別な存在というより、その中で対局者としての役割を果たすという思いで指していました。自分ができる以上のことはできませんからね。

 ただ、不安がよぎる瞬間はもちろんありましたよ。2日制なので、2日目のお昼過ぎくらいから解説会があるんです。見る側からしたら、当たり前のように、その時間はまだやっていると思うんでしょうが、やっている側からすると、それまでもたずに、負けちゃうんじゃないかとか。ただ、午前中にそう思っていたら、次の瞬間に夕方くらいになっていたりしますけどね。

 対局中の時間の感覚ってちょっと変なんですよ。対局中は長い時間、戦っていますから、いろんな気持ちになるんです。一番危険なのが、自分の指し手を後悔する気持ち。将棋に対するモチベーションも集中力も落ちてしまうので。

 そのときに、切り替える力っていうのが大事で、それも実力の一部なのかなと思っています。将棋をやっていると、何回も負けますからね。それを引きずらない方法を、システム化することが大事だなと思います。

 勝ち負けにこだわりすぎないようにすることも必要なのかなと思います。もちろん将棋をやる上で、勝ち負けが一番大事なことだとは思うんですが、それだけだと、負けたときに何も残らなくなってしまう。将棋には、勝ち負けじゃない魅力があると思うんですよね。2人が真剣にぶつかったからこそ、人為的なものでは決してない棋譜ができあがるんですよ。それも魅力のひとつだと思いますね。

 ほかにも、思考のプロセスがおもしろかったりしますね。対局中に、何を指せばいいのか分からない局面が出てくる。そこで、考えて考えて、でも分からない。いくら考えても分からないんじゃないかと思うときもあるんですが、あるとき、1つ1つの考えが点だとすれば、それが線になる瞬間が、あるんですよ。点でみると、ダメだけど、それを組み合わせて考えてみると、フッとつながる。その瞬間が気持ちいいですね。

 でも、いくら平常心を保とうと思っても、やっぱり波がありますからね。多少のスランプなら、自分のスタイルを信じて、じっと耐えて待てばいいんですが、これはスタイル自体を変えなければいけないっていうときもあるんです。

 最近だと、去年6連敗していた時期があったんです。そのときは、自分のスタイルがある程度煮詰まってきていて、新しく考える局面が少なくなってしまっていたんです。そうなると、盤面を見ても新しい手を考えるというモチベーションがなくなってしまっていた。

 これは、ドラスティックに変えないといけないなと思って、先手では角換わりという戦法を使っていたんですが、矢倉にしたんです。いままでの研究が白紙になったんですが、それ以上に、内から沸いてくるモチベーションのほうが大事だなと思ったんです。やっぱり、興味を持って局面を考えられるということ、考え甲斐あることって大きいんですよね。

 将棋は、スポーツと違って何十年と長いスパンで戦っていかなければならないので、一時的に負荷をかけて、自分が好きじゃないものをやっていくよりも、もともと自分の中にある将棋に対する好きという気持ちを大事にしてこれからもやっていきたいなと思っています。

撮影/弦巻 勝

佐藤天彦 さとう・あまひこ
1988年1月16日、福岡県生まれ。中田功七段門下。98年9月に関西奨励会に入会し、06年に四段に昇段し、プロデビュー。08年、11年に新人王戦で優勝。15年にA級に昇格。16年5月には、羽生善治を破り、名人位を獲得。28歳は、史上4番目の若さで、16年ぶりとなる20代での名人位獲得となった。4月6日からは、挑戦者・稲葉陽八段との名人戦七番勝負が始まる。

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