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西岡徳馬(俳優)「体が動かなくなるまで、俳優としてやっていく」~あがき続ける人間力

[週刊大衆2017年09月04日号]

西岡徳馬(俳優)「体が動かなくなるまで、俳優としてやっていく」~あがき続ける人間力

 70過ぎると、“あなたは何をやりたいですか?”って聞かれるのが、一番怖くてね。自分が自分のことをどれくらいわかっているかって言ったら、7分の1くらいじゃないかな。本当に氷山の一角くらいで、下に沈んでいる部分のほうが多いと思う。

 それを、自分一人では、探り切れないわけで、人に引っ張りだしてもらって、“俺には、こんな一面もあったんだ”って初めて気がつける。自分で思っていることってすごくちっちゃいことで、しょうもない欲望なんだよ。だから、今は人に決めてもらう仕事がほとんど。『新ハミングFine』のCMで、海パン一枚穿いて“そんなの関係ねぇ”ってやったのも、“これを俺が?”っていうものをやったらどうなるんだろうと思って。若い頃は、この役はやらないとか平気で言っていたけどね。俺もこの年になると、現役でやるのは、長くても15年。そう考えると、こんな仕事は中々できないだろうと思ってね。

 そもそも、俺は文学座っていう劇団にいて、文学的なもののほうが、価値が高いと思ってやってきたけど、気取って、イギリスの芝居だ、アメリカの芝居だってやっていることだけが、芸術じゃねぇやと思ってね。“そんなの関係ねえ”ってやるのも立派な芸で、俺が舞台でやってきたのも芸。言ってみれば、パフォーマンスでしょう。喜ぶ人がいるなら、絶対やったほうがいいと思ったの。

 昔は、おふくろが泣くんじゃねぇか、オヤジもガッカリするんじゃないかと思ったけど、2人とも亡くなったしさ。天国で“また、バカなことやって”って思っているかもしれないけど、やらしてみたい人がいるなら、やってみればいいんだよ。

 人の要望に応えるためには、俳優だと体が動かなかったらどうしようもない。自分で思うイメージが、肉体を通して表現できるかどうか、そういう肉体を堅持できるかどうかっていうのが、今の自分のテーマ。どこまでできるかはわからないけど。

 いまだに、自分の出ている作品を見て、“いいねー”って思うことがないもんな。いいっていうのは、100回に1回くらい。俳優って、スポーツの世界と違って、絶対的な点数がないからね。俺がいいと思っても、見た人がダメだって思えば、それまで。自分が厳しい目を持って、次回はこうしようと、あがき続けなければダメな仕事だなって思う。

 特に、俺は若い頃は“グズラ”なんてあだ名をつけられるくらい、のんびりした性格だったから。30半ばで文学座を飛び出したのも、崖っぷちに立って、土俵際で勝負しないとダメだなと思ったから。やっていることに、頂上があるわけではないからね。常に、自分を追い込んでいかないとダメなんだと思う。俳優の人生なんか、富士山登っていて、“おお、頂上が近いぞ”って思ったら、急に周りの霧が晴れて、頂上が、まだまだ先だってことに気がつくことのようなものだからね。

 もう、感覚としては奉納する気持ちですよ。演劇の神様に。本当に、演劇の神様っていると思うの。舞台やったら、どこの劇場でもお祓いするし。お客さんが喜んでくれるのが、一番いいんだけど、神様にご満足頂けるよう努力してやらないと、人間の力なんて、ちっちゃなもんよ。

 今回、出させてもらった映画『関ヶ原』には、中嶋しゅうっていう俺の大好きな俳優も一緒だったんです。しゅうとは、25年前に2時間ドラマで一緒になってから仲良かったんだけど、7月に舞台をやっている最中に、セリフを言いながら倒れて死んだんだ。関係各位に不謹慎なことを重々承知の上で言えば、“お前、格好いいねー”って思うよ。葬式で、あいつの色んな舞台の写真が飾られていたんだけど、格好いいんだ。どれもこれも。だから、“よ、格好いいぞ”って心の中で叫んだよ。

 俺だって、いつまで体が持つかわからないけど、しゅうのように、体が動かなくなるまで俳優として、やっていくつもりだよ。

撮影/弦巻 勝

西岡徳馬 にしおか・とくま
1946年10月5日、神奈川県生まれ。玉川大学文学部芸術学科演劇専攻を卒業し、70年から『文学座』に入座。79年に退座し、ドラマ、映画に活躍の場を広げる。その後、時代劇からコメディな役柄まで幅広くこなす。最近では、バラエティ番組『ガキの使いやあらへんで!』に出演し、吉本新喜劇の定番ネタを完璧に演じ、大きな話題に。70歳を迎えた今なお、第一線で活躍する。現在はドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)に出演中。

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