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北朝鮮・金正恩の首を狙う「特殊部隊」その知られざる実力

[週刊大衆2017年10月02日号]

北朝鮮・金正恩の首を狙う「特殊部隊」その知られざる実力

 たび重なるミサイル発射や核実験など、緊迫している北朝鮮情勢。「米トランプ政権内部では、対北積極派と穏健派が拮抗しています。積極派は一気に北を叩きたいわけですが、大規模な戦闘は、対話路線を主張する穏健派が許さない。そこで折衷案として、最高指導者の金正恩氏ら北朝鮮首脳を特殊部隊で“除去”する作戦が検討され始めたようです」(外務省関係者)

■韓国が金正恩の“斬首作戦部隊”を創設

 実際、ホワイトハウスの決断と前後して、北朝鮮の最高指導者である金正恩氏が激昂しそうな除去作戦に関する発表が、韓国側からなされている。「4日の韓国国会で、宋永武国防相が、金正恩氏ら北朝鮮首脳を暗殺する特殊任務を遂行する“斬首作戦部隊”を12月1日に創設し、実戦配備すると発表しました。北朝鮮首脳部は激怒しているはずです」(全国紙外信部記者)

 金正恩氏を含む首脳の排除(暗殺)を主任務とする斬首部隊。通常ならば、こうした部隊の存在は秘匿しておくのがセオリーである。なぜ、韓国はこれを公表したのだろうか?「実は、韓国では過去にも斬首部隊を編制したことがあります。有名なのは、映画『シルミド』(2003年の韓国映画)で描かれた金日成国家主席(当時)を暗殺するための特殊部隊、空軍2325連隊209派遣隊です」(軍事ジャーナリストの竹内修氏)

 北朝鮮領内に潜入し、隠密裏に金日成国家主席を暗殺することを目的に創設された209派遣隊は、文字通りの決死隊。仁川沖の実尾島(シルミド)で3年間、想像を絶する過酷な訓練が行われた。「31名の隊員の戦技は研ぎ澄まされ、野獣の如き鋭さを誇っていた。ただ、冷戦の緊張緩和の流れの中で、政府首脳は部隊を闇に葬ることを決断。これに反対した隊員が反乱を起こし、ソウルに侵入して軍と戦闘になり、最終的に生存者も処刑されてしまったのです」(全国紙外信部記者)

 こうした秘密が、映画で世間に知れ渡った結果、「北朝鮮の首脳を殺害するための特殊部隊を創設した際は、国民に公表しなければならなくなってしまったのです」(前出の竹内氏)

 斬首部隊の創設は、本来ならば隠しておきたかったものなのだ。「斬首部隊のベースとなるのは、韓国陸軍で“獅子部隊”と呼ばれる特殊戦司令部でしょう。彼らは山岳戦闘、水路潜入、空挺降下といった特殊作戦に必要な戦技を習得しています。さらに、特殊戦司令部の隷下には“白虎部隊”こと第707特殊任務大隊があります。同部隊はソウル五輪を機に創設され、市街地や建物内部での対テロ戦闘のエキスパートです。斬首部隊は、こうした精鋭部隊の中からトップエリートを選抜して創設されるはずです」(陸上自衛隊OB)

■アメリカ特殊部隊最強のSEALs

 斬首作戦に備え始めた韓国。だが、実際に作戦が断行された場合、主力となるのは米軍だという。「韓国側には、北朝鮮側に潜伏している軍の情報部やNIS(国家情報院)の内部協力者から得た情報を米軍に提供することが期待されています。新設される斬首部隊は、米軍部隊の支援任務がメインになるのではないでしょうか」(前同)

 それでは、作戦を主導する“米軍版斬首部隊”は、どのような陣容となるのか?「現在の米軍には陸海空軍、海兵隊の4軍に加えて、特殊作戦軍という独立した組織があり、SOCOMと呼ばれています。SOCOMは陸海空軍、海兵隊の特殊部隊を統合して指揮しますので、斬首作戦は、このSOCOMが主導することになるはずです」(軍事ジャーナリストの笹川英夫氏)

 米軍内には、グリーンベレー、デルタフォースなど、さまざまな特殊部隊が存在する。しかし、最強といわれているのが米海軍特殊作戦部隊SEALsだ。「SEALsは、海(SEA)、空(AIR)陸(LAND)の頭文字を取って命名されています。そのことからも分かるように、彼らはあらゆるエリアでの戦闘を極めたプロフェッショナルです。8つのチームに分かれて世界中に展開していますが、韓国に駐留しているのはチーム5です。斬首作戦に、このチーム5が参加することは確実ですね」(前出の陸自OB)

 加えて、SEALsの中でも最精強と呼ばれる“チーム6”も、合流する可能性が高いという。同隊は、1979年にイランで発生した米大使館人質事件を機に創設され、総兵力は約200人とされる。2001年にウサマ・ビンラディン氏を急襲した“ジェロニモ作戦”の中核を担った。

「チーム6はDEVGRU(海軍特殊戦開発グループ)とも呼ばれ、SEALsから独立しています。ビンラディン氏の殺害作戦では、米陸軍の第160特殊作戦航空連隊ナイトストーカーズがヘリコプターの運用を支援していますので、おそらく、この部隊も投入されると思われます。さらに、金正恩氏の護衛戦力が大きい場合には、対戦車ミサイルなどの高い火力を持つ第75レンジャー大隊の投入も予想されます。いずれにせよ、斬首作戦は、米軍の特殊作戦コマンドの総力を挙げた作戦になるはずです」(竹内氏)

■ハリウッド映画のようにはいかない

 実力、経験、装備いずれも世界最高レベルにある米軍の特殊部隊。彼らに、韓国で誕生する斬首部隊が協力して、金正恩氏ら北朝鮮首脳を一気に葬り去る――。ところが、斬首作戦は我々が想像するほど簡単なものではないという。「ハリウッド映画のようにはいかないでしょうね。SEALsなどの特殊部隊が戦果を挙げたのは、ビンラディン氏殺害やタリバン掃討といった対ゲリラ戦闘が中心です。一方、北朝鮮は国家であり、強固な防衛基盤もあるため、作戦は非常に困難なものになるはずです」(陸自OB)

 そのため、大規模な戦闘を嫌い、隠密裏に斬首作戦を実施するにしても、海空軍による最低限の火力支援は不可欠になるという。「北朝鮮には日米韓への反撃手段があります。ですから、特殊部隊を投入する前に、B-2ステルス爆撃機による空爆や、イージス艦などから発射される巡航ミサイルにより、弾道ミサイルの発射施設や火砲、ロケット砲をできる限り潰しておく必要があります。また、空路で特殊部隊を送り込むのに障害となる地対空ミサイル基地や、進出地域に展開する部隊なども叩いておく必要がありますね」(竹内氏)

 弾道ミサイルや各種火器以外にも、北朝鮮特殊部隊による反撃も覚悟しなければならない。『コリア・レポート』の辺真一編集長は、こう指摘する。「総兵力は8万人と大規模です。今年4月の軍事パレードを見る限り、北朝鮮の特殊部隊は米韓軍に遜色のない装備で武装しています。また、米統合参謀本部議長は米議会で、北朝鮮の軍事力は特殊部隊も含めて世界第4位だと発言したこともあります。となれば、斬首作戦は、世界第1位と4位の戦いということになる。相撲で言えば横綱と小結の戦い。容易な相手ではないということですよ。特に手強いのが、矯導隊指導局。ここは、特殊部隊の戦力を強化するため、91年に総参謀部直属の部隊として発足し、5万人の巨大兵力を有する最精鋭部隊です」

■北朝鮮の特殊部隊がアメリカを震撼させた

 北朝鮮が韓国領内に潜入させていた特殊部隊員を回収に来た際に発生した江陵浸透事件(96年)では、韓国軍、韓国警察が、北朝鮮の特殊部隊員に翻弄された。「この事件によって、北朝鮮が米国の特殊部隊、英国のSAS(特殊空挺部隊)などに比肩する強力な特殊戦部隊を運用していることが判明し、米国を震撼させました」(前同)

 このことから、北朝鮮側が特殊部隊を用いた秘密作戦を先行させる可能性もあるという。「韓国が斬首作戦をやるというなら、北朝鮮もやるでしょう。レーダーに捕捉されないアントノフという布張りの複葉機で隊員を空輸可能ですし、韓国領内に抜けるトンネルも掘っている。その気になれば、ソウルは大混乱に陥るでしょう」(前出の笹川氏)

■陸上自衛隊の秘匿部隊「特殊作戦群」

 北朝鮮の奇襲により、ソウルが地獄と化した場合、在韓邦人の救出に急派されるのが陸上自衛隊の秘匿部隊「特殊作戦群」だ。「通称、特戦群。精鋭ぞろいとされる第一空挺団の隊員を中心に選抜されており、陸自内でも関係者しか詳細を知りません。彼らは米軍のデルタフォースやSEALsのマニュアルを参考に、これを超える訓練を行っており、精鋭ぞろいであることは間違いない。一度、特戦群の関係者と話した際に、“チームワークはもとよりだが、個人の戦技や状況判断力は超人レベル”だと胸を張っていましたからね」(陸自関係者)

 米韓両国が斬首作戦に着手する中、暴走する北朝鮮。「仮に斬首作戦が成功したとしても、北朝鮮軍は補給なしで7日間戦闘を継続できる能力があるとされます。金正恩氏が不在となっても、一定期間戦闘が継続されるはずです」(笹川氏)

 朝鮮の暴走を止める時間は、もう多くは残されていない……。

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