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睡眠時間、寝酒、脳の掃除…健康特集「間違いだらけの睡眠常識」

[ヴィーナス2017年04月04日号]

睡眠時間、寝酒、脳の掃除…健康特集「間違いだらけの睡眠常識」

「最近は、そこまでハードに仕事してないのに、なんだか体はダルいし、頭も重い。年のせいかな……」 そんな“違和感”を感じている読者の方はいないだろうか?

「身体の慢性的な不調の多くは、もちろん生活習慣によるもの。食生活や運動の大切さは十分認知されていますが、それ以上に大事なのは“睡眠”です」 このように語るのは、睡眠と生産性の関係について研究する、脳科学者兼コンサルタントの菅原真一氏だ。

「そもそも、誰もが勘違いしがちなのは、人はみんながみんな長く寝ればいいというものではないこと。“5時間も寝れば頭がスッキリ”という人もいれば、“12時間も寝たのに、まだ眠い”という人もいます。体質や生活リズムなどによって、適正な睡眠時間には個人差があるんですよ」

 しかし、単純に「あなたは何時間ですよ」と算出するのは、複雑な検査を経ても困難なのだという。「そのため、ある程度の時間を確保したうえで、なおかつ、それに見合った“質”をキープすることが大事。“ただ寝ているだけ”では、たとえ10時間だろうと20時間だろうと、4時間の上質な睡眠には勝てない。いわゆる“ジャンク睡眠”ということになってしまうんです」(菅原氏=以下同)

 ジャンク睡眠とは、たとえば電気をつけっぱなしであったり、物音がする中で寝たりと、阻害要因がたくさんある環境で眠ること。一見、寝ているように見えても脳は本人も知らないうちに様々な情報を処理しているので、これでは結局リフレッシュされないのだ。「また、脳の機能を考えるうえで、実はお勧めできないのが“明日は早いから、今夜はいつもより早く寝よう”という行為です」

 なんと、早寝が睡眠の質を下げるというのか!? 「脳には、生活のリズムが刻み込まれるもの。たとえば、いつも23時に寝る人が“明日は2時間早く起きたいから、21時に寝よう”としても、いつもは脳が覚醒している時間なので、なかなか眠りに落ちることができない。結果、床についてからも何かと物事を考えてしまい、さらには“早く寝なきゃ”というプレッシャーで、よけい脳がアクティブになりかねません」

 また、18~22時あたりの時間帯は、昼から夕方にかけて低下した脳の活動が再度活発化する、脳にとっても“ゴールデンタイム”。この時間に無理やり眠ろうとしても、なかなか脳が休んでくれないという。

「結果的に1~2時間ほどで目が覚めて、その後は浅い眠りを繰り返してしまい、睡眠不足のまま家を出ることになってしまいます。翌日の予定があっても、ちゃんと眠気を感じるまで活動して、いつもの時間に眠ったほうが、睡眠は短くても脳は休まるんです。つまり、“眠くなくても、とりあえず寝床に入って目を閉じていれば、脳の疲れは取れる”というのは真っ赤なウソ。寝床には眠くなってから、寝る直前に入るのが一番です」

 同じことは、実は朝の起き方にも通じている。「最近はサマータイムの導入が提唱されたり“朝活”が流行したりと、日中の活動時間を朝に広げ、早めに仕事を上がろうという雰囲気があります。加重残業が社会問題化していることもあり、企業でも早朝勤務を奨励するところが多いようですが、これも大間違いです」

 早起きは三文の得ということわざもあるように、習慣づけるのは悪いことではないような気もするが……。「“太陽光を浴びると体内時計がリセットされるからいい”と言いますが、この効果は実は1日しか持続せず、それだけで勝手に早起きの体に調整されるようなものではないんですよ。1日でもサボると途端に“ただ生活リズムがずれた人”になってしまい、体調不良などの原因となるだけなんです」

 つまり、朝型を習慣づけるためには、たまの休みに朝寝を楽しむのも厳禁。ひたすら同じ時間に起き続けなければならない。「2時間程度の早寝早起きに体内時計を調整するのに、約3~4週間は連続して同じ時間に起き続けなければならない。蛍光灯などの夜の光は、日光とは逆に体内時計を夜にシフトする働きがあるので、夜型の人ほど、この調整に時間がかかることになります。けっこうな苦行ですよ」

 では、寝酒でも飲んで、さっさと深い眠りに落ちればいいのかというと、これもまた睡眠の質を落とす要因なのだという。「アルコールは脳内物質と結びついて催眠効果をもたらすので、たまにビールを1杯程度なら、確かに効果的でしょう。しかし、それが習慣化すると逆効果。睡眠は前半は深く、後半は浅くなりがち。血中アルコール度数が下がって、催眠効果が切れるタイミングで眠りが後半にさしかかると、反動で一気に脳が覚醒してしまうんです」

 だからといって、毎晩、血中アルコール度数が下がらないほど飲むのも健康に悪い。悩ましいところだ。

「さらに、毎晩飲酒をしていると、アルコールに対する耐性がついて催眠効果が弱まることが多いんです。結果として深酒になり、いつしか“飲まないと眠れない”という依存症の症状を呈してしまう。個人差もありますから、一概には言えませんが……」

 菅原氏によれば、晩酌はそこそこの量でとどめておき、できれば床につく3時間前には酒を切り上げて、眠りの前半の間に体内からアルコールが抜ける程度にするのがいいそうだ。

 いやはや、現代人の生活は、とにかく体内リズムを狂わせるような要素だらけ。これでは何時間眠っても、眠気が取れない人が出てきてしまうのも、仕方ない。そうした睡眠不足の恐ろしいところは、単に翌日に眠気を催すというだけではないところだ。米国の最新の研究から、睡眠不足の危険な“副産物”の存在が実証されようとしている。

「脳は睡眠中、ただ休んでいるだけでなく、脳内に溜まった“老廃物”の大掃除をしているようなんです。人間が体から老廃物を出すとき、血液やリンパに乗せて流しますが、脳には、その経路が発見されていませんでした。しかし、なんと睡眠中に脳の一部の細胞が縮み、その経路を作っていたんです」

 この大発見が、ある“仮説”に力を与えた。「睡眠とボケの関係です。眠りの質が悪い人の脳細胞の周りには、アミロイドといわれるタンパク質が多く生成されがち。そして、これが多いほど、将来的にアルツハイマー性認知症のリスクが高いんです。このアミロイドも、睡眠中に老廃物として流されるものの中に含まれますから、質の良い睡眠を十分に取ればボケにくくなるし、長く寝てもジャンク睡眠になってしまっていると、ボケのリスクが高まるということですね」

 これまでにも眠りとボケの関係は仮説レベルで指摘されてきたが、それが一段と科学的に裏づけられそうなのだ。今の時代に認知症が増えているのは、高齢化社会に加え、眠りの質が、この数十年で下がってきた証拠なのかもしれない。

 そして、仮に脳が十分休んでいたとしても、さらなる問題もあるという。「“日中に眠気を感じることはないし、自分は睡眠が足りている”と思っている人の多くが、実は隠れた睡眠不足を抱えているんです」

 必要睡眠時間が人によってまちまちというのは、前述した通り。それは脳を休める働きのためだけでもなく、インスリンや甲状腺ホルモンなど、ホルモンや自律神経系のバランスを取る時間も含まれている。

「そして、脳が働きを維持するために必要な睡眠時間と、神経機能にとって必要な時間の間には、ズレがあるんです」

 ここで、先ほど飲酒の話で取り上げた「眠りは前半が深く、後半が浅い」という話を思い出してほしい。これは、まず脳機能の回復に必要な深い眠りを確保し、その後、浅い眠りで身体機能を回復しているのだ。

「現代人は目覚まし時計などによって、この後半が途中で遮断されがちで、身体やホルモン系の回復が足りていない。そのため、頭はスッキリしていても、体への負担が回復しきれていない人が多いんです」

 さらに、この機能の回復は、1日や2日必要睡眠時間を確保できれば行われるというものでもない。「週末の寝溜めが効果ナシというのは、脳が休まるという意味で半分はハズレですが、平日に崩した心身機能のバランスを回復するには足りないという意味では当たり。慢性的な疲れの原因は、こういうところにもあるんです」

 この“隠れ睡眠不足”の怖いところは、なまじ眠気を感じないが故に「解消しよう」という意識が働かないところ。こうして自律神経系のチューニングがうまくいかなくなれば、当然、健康にも悪影響がある。「ホルモン系の異常は、うつ病や不眠症、がんや急な心臓の発作など、あらゆる部分に影響しますから、深刻な問題です」

 解消には「よく寝る」以上の策はない。もどかしいが、それが事実なのだ。「現代に生きている以上、仕事も何もかも忘れて何日も好きなだけ眠るのは無理。ですが、3連休など長期の休みには、なるべく刺激を少ない状態にして、途中でブツ切りのように覚醒をしないですむ環境を作り、まず思う存分、寝るということも必要ですよ」

 明日の眠気もさることながら、未来の自分のためにも、やはり睡眠は大事。なるべく質のいい睡眠を取る習慣をつけたいものだ。

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