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野村克也、落合博満、王貞治…プロ野球「名監督たちの神采配」プレイバック

[ヴィーナス2017年05月04日号]

野村克也、落合博満、王貞治…プロ野球「名監督たちの神采配」プレイバック

 野村克也氏が「野球は頭が8割」と言ったように、野球は、戦術や選手起用によって結果が大きく変わるスポーツである。それゆえ、監督たちの“一手”は時に、ものすごい奇跡を生み出す――。

 第4回WBC閉幕から1か月以上が過ぎた。敗退したアメリカとの準決勝こそ沈黙したものの、筒香嘉智(DeNA)を筆頭とした打線は活発だった侍ジャパン。一方で、大量リード場面での牧田和久(西武)の投入や、則本昂大(楽天)、平野佳寿(オリックス)の“イニングまたぎ”など、不可解な采配があったのも事実。眉をひそめたファンも多かったことだろう。

 そこで今回は、伝説的な名采配を、スポーツ紙記者、スポーツライターらとともに選出。歴代監督たちの見せた華麗なる手腕の数々を振り返っていく。

「ヤクルト時代以外は、結果が伴っていませんが、純粋に“采配の妙”ということで言えば、やはり野村克也監督の采配を真っ先に挙げたいですね」(スポーツ紙デスク)

 今では一般的になっているギャンブルスタートや、12年にDeNAの中畑清監督が、ロッテ戦で成功させたフォースボークといったトリックプレーも、野村監督が始めたもの。「“再生工場”と呼ばれた意外性のある選手起用でも実績を残している。引退を決意していた選手の寿命を延ばすことになった、92年の日本シリーズ第1戦での杉浦享の代打サヨナラ満塁ホームラン。97年の巨人との開幕戦で飛び出した小早川毅彦の3打席連続本塁打なんかは、まさしく、その真骨頂でしょうね」(前同)

 阪神時代の00年には、左腕の遠山奬志と右腕の葛西稔を、マウンドとファーストで交互に起用する「遠山葛西スペシャル」なども話題を呼んだ。その翌年のオープン戦では、「F1セブン」の一角として売り出した、ルーキーの藤本敦士を一塁、赤星憲広を三塁に置いた場面。藤本にわざとつまづかせて、赤星に本盗をさせるというトリックプレー(フォースボーク)も成功させている。

 楽天監督時代の08年「巨人対楽天戦」も、野村監督の策士ぶりが際立った試合。巨人の原辰徳監督は、2点ビハインドの9回2死から盗塁のサインを出し、野村監督は「バッカじゃなかろかルンバ」と揶揄し、話題になった。

「マスコミを通じ、相手の監督やチームを挑発することで、優位に立とうとするのが野村監督のやり方。あの言葉もすべて計算ずく。采配は、グラウンドの中だけではないということを体現していましたね」(スポーツ紙中堅記者)

 野村監督に続く存在と言えば、落合博満監督を置いて他にはないだろう。「当時は物議を醸した07年日本シリーズでの、山井大介&岩瀬仁紀のパーフェクトリレーあたりは、落合さんならではの冷静な判断でした。それまで一度も1軍登板のなかった川崎憲次郎を起用した04年の開幕戦なども、就任初年度にして“オレ竜とは、こういうことだ”という意思表示を内外にしてみせたわけですから、あれもまた、れっきとした名采配ですよ。GMとしての評判はともかく、監督としての落合さんは、どう考えても名将ですね」(野球誌編集者)

 ちなみに、批判も渦巻いた山井の一件は、登板中にマメを潰していた&右肩痛でCS登板を回避していた、といった複合的な判断から本人も納得の降板。川崎の起用についても、当の本人が「意気に感じた」と述懐するなど、そこに選手との信頼関係があったがゆえに振りえた采配でもあったのだ。

 名将と言えば、この人の名前も。「僕は仰木彬監督を推したいですね。打線の組み替えや巧みな継投といった実戦における“仰木マジック”もそうですが、今や日本だけでなく世界の至宝と言ってもいいイチロー(現・マーリンズ)を世に送りだした功績は、とてつもなく大きいでしょう。また、当時は物珍しかったカタカナ表記の登録名にしたって、佐藤和弘を同時に“パンチ”へと改名することで、しっかり風よけにしていましたしね」(スポーツライター)

 監督の代名詞として“マジック”が浸透しているのは、往年の巨人を率いた三原脩を除けば、仰木監督とロッテを率いたボビー・バレンタインぐらい。そういった意味でも、近鉄、オリックスで一時代を築き上げた仰木監督は、90年代を語るうえでも、特筆すべき存在と言っていいだろう。

「誰もが認める“名将”というわけでは決してないですが……。最近だと15年に楽天・大久保博元監督が下した松井裕樹のクローザー転向なんかは、かなりの名采配ではないですか。デーブさんいわく、血液検査で副交感神経が優位な自律神経の持ち主、つまり緊張しにくい性格であるということに、お墨つきをもらったうえでの配置転換だったそうですから、単なる思いつきではなさそう。それが2年連続30セーブを達成して、最年少で侍ジャパンに選ばれるまでになっているんだから、大したものだと思います」(楽天担当記者)

 ちなみに、楽天では、13年日本シリーズで星野仙一監督が見せた第5戦での則本の中継ぎ抜擢から、第7戦での田中将大(現・ヤンキース)のクローザー起用に至るまでの流れは、いまだに語り草。対戦した巨人ベンチを圧倒するほどの一体感で球場全体を覆った、あの異様なムードは、采配ひとつが観客の心をも大きく動かした瞬間でもあった。

「WBCで盛り上がったから言うわけではないですが、06年の第1回WBCでジャパンを率いた王貞治も、やっぱり名将です。中でも、準決勝・韓国戦での代打・福留孝介のホームランは出色。不振でスタメンを外されていた彼を、あんな場面であえて使うなんて、なかなかできることじゃない。あの一発がなければ、世界一にはなれなかったでしょう」(スポーツ紙中堅記者)

 そうしたベテラン勢の活躍は、WBCの歴史でもある。第2回WBCではイチローの決勝タイムリー。第4回大会でも、青木宣親(アストロズ)や内川聖一(ソフトバンク)といった、ベテランの一打が、何度も日本打線を勢いづかせていた。小久保監督が“名将”かどうかはさておき、代打の出しどころ、ベテランの存在感が、戦局すらも大きく変えるのだ。

 反対に、若手の起用法に定評があるのは日本ハムの栗山英樹監督。「昨季の大逆転優勝で、さらに評価を高めましたが、やはり采配はうまいなと感じます。栗山さんとハムの選手たちには、どこか“あうんの呼吸”があるんです。ビジターの首位攻防戦で、いきなり1番に大谷翔平を起用するだけでも考えられないのに、その大谷自身が起用に応えて先頭打者ホームランを叩き込むなんて、漫画のような出来事が起きてしまうわけですよ」(日本ハム担当記者)

 栗山監督の采配に応じた選手の神がかり的活躍がなければ、最大11.5ゲーム差をひっくり返すことはできなかっただろう。「逆転されてしまったソフトバンクの工藤公康監督も日本一にはなっていますけど、彼の意外性ある思いつきに、選手が置いてきぼりを食らっている場面がしばしばある。去年は、そのあたりの差が順位になって現れたんじゃないかな、と思ったりもします」(前同)

 ちなみに、件の栗山監督は、広島との日本シリーズ第6戦では、2死満塁での中田翔の打席で、大谷をネクストに立たせることで“威圧”し、相手バッテリーから押し出し四球を誘うなど、心理戦でも試合巧者ぶりを発揮している。「ハンカチ王子」斎藤佑樹への偏愛など、理解し難い言動もあるが、そこは栗山監督の人情なのかもしれない。間違いなく今世紀を代表する名将の一人だ。

 ところで、そういった選手と監督が見せる相互の信頼関係という部分では、昨年行われた、三浦大輔の引退試合におけるDeNAのアレックス・ラミレス監督の粋な計らいも記憶に新しいところだ。6回1/3、10失点という投球内容は、さらし投げといわれてもおかしくない。それでも、温かな涙と拍手に包まれたのは、何よりも、そこに偉大な選手へのリスペクトがあったから。これもまた、純粋な勝負とは違うベクトルの名采配と言っていい。

 昨季のプロ野球最大の話題といえば、25年ぶりにセ・リーグVを果たした広島カープだろう。緒方孝市監督の采配の特徴は、菊池涼介、田中広輔、鈴木誠也などの若手を重用すること。だが、その裏では、こんなやりくりをしていた。

「打率.300、19本塁打と立派な成績を残した新井貴浩ですが、もう年齢のせいもあって速球に弱くなっているんです。そこで、緒方監督は相手がエース級投手のときは、新井を控えにして打撃が崩れないように配慮していたんです」(広島担当記者)

 冷静にシーズンを見据え、優勝をものにしたが、“絶対に負けられない試合”では執念も見せた。「交流戦でソフトバンクと対戦した6月5日のことです。1回にソフトバンクが1点先制し、6回に広島が追いつくと、こう着状態に。広島は9回から抑えの中﨑翔太にスイッチします。その後、延長戦に突入すると、緒方監督は中﨑を続投させる。11回からはセットアッパーのジェイ・ジャクソンに交代し、こちらも2回投げさせる“男気継投”に野手が応え、その裏にサヨナラ勝ち。普通は6月に、こんな勝負の采配はしません。それでも、ソフトバンクに前日まで1敗1分けだったので、どうしても勝ちたかったんでしょうね」(前同)

 時に冷静に、時に大胆に――。今季は、どんな神采配が見られるか注目だ。

12球団「現役監督の特徴」

【日本ハム】栗山英樹(55)ヒットがなくても進塁打を打ったり、ファウルで粘ったりと勝てる野球を見事に浸透させた。中田に代打を送るなど、非情な采配も。

【ソフトバンク】工藤公康(53)昨季は巨大戦力を有するも最大11.5ゲーム差をひっくり返されてV逸。猫の目打線と、矢継ぎ早な継投からして我慢強くはない。

【ロッテ】伊東勤(54)田村龍弘を正捕手に育てるなど、捕手育成はさすがと言える。作戦面では、基本的には手堅いが、ここぞという場面ではリスクも冒す。

【西武】辻発彦(58)現役時代、名二塁手だったことから、守備面を重視しそう。オープン戦を見る限り、ベテランであっても特別扱いはしないようだ。

【楽天】梨田昌孝(63)比較的、中堅やベテラン選手に甘い傾向がある。一方では、2年目のオコエ瑠偉に対し雷を落とすなど、若手には厳しい面が。

【オリックス】福良淳一(56)最下位に沈むも若手の積極起用などが評価され、今季も続投。麻雀が大好きということもあり、ときにはギャンブル采配をすることも。

【広島】緒方孝市(48)基本的には若手を我慢強く起用し続ける九州男児的なタイプ。試合中は守備固めを怠って競り負けるなど、凡ミスも多い。

【巨人】高橋由伸(42)とにかく動かないことで知られている。「自由に打てるけど、試合には勝てない」と嘆く選手も。我慢強く起用し続ける傾向にある。

【DeNA】ラミレス(42)現役時代に配球を読んで好成績を残しただけに、監督としても緻密なタイプ。あまりバントは好まず、勢いを重視するとも言える。

【阪神】金本知憲(48)見た目の通り感情型。昨季、不調のエース・藤浪に懲罰として161球投げさせ、波紋を呼んだ。若手を重用し、打てる選手が好み。

【中日】森繁和(62)今季から正式に監督として采配を振るうことになったが、もともと継投はお手の物。やはりディフェンスを重視した起用が多い。

【ヤクルト】真中満(46)選手の自主性を重んじる今時の監督。基本的にはイケイケで、盗塁など積極策も多い。投手は采配どころでないほどの火の車状態。

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