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富田治(中華蕎麦「とみ田」店主)「ラーメンは、1杯たりとも妥協したくない」1杯にこだわる人間力

[週刊大衆2018年02月05日号]

富田治(中華蕎麦「とみ田」店主)「ラーメンは、1杯たりとも妥協したくない」1杯にこだわる人間力

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 ここ5年で、海外のラーメンブームがすごいことになっているんですよ。日本よりも海外のほうが盛り上がっちゃっている。日本人にとってのラーメンってお酒を飲んだシメだったり、1000円札1枚で、餃子とセットにしたりして手軽に飯を済ませるものじゃないですか。それが海外だと、1杯2000円くらいするんですよ。ちょっと、うまい物を食べようと思った時に食べるものになっちゃってる。

 この前、スペインに呼ばれた時なんて、“ラーメンでコース料理を作ってくれ”って言われましたよ。日本のラーメン屋さんの仲間で集まる時に、“日本でも盛り上げていかないと、海外に負けちゃうよ”って話しています。日本のラーメンシーンって凝り固まってしまっているので。ただ、やっぱりラーメンの良さって、1000円で美味い物が食えることだと思うんですよ。1万、2万と高いお金を出せば、美味い物が出てくるのは当たり前で、“1000円なのに、こんな美味い物が食えるの!?”っていう驚きが、ラーメンの一番の魅力だと思うんですよね。

『とみ田』では、1杯800円台で出していますけど、“いかに800円で夢を見させられるか”ということを大事にしています。うちのラーメンを食べるためにお客さんは2、3時間待ってくれるわけですよ。

 なのに、800円の価値しかないラーメンだったら、割に合いませんよ。800円以上の価値を感じて頂いて、“来てよかったな”と思ってもらえるお店じゃないと、流行り廃りの激しいラーメン業界では、12年もやっていられない

 そのためには、お客さんに出すラーメンは、1杯たりとも妥協したくないんですよね。商売の規模を考えれば、正直、もうスタッフにまかせて、僕がラーメンを作らなくても、お店はまわっていくと思うんです。ラーメン屋の中には、企業化されて、ラーメン作りをアルバイトがやっているところもある。

 でも、店に立って、ムッとした表情で入ってきたお客さんが店を出る時には、笑顔で“美味しかった”と言って帰る姿を見る時が、一番嬉しいんですよ。もちろん、逆の時もありますけどね。そうやって、お客さんと向き合っていないと、味ってどんどん落ちていくと思うんです。ありがたいことに、『とみ田』は開業してから12年、ずっと行列してもらっている。これってラーメン業界では稀な長さなんですよ。

 お客さんを飽きさせないためには、僕らも進化し続けていかないといけない。だから、いまもレシピは止まっていないんです。その日の、温度や湿度によって素材は変化するわけですから、毎日、4種類のダシの混ぜる比率を変えたり、麺だって、日によって小麦粉の比率を変えたり、茹で時間も変えています。それが美味しくなっているのか、お客さんの好みから外れていってしまっているのかは、正直わからないんですが、自分が一番、美味いと思ったものを出したいじゃないですか。そうしなければ、僕が店に出る理由はないと思うんで。

 これは性分なんでしょうね。常に意識しているのは昨日の自分なんですよ。昨日の自分より、今日の自分がちょっとは良くなっていたい。そう思うと、どんどん自分のアラが見えてくる。すると、同じ作業でも去年とは、全然違う方法でやっていたりするんです。

 この世界に入ってもう17年経ちますが、ラーメンに対する情熱も衰えるどころか、年々熱くなっているんです。“有名にしたい”“売れる店にしたい”っていう思いから始まって、最近は、『とみ田』を残したいっていうよりも、“日本のラーメン業界全体を良くしていきたい”という思いに変わってきた。何かのために動こうとする時の人間の力ってやっぱり大きいんですよ。日本のラーメンを盛り上げたい。その気持ちだけで、まだまだ突っ走っていきますよ。

撮影/弦巻勝

富田治 とみた・おさむ
1978年、茨城県生まれ。御影石を稼業とする家に生まれ、22歳のときに、“つけ麺の神様”と呼ばれる故・山岸一雄氏が作った『大勝軒』のラーメンに感銘を受け、山岸一門に弟子入り。06年に独立し、千葉県松戸市に『とみ田』を開業。瞬く間に人気を博し、行列が途切れない店となる。業界最高権威であるTRYラーメン大賞つけ麺部門で4連覇を達成するなど、数多くの賞を受賞。現在9店舗の支店を持つが、いまだ本店でラーメンを作り続けている。

富田治(中華蕎麦「とみ田」店主)「ラーメンは、1杯たりとも妥協したくない」1杯にこだわる人間力

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