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歯科医が教える「歯の健康術」

[週刊大衆2017年07月24日号]

歯科医が教える「歯の健康術」

 我が国の習慣は“歯の先進国”の非常識! 話題の書籍の著者である専門医の2人が歯科の世界の知られざる情報を明かす!

 最近、『歯はみがいてはいけない』『やっぱり歯はみがいてはいけない実践編』『歯は治療してはいけない! あなたの人生を変える歯の新常識』(いずれも講談社+α新書)といった一般向けの歯科本が多数、出版され、話題を呼んでいるのをご存じだろうか。

 書籍タイトルの文言に驚いた人も多いだろうが、何もしなくてもよいというわけでは決してない。医療ジャーナリストが解説する。「日本で一般的と考えられてきた歯磨き習慣というものが、実は、歯の先進国の習慣とはかなり異なったものであり、“日本式歯磨き習慣”では、歯や歯茎にダメージを与えかねないという内容なのです」

 つまり、我々がこれまで何も疑いもせずに行ってきた歯のケアを、もう一度見直すべきだということなのだ。そこで、これら話題本の著者に、多くの人が知らない「歯の新常識」を取材した。

 まずは歯磨きについて、冒頭の『歯はみがいてはいけない』シリーズ2冊の著者である、『竹屋町森歯科クリニック』(京都府舞鶴市)の院長、森昭氏が話す。「多くの方が、いまだに歯磨き不足が虫歯の最大の原因と思っています。しかし、歯磨きの本来の目的は歯垢を取ること。虫歯や歯周病の原因になるのは、食後の食べかすではなく、細菌の塊である歯垢です。ですから、本当は歯ブラシだけでは十分取れない歯と歯の間の歯垢を取ってくれるデンタルフロスや歯間ブラシで行うほうが、むしろ何倍も重要なのです」

 森氏によれば、食後すぐに歯を磨く日本人の習慣も、本当は歯にとって大きなダメージになっていると言うのである。「食事直後の歯は、実は、非常に傷つきやすい状態なんです。食事で摂取した糖質によって、歯からリンやカルシウムが唾液に溶け出し、歯が柔らかい状態になるからです。そこに、研磨剤や発泡剤の入った歯磨き粉を使ってゴシゴシ磨けば、歯は傷つけられます。食事直後の唾液は、柔らかくなった歯の表面を30~60分かけて修復する働きを持っていますが、歯磨きをすることで、その効能すらも同時に失うことになるわけです」(前同)

 そのため森氏は、歯磨きは1日3回、食後すぐにするのではなく、朝起きてすぐと、寝る前の1日2回を推奨する。歯垢ができるのは食事をしてから約24時間後であり、同時に、寝ているときに最もできやすいからこそ、この2回で十分というのだ。

 これに対し、『歯は治療してはいけない!あなたの人生を変える歯の新常識』の著者である「田北デンタルクリニック」(東京都千代田区)の田北行宏院長は、「物を食べると歯垢の酸性化が進む」(歯は酸性に弱く溶ける)ので食後すぐの歯磨きは悪くないと言うが、やはり、歯磨き粉にはデメリットがあること、そして、歯磨きよりもデンタルフロスなどでの歯垢除去のほうが重要だという点については森氏と同様だ。

 さらに、フィンランドやスウェーデンなど歯科先進国と我が国の間では、歯科医の捉え方について、大きな違いがあるとこう話す。「日本では、歯医者は虫歯や歯周病の治療のために存在すると考えられています。事実、我が国の医療保険点数は治療した場合に高く、歯石除去などの予防歯科については低いのです。しかし、たとえばフィンランドでは1972年に国民保健法を制定して予防歯科医療に舵を切りました。その結果、今では世界有数の虫歯の少ない国になっています」

 田北氏によれば、歯の有無、すなわち自分の歯で食事ができるかどうか(20本が目安。本来は28本ある)は、単に数の問題などではなく、認知症、脳梗塞、寝たきり、寿命などの面で、大きな格差を生む要因となっていると言う。80歳以上の日本人男性において、20本以上歯が残っている人とそれ以下の人では、死亡率が実に2.7倍も差があるとの報告もあるそうだ。

 そもそも、歯周病と虫歯とは、まったく異なるもの。ミュータンス菌などを原因菌とする虫歯は、歯を1本ずつ溶かしていく。ミュータンス菌は糖質によって活発化するので、「甘い物=虫歯」の構図はここから発生する。

 実は、ミュータンス菌は赤ちゃんには存在しない。大人からの口移しやキスによって移り、そのまま口内に棲みつくのだ。それに対して歯周病は、歯と歯肉の境目で炎症を起こして歯周ポケットを形成。歯を支える土台そのものを溶かしていくのだ。そのため、歯周病を発症すれば一挙に何本もの歯を失うことになるのである。

 ちなみに、炎症を引き起こす原因は、歯の清掃が不十分で細菌(歯垢)が歯肉などに留まることにある。つまり、両者は発生要因が異なり、その影響もまったく別なのだ。「歯周病は20代から進行し、日本人の中高年男性の8割は歯周病だと推定されます。ところが虫歯と違って最後まで痛みがない場合が多く、気づいたときには歯がグラグラ動いているというケースが普通なのです」(前同)

 というわけで、その歯周病の疑いがあるかどうか、以下のセルフチェックをしていただきたい。

●朝起きたとき、口がねばねばする
●歯を磨いたり、物を噛んだときに出血する
●冷たい飲み物や食べ物、あるいは空気がしみる
●歯肉が腫れ、痛みがある
●食べ物が歯の間によく挟まる
●口臭がする
●歯茎が下がり、歯が長くなったように見える
●固い物を噛むと歯がグラグラする

 あなたはいくつ当てはまっただろうか。田北氏によると、4つ以上該当する項目のある人は、すぐに歯科医に受診してほしいという。繰り返しになるが、歯周病の原因は歯垢であり、森氏も田北氏も歯磨き以上に、デンタルフロスや歯間ブラシの重要性を話すのは、このためだ。

 では、どんな歯ブラシ、歯磨き粉、デンタルフロスを使えばいいのか。森氏は、歯ブラシについて「毛が硬めのものはNG」としたうえで、「同じ歯ブラシをずっと使い続けると菌が繁殖するので、1か月を目安に替えてほしい」とも付け加える。

 デンタルフロスは、使い慣れていない人にはホルダータイプの細めのものを推奨する。これは、歯茎を痛めないためだという。歯磨き粉は、すでに述べたように歯を削ることにならないよう、研磨剤が入っていないものを選ぶべきだという。それどころか、「歯磨き粉を一切使わず、水だけでも十分」とも言うのだ。

 一方、田北氏は、「歯ブラシは、大きめのものはしっかり磨けないのでやめてください」としたうえで、「人によって歯の状態はまったく違います。歯磨き粉ひとつとっても、歯周病の進行具合などによって変わってきますから、一概に言えません。ですので、まずは歯科医に診てもらい、指導を仰ぎましょう」と続けるのだ。

 ちなみに、都内の歯科医院に勤務する歯科衛生士に、ふだん使っている歯磨き粉を尋ねたところ、次のように教えてくれた。「私の場合は、『スーパースマイル』と『コンクール』を使い分けています。スーパースマイルは、独自の研磨成分で歯を傷つけずに表面の着色汚れを落とすことができ、歯垢除去力は通常の歯磨き粉よりも、かなり期待できます。一方のコンクールは、研磨剤と発泡剤が入っていないので、歯を傷つける心配がありません。その一方で、歯周病菌の殺菌が期待できる成分と、虫歯予防が期待できる高濃度のフッ素が配合されています」

 さらに、田北氏は予防歯科の一環でキシリトールガムの摂取を、こう推奨する。「フィンランドで虫歯が激減した理由の一つが、100%キシリトールガムを毎食後の1日3回、5分間噛むことを推奨したことです。ただ、キシリトール配合率を100%にこだわる必要はありません。ロッテのものであれば、最低でも50%以上入っていて、逆に虫歯になりうる糖分も入っていませんからね。ガムだけではなく、飴のタイプもありますよ」

 最後に、歯を今以上に失わないために、日常生活で特に気をつけたい点を尋ねたところ、森氏は、喫煙の危険性を挙げる。「喫煙は血行不良を招くなどして、歯周病菌をより増殖させるからです」

 これに対して田北氏は、運動中のスポーツ飲料水を控えるべきだと話す。「スポーツ飲料水には、たっぷりの糖分が含まれていて、これは歯を柔らかくすると同時に、歯周病菌のエサにもなるのです。また、健康にいいからといってレモンやみかんなどの柑橘類を頻繁に食べるのも、歯に関しては注意してほしいですね。これらに豊富に含まれるクエン酸が歯を溶かすのです」

 数十年の習慣をも覆すほど、研究が進む歯科医療の世界。80歳で20本の歯を残すために、ぜひ参考にしてほしいものだ。

歯科医が教える「歯の健康術」

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