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漫画『やれたかも委員会』著者vsラッパー『狐火』異色の対談が実現!

漫画『やれたかも委員会』著者vsラッパー『狐火』異色の対談が実現!

 どの漫画誌でも連載が決まらなかったものをwebで公開したところ大反響。累計200万PV以上を叩き出す漫画となった『やれたかも委員会』の作者、吉田貴司。そんな彼が「大好き」と語るのが、内省的で私小説的な表現で注目を浴びるラッパーの狐火だ。漫画界とヒップホップ界のはぐれ者同士の対談を開催!

狐火 PROFILE(右)
 福島県出身。2008年、ラップスタイルをポエトリーリーディング調へと転換しソロ活動を開始。これまでに15枚ものアルバムをリリース。10月18日にはニューアルバム『続マイハツルア』を発売。いとうせいこう氏が「これぞ胸を打つラップ」と絶賛し、オードリーの若林氏も「毎日聴いてる」と語るほど業界内外からの支持も厚い。
Twitter:@kitune_bi

吉田貴司 PROFILE(左)
 2006年に小学館のビッグコミックスピリッツ増刊号でデビュー。主な著作に『フィンランド・サガ(性)』(講談社)、『シェアバディ』(小学館)等。いろいろな漫画賞に応募しては賞金を稼ぐも連載が始まらない日々を過ごしていた。
Twitter:@yoshidatakashi3

――吉田さんは『27才のリアル』から狐火さんにハマったそうですね。

吉田 はい、それからアルバムも全部買いました。

狐火 うれしいです……!

――『27才のリアル』は、やりたいことをやる・やらないかとか、社会に順応するかどうかみたいなテーマがある曲ですよね。あの曲のとき、狐火さんはどういう状況だったんですか。

狐火 音楽で勝負するために上京して、そこから3年たった頃ですね。バイトや派遣で働きつつ、CDも2枚リリースしたんですが、それだけで食べていけるほど現実は甘くなくて。それで30社ぐらい正社員の面接を受けにいったんですけど、1社も受からなかったんです。その正社員にもなれないし、ラッパーにもなれない中途半端な自分への怒りと、面接官への腹いせもあって作ったのが『27才のリアル』でした。この曲のおかげで自分も変わっていったし、「ここまで書くとここまでの人が聞いてくれるんだ」という手応えもつかめました。

吉田 好きな人に夢中なときの曲は書かないんですか?

狐火 書かないですね。……失ってから気づくからかもしれない(笑)。僕は仕事とラップの両立がうまくいっているとき、彼女がそこに入っていないんです。でも、いなくなって初めて「何でそこに彼女も入れられなかったんだ」って気づくパターンが多くて。

――『やれたかも委員会』も、取り返しのつかない過去の思い出だからこそ、美しく見える話ですよね。

吉田 僕は失われたものを美しいと賛美しているわけじゃないし、だから『永遠の0』みたいなものではないんです。美しいという見方もあると思いますけど、ただの失敗談でもあるし、ただのダメ男の話でもあると思っています。

――マンガを読んで狐火さんの感想は?

狐火 委員会の女性の人のコメントを見て、「やっぱり女性の考えは違うんだな」と納得させられました。「アパホテルは明るすぎて覚める」とか。あと、女の子と手をつなぐか、つながないかみたいな気持ちの動きとか、本当にささいなことも文字や絵にしていて、「このマンガすごいな」と思って。

吉田 いや、今日は酒がうまいです(笑)。

狐火 自分も大きなテーマよりは、目の前のささいなこととか、反省や後悔の心情を歌詞にすることが多いので、読んでいてすごく「分かる!」って思いました。

――狐火さんもマンガを読んでいて「やれたかもしれない」体験を思い出したそうですね。

狐火 今年の4月の話です(笑)。友達のかわいい女の子から「公園にお花見に行かない?」って誘われて、「うわ、なんか波が来た!」と思ってノコノコと行ったんです。その日は雨だったんですけど、「雨の中の桜もいいね」なんて言って傘を差しながら歩いて。喫茶店で2~3時間くらいその子の相談を聞いたりして、暗くなってきたから帰ろうかと思ったら、「夜の桜も見に行きましょうよ」って言ってきたんです。

吉田 いい感じじゃないですか。

狐火 ですよね。もう雨もやんでいて、暗い夜道を歩いているとき、「ここで手をつないだほうがいいんじゃないか」って思ったんです。彼女は自分の右側を歩いていたんで、僕はこっそり右手に持っていた傘を左手に持ち替えて。

――『やれたかも委員会』みたいな描写ですね(笑)。

狐火 で、「よし、ここだ!」と思って彼女のほうを見たら、彼女は左手にガッツリ傘を握りしめていました(笑)。「まだタイミングじゃないのか」と思ったまま公園を一周してしまい、駅で普通に別れて、それからは連絡もとってません。この話、審査して下さい!

吉田 いい話! よく僕に「審査してほしい」ってメールも来るんですけど、僕が審査しているわけじゃないし、僕もやれたか・やれないか、よく分からないから描いているんですよ。

狐火 僕が傘を持つ手にこだわりすぎたのが良くなかったんですかね……(笑)。

――狐火さんの『両目のダルマ』って曲に、「見上げた神棚の端にあるダルマに書かれていた日付が 俺の生まれた日だったときに成功は約束された」というリリックがありますよね。自分を信じる力がある人なんだと思いました。

狐火 ラップだけは唯一自信が持てるもので。「これがダメだったら自分はもうダメだ」という背水の陣の気持ちで、ライブには常に臨んでいます。

吉田 そういう人の音楽が好きだし、僕は「やめない人」にひかれるんです。何を言われようが、嫌われようが今のままの活動を続けるんだろうな……という人ですね。だから野狐禅(竹原ピストルが在籍していたユニット)が解散したときすごくショックで、「サンボマスターみたいに何枚も同じようなアルバム出し続けろよ!」って思いました(笑)。

狐火 続けることは大事かもしれないですね。僕はラップをはじめて16年ぐらいたつんですけど、「昔はダサいと思ったけど、5年経って聞いたら良さが分かった」って人もいたりして。続けていれば見る人は見てくれているし、誰も聞いてくれなくても、『○歳のリアル』のシリーズは続けていきたいと思ってます。

吉田 あと狐火さんのブログで、最初は韻を踏んでラップをしていたけど、それを途中でやめたって話がありますよね。あの話、いいなと思って。

狐火 韻を踏まないと先輩たちに怒られたんですよ。でも、その先輩たちがラップをやめていって、自分の韻も通用しないと分かったし、「もう自分のやりたいことを試そう」と思って。

吉田 僕もマンガを持ち込みして、編集者にゴチャゴチャ言われて、その要望に合わせて描いたりもしてきましたよ。それで売れなかったのに、僕のマンガがちょっとTwitterで話題になったら仕事の話が来たりして。「おまえらが言っていたことは何だったんだ!」と。あと僕は狐火さんの『クズ』って曲の「オードリー若林さんが推してくれたって浮かれて小躍り? バカバカしいね」って歌詞が響いたんです。今はマンガ家たちも、作品を出すと「誰か有名人、褒めてくれ!」って思っているわけですよ。それなのに狐火さんは褒められて浮かれている自分を戒めてて。

狐火 有名人の方が褒めてくれて話題になるのって一瞬で、すぐ現実に引き戻されるんですよね。僕は万人受けから程遠い音楽をやっているので、有名人に推されて違う景色を見れたような気分になっちゃうのが怖くて。それよりは今と同じモチベーションで続けていくのが大事なのかなと思っています。

――吉田さんは先ほどの編集者への恨みや怒りみたいなものが、創作の一つの原動力になっているんですか?

吉田 このあいだ女性の漫画家さんに「あなたのマンガはときどき女性への恨みが強すぎて読めない」と言われましたね。それ、ちょっと正しいかもしれなくて。そう見えないように描いているつもりなんですけど。

狐火 なるほど……。

吉田 逆に崇拝もあるんですよ。『やれたかも委員会』って、基本的に男が語る過去だから、女の子は全員かわいい。逆に言うと、過去の女の子しかかわいくないのかもしれない。だから恨みとか、それでも女の子と過ごして楽しいと思っていた自分とか、昔の自分の恥ずかしさとか、いろんなものが混じっているんです。

――狐火さんの中では『27才のリアル』で書いた怒りは今も消えてないですか?

狐火 今もライブで歌っているので、その気持ちは残っていると思います。今も僕は派遣で働いていて、いつ職がなくなるか分からない。そういった意味ではたぶん一生つきまとう気持ちがあの曲にはあるのかなと思います。

27才のリアル

https://youtu.be/tmJBGEFXOvU

両目のダルマ

https://youtu.be/0oUswMknTn0

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※この対談は雑誌『EX大衆』の記事を抜粋したものです。全文は、お買い求めになってご覧ください。

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