日刊大衆TOP トレンド

「がんの県民性」大分析~北海道から沖縄まで、生活習慣でこんなに違う!

[週刊大衆2017年10月23日号]

「がんの県民性」大分析~北海道から沖縄まで、生活習慣でこんなに違う!

もっと画像を見る

 我々の命を脅かす“国民病”も、実は世につれ街につれ…。場所によって、実情には大きな差がある。各地域の特色を完全網羅で解説!

■喫煙・飲酒・塩分の“3大リスク”の摂取量などを大分析

 日本の国民病・がんに、実は“県民性”があることをご存じだろうか。「国立がん研究センターでは、各都道府県が実施する“地域がん登録”のデータを基に、部位ごとの罹患率や死亡率を公表しています。それらを分析すると、地域によって、かなりの違いがあることが分かったのです」(医療機関研究員)

 記事の最後に、その結果に基づいて本誌が作成した都道府県別の「がん死亡率」ランキングおよび日本人の罹患率が高いとされる4部位別の死亡率、さらに喫煙・飲酒・塩分という“3大リスク”の摂取の多さ、そして県による傾向の違いを掲載した。「この結果は、これまで各都道府県が独自に行ってきたものを、国が初めて全国版で集約したものです。現状は自治体ごとの調査の歴史や精度の違いによるバラつきがオーバーに反映された部分もあるため、これだけで怯えたり安心したりするのは禁物ですが、生活文化とがんの関わりを見るには有意義です」(前同)

■ワースト4位の北海道は、肺がんが目立つ

 たとえば、北海道はがん全体の死亡率においてワースト4位で、特に目立つのが肺がん(ワースト1位)だ。「厚生労働省の国民生活基礎調査によると、北海道は4人に1人が喫煙者で、全国1位の喫煙率なのです。喫煙は科学的にも肺がんをはじめ、食道がん、胃がん、肝臓がんなど、全身の臓器にがんを発生させることが証明されています」

 こう語るのは「国立がん研究センター」がん対策情報センター室長で、『がんで死ぬ県、死なない県』(NHK出版)の著書もある医学博士の松田智大氏だ。喫煙率が1位で、肺がん死亡率も1位。直接的な結果だが、このように、生活文化とがん要因がフィットしたものが“がん県民性”と言える。

■病院嫌いが多いワースト1位の青森県

 がん全体の死亡率が全国ワースト1位の青森県は、喫煙率は北海道に次ぐ2位。「青森は、全国で最もがんで“亡くなりやすい県”でもあるのです。考えられる理由としては、早期発見率が低いこと。医療機関まで車で15分以内に行ける場所に住む人が、県民の50%程度なのです。病院嫌いの方の多さも、発見を遅らせているのではないかという見方もあります」(前同)

 医療ジャーナリストの牧潤二氏も、この“医療過疎”についてこう語る。「青森県をはじめ、秋田県や鳥取県など人口が密集していない地域には、がん診療の拠点病院のない“空白地域”が多いのです。発見が遅れやすく治療を受けにくい地理的条件も、死亡率を高めていると言えます」

■アルコールやピロリ菌感染の危険度は…

 青森県は飲酒率も全国2位なのだが、喫煙同様、酒量の多い県もやはり、がん死亡率が高い傾向にある。「飲酒は肝がん、食道がん、大腸がんのリスクを高めることが分かっており、一日のアルコール量が多いほど、罹患リスクも高まります」(前出の医療機関研究員)

 成人一人あたりの酒類販売(消費)量全国1位は東京都だが、これは飲食店の多さが押し上げている値。清酒消費量が全国1位の新潟県では、酒とは関係の薄そうな胃がんが多い。これは、塩分摂取量の多さが理由と考えられるという。「東北、北陸など寒さの厳しい地域は、保存食なども含め、塩分が多めの食事になりやすい。ただ、塩分の摂取量が多いと胃粘膜を傷つけやすく、その結果、細胞が破壊され、胃がんの罹患率も高くなるのです」(前出の牧氏)

 胃がんの死亡率では、秋田県が全国トップ。ちなみに、罹患率で言えば全がんでも総合ワースト1位だ。秋田県民の塩分摂取量は、一日あたり11.1グラム。全国平均の10.4グラムよりも確かに多いが、塩分だけが問題とも言えないという。「岩手県も同等に塩分量は多いですが、胃がんは少なめ。塩分以外のリスク要因もあるのです。胃がんは、ピロリ菌の感染が主因とされ、塩分は菌の活動する粘液層を増加させると考えられます」(前出の松田氏)

 胃がんの原因の7割は、過去に井戸水を飲んだり、洗浄の不十分な野菜を食べてピロリ菌に感染したことによるものといわれている。「感染割合にも地域性があり、都道府県別の詳細データはないものの、山形県や新潟県は感染割合が高く、北海道、群馬県、愛知県では低いようです」(前同)

 ちなみに、前出のような感染経路のため、ピロリ菌感染者は高齢者ほど多く、現在の30代以下には、ほぼいない。つまり、胃がんは現状でも減り続けており、近い将来、世代交代とともに稀ながんになるというのが医学界の定説だ。

■肥満のリスク…その典型が沖縄県

 ともあれ、がん県民性を分析するうえで、食生活との関係はやはり見逃せない。肥満も、注意が必要だ。「肥満が、肝がんや大腸がんのリスクを高めることは、医学的にもほぼ確実となっています」(松田氏)

 その典型的なケースが沖縄県だ。肺がん、胃がんの死亡率は46位と低いのに、大腸がんだけはワースト2位。この極端な偏りは、まさに肥満が原因と言える。「加工肉を食べると大腸がんのリスクは増すといわれますが、沖縄県は消費量がそれほど多くない。なのに、肥満度を示すBMIが男女とも非常に高い数値なんです。これは、全体的な食生活の欧米化が影響しているように思われます」(前同)

■糖尿病が多い“うどん県”こと香川県

 また、糖尿病とがんも密接な関係にある。「糖尿病を患っている人は、肥満や運動不足といった要因を取り除いて分析しても、健康な人に比べると、全がんで1.2倍、血糖値を下げる役割を負う肝臓やすい臓のがんには、2倍弱もかかりやすいのです」(同)

 糖尿が多いのは、ご存じ“うどん県”こと香川県。うどんの消費量はダントツで全国1位であり、2008年の糖尿病受療率も全国ワースト1位だった。「やはり、炭水化物の摂取量が多い。加えて、香川県をはじめとする四国は全体的に一日の平均歩数が少ないのです。四国に限らず、車社会になってしまった地方は、運動不足になりやすいですね」(牧氏)

■熱い飲食物にも要注意

 これからの季節に気をつけたいのは「熱い飲食物」。症例が少なく表には反映しなかったが、これも、あるがんのリスクになるという。「奈良県は全国的に見ても罹患率は低めで死亡率も低く、さらに喫煙率も全国で一番低いのですが……なぜか食道がんは多いんです。毎朝、アツアツの茶粥を食べる奈良の生活習慣が食道を傷つけている可能性があると、行政も真剣に考えているようです」(松田氏)

 とはいえ、これは「南米などで熱いマテ茶を飲んでいる人に食道がんが多い」という統計がもとになっているにすぎない。一つの事象だけが直接の原因と断定できないことは注意しておきたい。「ただ、がんリスクは“がん要因に継続的に触れること”で高まります。一日ならともかく、喉が火傷するほど熱いものを日々、食べ続けるのは、控えたほうがいいでしょう」(前同)

 また、食道がんには飲酒の習慣も大きく関係する。上位を見ると、東京、新潟、高知、秋田、青森など“飲兵衛県”が上位を占める。毎日の過度の飲酒は避けるべしということだろう。

■コーヒーは肝がんの予防に効果があるとされるが…

「酒=肝臓」のイメージもあるが、実は肝がんには、それ以上に大きな要因がある。「実は、肝がんの92.1%が肝炎ウイルスなどの予防可能要因なのです。肝炎の流行を経験した60~70代より下の世代は、適切な予防で肝がんリスクが極端に減ります」(前同)

 過去に肝炎が流行した九州地方、そして“地方病”と呼ばれた日本住血吸虫病(現在は撲滅)の大流行を経験した山梨県では、今でも肝がんも多い傾向。だが、これも時代が進むにつれ、減っていくとみられる。コーヒーも肝がんの予防に効果があるとされ、コーヒーの消費量が全国一の京都府では確かに肝がんが若干少なめだが、直接的な影響は、ウイルス予防に比べるとごくわずか。やはり、一にも二にも予防なのだ。

■“死なない長野”の秘密とは!?

 では最後に、がん死亡率が低い地域を見ていこう。最下位は長野県。堂々の“がんで死なない県”だ。「塩分摂取量も多く、罹患率は男女とも高いのですが、死亡率が非常に低いんです。理由として考えられるのは、長野では昭和20年代から地域の健康づくりを担う“保健補導員制度”が確立されていること。現在も1万人以上の補導員が活動しているのです」(松田氏)

 住民と医療の距離が近く、ネットワーク化が進んでいるのは、青森県と対照的だ。「結局、がんは早期発見できるかが、生死の境目。体調が悪いと感じたとき、すぐに検診を受けられる環境や意識があるかどうかで、がん死亡率も変わってくると思います」(牧氏)

 拠点病院が多い、医療機関へのアクセスがいい、地域のがんのデータ収集の歴史が長い――といった“優良県”は、他に宮城県、山形県、静岡県、愛知県など。このように、地域によって罹患率や死亡率は大きく変わる。だが、本質的に重要なのは、場所ではない。「あくまで傾向として、がんの特徴を知ってもらいたいのです。がん死亡率が高い地域には必ず、なんらかの理由がある。それを知ることで、予防や早期発見に対する意識を高めていただきたいですね」(松田氏)

 今後、この調査の精度もより高まっていくはずなので、そこでリスクとされているものを生活の中で意識するようにしてみたい。どこに住んでいようと、心がけるべきは、がんで死なない“暮らし方”なのだ。

「がんの県民性」大分析~北海道から沖縄まで、生活習慣でこんなに違う!

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.