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勝新太郎、今だから話せる「豪快伝説」

[週刊大衆2017年07月24日号]

勝新太郎、今だから話せる「豪快伝説」

 今も多くの映画ファンに愛され続けている名優・勝新太郎。その重厚かつ洒脱な演技はもとより、破天荒なエピソードの数々でも人々を魅了した。そんな“勝新”の没後20年に当たる今年、彼の関連本が続々出版されている。そんな中、元マネージャーだったアンディ松本氏が『勝新秘録わが師、わがオヤジ勝新太郎』(イースト・プレス)を上梓。出版記念のトークイベントも開催された。そこで本誌は、そのイベント後にアンディ氏を直撃。勝新の知られざる素顔をうかがい知れる逸話をたっぷりと聞いてきた。

「今年の6月でオヤジ(勝新太郎)が亡くなって20年になりましたが、年を経るごとに私の中ではオヤジの存在がどんどん大きくなっているんです」と語るアンディ氏は、1978年から84年までの6年間、勝新のマネージャーを務めた。79年の黒澤映画『影武者』の降板や、81年の勝プロダクション倒産など、多難な時期に仕えたのがアンディ氏だったのだ。

「オヤジが黒澤明監督とぶつかったのは、現場でオヤジがビデオカメラを回していたのが原因と、よく言われましたが、そうじゃない。映画の撮影初日というのは、出演者が最初に監督のところに行って挨拶するのが業界のルールなんですが、あのときは、役者が全員、最初にオヤジのところに挨拶に来ちゃったんだよね」(アンディ氏=以下同)

 それで黒澤監督がつむじを曲げたのか、現場にはクランクイン当日から不穏な空気が漂っていたという。「オヤジは“なぁアンディ、嫉妬で一番始末に困るのは、男と女、男と男、女と女、どれだと思う?”って聞いてきたことがあるんです。私が、“そりゃ男と女でしょ”と答えると、“バカヤロ、男と男だよ”と。つまり、そういうことです、真相は」

 勝新といえば、性格は豪放磊落、豪快な遊びっぷりで知られ、「飲み屋で同席した客の酒代を払うのは当たり前。店をハシゴするときは、見ず知らずの客まで引き連れて行くのが常」(当時を知る芸能記者)だったという。どんな相手に対しても、「チップは1万円」(前同)だったのも有名な話だ。

「オヤジはいつもポケットに300万円、無造作にねじ込んでいて、自分に関わってくれた人には、それこそ水を運んできたボーイさんにも、“ありがとうな”と言って必ず1万円のチップを渡していましたね。別に羽振りよく見せたいとか、カッコつけてたわけじゃない。“オレは出会った人に日々、勉強をさせてもらってる。お礼をするのは当然だろ”というのがオヤジの哲学だったんです」

 人とつきあうときは常に自然体。誰とでも分け隔てなく接し、権力を笠に着たり、人を見下すような人間は大嫌いだったという。

「とにかく、遊び方はキレイでしたね。とことん人を楽しませて勘定は全部、自分持ち。それを借金してまで続けたんだから、経済観念がないというより、金に無頓着だったんですよね」

 豪快さと繊細さを併せ持つ勝新の周りには、常に人が集まってきた。「中でも、スティービー・ワンダーとの出会いは忘れられません。勝プロの倒産直後、九州朝日放送から“盲目の座頭市と盲目の天才シンガーの対談をお願いしたい”という電話があったんです。私が“ご存じの通り、ウチは倒産したばかりでして”と答えると、先方の社長が電話に出て“勝さんの芸が倒産したわけじゃありませんよね?”と言うわけです。その言葉を聞いた瞬間、鳥肌が立ちましたね。そのことを伝えると、オヤジもいたく感激して、“アンディ、すぐに九州朝日放送の社長に会いに行くぞ”と」

 もともと勝新がスティービーのファンだったこともあり、話はトントン拍子に進んで、米国のスタジオでラジオ番組の収録をすることになった。「収録前にオヤジがお土産の三味線をプレゼントすると、スティービーは“どんな音色か聞かせてほしい”と言うので、オヤジがその場で三味線を弾くと、感激したスティービーはドラムのスティックで三味線の弦を叩き始めた。2人の即興演奏にスタジオ内は拍手喝采。映像として残さなかったのが悔やまれる奇跡の瞬間でした。まさにオヤジの言う“偶然完全”の一瞬でしたね」

 そして、勝新太郎の歴史を語るうえで避けて通れないのが、90年にハワイの空港でパンツの中から薬物が見つかるという事件。これについても、“もう時効だと思うから”と前置きして、アンディ氏は話してくれた。「オヤジはよく“ケミカルはダメ。天然物はいいんだよ”って言ってたんですよ(笑)。だから“おかしいな”と思った記憶があります」

 それはさておき、最後にアンディ氏は「勝新太郎像」を、こう語る。「オヤジほど、まっすぐでスケールの大きな男にはお目にかかったことがない。思えば、オヤジが遺した多くの名作だけでなく、オヤジの人生そのものが、“勝新太郎という名の作品”だったような気がします。今でもオヤジが愛用した香水、エルメスの“アマゾン”の香りがすると、そこにオヤジがいるような気がしてなりません」

 何ごとにも豪快だからこそ、破天荒であっても万人から愛された勝新太郎。これから先も、彼の武勇伝が永久に語り継がれていくことは、間違いないだろう。

勝新太郎、今だから話せる「豪快伝説」

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