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吉田類(詩人)「酒場で飲むことは、僕にとって生活の一部」悟らない人間力

[週刊大衆2017年06月26日号]

吉田類(詩人)「酒場で飲むことは、僕にとって生活の一部」悟らない人間力

 お酒って、最初は薬として作ったんですよ。だから、健康にいいもののはずなんです。昨年末に、特番の撮影で熊野古道を歩いて、夜はお店で飲んだんです。ちょうど、前日が原稿の締め切りだったので、一睡もしないで行ったんですが、お酒を飲んだら、シャキンと、一気に体が元に戻りましたから。

 お酒は昔から神事に使うもので、僕は神様から授かったものだと思って、飲んでいます。なので、変な酔い方はしたくないと思っているんです。でないとお酒に失礼だなって。確かに、溺れるような飲み方をすれば体に良くないですし、依存の心配もある。それはすごく残念なことです。酒を愛するなら、飲むことで不幸な状態になっちゃダメ。お酒そのものに原因はなく、飲み方の問題だと思います。今日だって、取材でしゃべっていると、喉がかわくんですが、ビール1杯だけお湿りを入れたら、すぐ元に戻りましたよ。

 一晩で一番飲んだ酒量は、覚えてないんですけど、一度、テレビの撮影でずっとカメラを回していたときがあって、ディレクターに聞いたら、“二升五合までしか覚えていません”って。だから、正確にはわからない。体質もあると思います。一升までは顔に出ません。取材や撮影のときに店内のお客さんから、どんどんいろんなお酒をつがれることがあるので、そんな時は全員と乾杯しているんですよ。

『吉田類の酒場放浪記』は今年で14年目に入って、行ったお店はもうすぐ800軒くらいになります。あれは、ドキュメンタリーだから、入って5分とか10分で打ち解けなければいけない。もちろん、ちょっとしたコツはありますよ。店に入って、まず最古参の常連さんがいるような聖域は侵さず、真ん中に行って、図々しいなって言われるよりは、ちょっとハズしたところに座る。それで常連さんに、すぐに聞く、“オススメはなんですか?”って。

 といっても、格好つける人は、無理だと思いますね。社会的地位のある人だったり、有名人は難しい。だいたい、お酒に酔っ払っている姿なんて、あまり人に見せたくはないですよね。だから、カメラの前で飲ませないし、飲まない。僕の場合は、気取っても仕方ない、格好悪く映ってもなんでもないやって。そうやって、さらけ出さなければ、一見で入っていってあんな風に仲良くなれないと思うんです。

 仲間になっちゃうからこそ、おもしろい話が沢山聴ける。それを元に書けるんです。ただ、僕は酒場ライターではないので、書くために飲みにいくっていうのはしたくないんですよね。酒場で飲むっていうのは、僕にとっては生活の一部。詩人として、そのなかで湧き出てきたものを書いていきたいですね。

 まあ結局、どんなシリアスな本を書いていても、どういうわけか、必ず最後は居酒屋に行かされちゃいます。だから、なかなかお酒を抜く日はないですね。たまの休肝日は、ビールの中ジョッキを3杯まで(笑)。でも、どれだけ飲んでも翌朝は4時半に必ず起きて原稿を書きます。

 僕の座右の銘は、“汝、悟るなかれ”。悟ったら、完成しちゃうわけじゃないですか。完成したら、前に進めない。僕は興味を抱く対象が山のようにあるから、年をとる暇がないです。

 今回の映画『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』で初めて映画の仕事をさせてもらったんですが、楽しかったですね。初めは案内人役としての話だったんで、それなら素面の時間が短いぼくでも大丈夫かなって思って、受けたんですが、映画にどんどん引き込まれて、結局、役者として出演しちゃいました(笑)。

 映画っておもしろいなと思ったので、今度は自分で作りたいなと。そうやって、いくつになっても新しいことに手を出していきたいですね。いつ、バタッていくかもわからないし、守りに入ったら、人生はおもしろくないですよ。

撮影/弦巻 勝

吉田類 よしだ・るい
1949年生まれ。20代半ばに渡欧し、画家としてパリを拠点に活動。30代で帰国し、イラストレーターに。90年代から酒場を巡る人間模様や旅をテーマに執筆を続ける。03年から始まった『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)は現在に至るまで人気を博している。俳句愛好会『舟』を主宰。

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