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【武豊】G1菊花賞馬スーパークリークとの思い出…新馬戦がスタート、新たな出逢いに期待

[週刊大衆2017年06月19日号]

 後で思い出したときに、「あぁ、何かが変わったのは、新しく何かが動き出したのは、あそこだったなぁ」と気がつくターニングポイントがありますよね。僕にとっては、初めてG1勝利をプレゼントしてくれた1988年の菊花賞馬、スーパークリークとの出逢いがそうでした。もしも、あのとき、彼と巡り合っていなかったら……今の僕はいなかったかもしれません。

 彼と初めてコンビを組んだのは、88年の春、3月19日に行われたオープン特別「すみれ賞」です。「ちょっと脚元を気にしているみたいだから、様子を見ながら乗ってほしい」 最後の直線を迎えるまでは、伊藤修司先生の言葉を守り、とにかく、大事に乗ることを心がけていました。

 ところが、です。最後の直線を向いて軽く仕掛けると、彼は驚くような反応を見せたのです。本当に軽く仕掛けただけなのに、いきなりトップスピードに。えっ!? と思っている間に、他馬をゴボウ抜きにしてしまいました。

――ウソやろう? なんなんや、この馬は!? ムチを入れた瞬間、全身にザッと鳥肌が立つほどの衝撃を受けたのは、このときが初めてでした。残念ながら、この後、スーパークリークは調教中に骨折してしまい、最大の目標である日本ダービーには参戦できませんでしたが、この年の夏、僕はずっとクリークのことを気にしていたような気がします。

 3歳馬にとって、夏は最も大事な時期です。「この馬なら!」と思った馬が、ひと夏を過ごしてまったく走らなくなったり、その逆で、精神的にも肉体的にも急激に逞しくなったり。中には、5歳を迎えてもまだ強くなっているキタサンブラックという怪物もいますが、彼が揺るぎない芯を、その馬体に宿したのも、やっぱり、この3歳夏の時期でした。

 クリークは前者。ギリギリまで出走できるかどうかが微妙で、僕さえ、その気になれば騎乗できる馬もいましたが、それでも、菊花賞は彼で。という思いは微塵も揺らぎませんでした。もっとも本当に勝てるとは思わず、勝った瞬間も、「あれっ、勝っちゃった……」という感じでしたが(笑)。

 だから、表彰式も、なんかフワフワとしたような不思議な感じでした。前年まで23年連続重賞を勝っていた名伯楽、伊藤先生が泣いているのを見て、びっくりしたのを覚えています。

――出走できたことが最大の勝因です。 勝利インタビューで答えた、あの言葉に嘘はありません。でも、もっと言うと、彼に乗れたことが大きな勝因であり、スーパークリークとの出逢いがあったから、今の武豊がある――これが、すべてのきっかけでした。

 日本ダービーが終わり、早くも来年に向けて2歳新馬戦が始まっています。今年は、どんな馬との出逢いが待っているのか!? 気持ちも新たに、一つ上の武豊を目指して、いいレースをしていきたいと思います。

■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算4000勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】G1菊花賞馬スーパークリークとの思い出…新馬戦がスタート、新たな出逢いに期待

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