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マネー講座「年金」一番得するもらい方

[週刊大衆2018年02月12日号]

マネー講座「年金」一番得するもらい方

 そろそろ還暦、という年齢になると気になり出すのが年金のこと。65歳からもらえることは分かっていても、いくらもらえるのか? いつからもらうと得なのか? 知らない人は意外に多い。そんなお父サンのために年金制度のイロハと賢い受給の仕方を教えます!

【第一部】10分でわかる年金の仕組み

「1月17日、自民党は原則5年ごとに見直す『高齢社会対策大綱』の改正案を部会で了承。公的年金の受給開始年齢について“70歳を超えても選択できる制度変更を検討する”としており、政府は月内にも閣議決定する予定です。年金受給開始年齢を75歳以降にまで繰り下げられるようにする狙いがあるとみられます」(全国紙政治部記者)

 ――というニュースを見ても、いま一つピンと来ない人も少なくないはず。そこでまずは、年金の基本的な知識について、おさらいしておこう。

 図1を見てもらおう。かつてはもっと複雑だったが、昨年の改正を受け、日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建てとなっている。前者は日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人の加入が義務づけられている一方、後者はサラリーマンや公務員など、いわゆる「勤め人」が、給与から有無を言わさず天引きされる年金(ただし、その保険料は雇用主が半分負担)だ。「支払われる年金は、一定の年齢になるともらえる老齢年金、病気やケガの際にもらえる障害年金、死亡した後に家族に支払われる遺族年金の3種類があります」(ファイナンシャルプランナー)。

●サラリーマンと自営業の違い

 ちなみに40年間、国民年金(月に1万6490円=平成28年度)の保険料を払い続けた場合、年間78万100円を老齢基礎年金として受け取ることになる。月にならすと約6万5000円。この額で老後の生活をまかなうのは無理だが、ないよりはいいだろう。

 一方、厚生年金の給付額は「報酬比例」(現役時代の報酬額と加入期間)によって決まるため、人それぞれで違ってくる。ちなみに厚労省年金局がまとめた『平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、厚生年金の平均受給年金額は年間177万6000円。月にならすと約14万8000円が、前出の国民年金に上乗せされる。勤め人と自営業者で大きな差があるが、「サラリーマンに比べ、自営業者は自己申告でかなりの部分を経費で計上できるなど、税制上優遇されている点も考慮されているようです」(前出のプランナー)。

 ちなみに公的年金の財源は、(1)現役世代が支払う年金保険料、(2)約150兆円ある年金積立金を『年金積立金管理運用独立行政法人』)が株式投資などで運用する運用益、(3)国庫負担(税金)の3つからなるが、ご承知のように少子高齢化がハイペースで進んでいるため、慢性的な財源不足に陥っている。「団塊世代が働き盛りだった1980年(昭和55年)には、現役世代10人で高齢者1人を支えていましたが、2013年(平成25年)には3人で1人を支える形になりました」(経済誌記者)

 さらに、「2023年には、現役世代2人で受給者1人の年金を支えることになると予想されます」(前同)

●給付する時期を遅らせ…

 日本は世界に冠たる「国民皆年金」の国ではあるが、年金制度の足元が大きく揺らぎつつあることもまた事実だ。政府が、それをなんとか持ちこたえさせるためには、「現役世代の払う保険料を上げる」か、「給付する金額を削減する」か、あるいは「給付する時期を遅らせる」か――という選択しかない。「公的年金の受給開始年齢は、かつては55歳でした。それが今は、伸びに伸びて原則65歳。これを70歳、75歳と遅らせれば、それだけ給付する金額はかなり削減できるというわけです」(同)

 受給者本人が希望すれば、この受給年齢は、原則の「65歳から」を、前後に最大で5年ずつずらすことができる。60歳から年金をもらう繰り上げ受給、70歳からもらう繰り下げ受給に変更することが可能なのだ。「繰り上げも、繰り下げも1か月単位で可能です。もちろん、繰り上げる場合には受給額は減額されるし、繰り下げる場合には増額される。どうするかは、その人の考え方、ライフスタイル次第ですね」(前出のフィナンシャルプランナー)。

 これは国民年金も厚生年金も同じで、具体的には繰り上げ受給の場合は1か月ごとに0.5%減額されるし、繰り下げ受給の場合は1か月ごとに0.7%増額される。繰り上げも繰り下げも最大で5年なので、それぞれに〈12か月×5年=60か月〉を掛けると、繰り上げれば毎回の受給額は最大30%の減額、繰り下げれば最大42%の増額となる。

●高齢者は死ぬまで働けというのか!?

 冒頭の〈開始年齢を75歳以降にまで~〉ウンヌンというニュースは、そういった事情を受けて、受給開始を遅らせようというもの。政治評論家の安積明子氏は次のように話す。「年金の話になると、いつも思うのは“正直者が馬鹿を見るような制度ではいけない”ということです。ある人が政府の提言通りに年金受給開始年齢を75歳にしたとして、その年齢まで無理して働いて、やっと年金をもらう頃には健康を害していて、まもなく亡くなったとしたら、あまりに悲しい話です」

 “1億総活躍社会”と言えば聞こえはいいが、要は「年金受給開始年齢を引き上げるので、高齢者は死ぬまで働け」と言っているのと同じではないのか。そうした悲劇を防ぐためには、「政府の提言に踊らされず、各自が自分の老後を真摯に思い描いておく必要がある」と安積氏は言う。

 また、経済アナリストの森永卓郎氏は「まもなく閣議決定される高齢社会対策大綱では、おそらく80歳まで年金受給開始年齢を繰り下げることが可能になるはずです」と予想する。「60~80歳の真ん中の70歳を年金受給開始年齢にすると、年金給付額の4割をカットできるので、財源の問題は当面なくなるという論法です。政府の考えることは怖いですよ」(森永氏)

 年金積立金の運用についても、「150兆円という数字は年金給付総額約50兆円の数年分の残高しかないので、多少の運用をしても年金給付水準にほとんど影響はない。今の株式運用は非常に中途半端なので、むしろ全額を国債で運用してリスクを避けたほうがいい。さもなくば米国の私的ファンドのようなハゲタカファンドに投資してえげつなく儲けるか、どちらかにしたほうがいいと思います」と森永氏が語るように、決して安泰ではないのだ。

【第二部】老後はバッチリ!ガッチリ年金ゲット術

 年金についていろいろ見てきたところで、最初の問いに戻ろう。年金は、いくつでもらえばトクなのか? 次の表を見てもらおう。

 原則通り「65歳から支給」と「60歳から」、また「70歳から」を比較したものだが、たとえば支給を繰り上げた場合、76歳8か月の時点が“損益分岐点”になることが分かるはずだ。76歳8か月になる前に亡くなってしまうなら、早くもらっていたほうが得だし、それよりも長生きするなら、後からもらうようにしたほうが得になる。「60歳過ぎて再雇用で働くことができても“給料が3割下がった”“半減した”という場合もあるし、そういうときは早目に年金を受給してもいいでしょう。逆に勤務先の条件が良く、自分も元気なら70歳を目標にしてもいい。要は年金を受け取ってもいいと思った時点で、受給申請をすることです」(前出の安積氏)

 経済評論家の佐藤治彦氏は次のように言う。「公的年金は物価上昇率マイナス0.9%しか給付額が上がらないうえ、数年後に今と同じ額の年金が支払われる保障もない。むしろ目減りしている可能性が高いわけです。そう考えると年金受給開始年齢を繰り下げれば得をする、と言い切るのは難しい。本当にケースバイケースなんですね。夫婦で年金をもらうなら平均寿命の短い夫は早めに、平均寿命の長い妻は、その5年後を受給開始年齢にするのも一つの方法です」

 また厚生年金に1年以上加入し、国民年金を25年以上納めた人は年金の受給開始年齢とは別に、老齢厚生年金の「特別支給」を受けることも可能。その詳細は1年に一度送られてくる『ねんきん定期便』に載っているので、要チェックだ。

●年金は老齢だけではない

 若い世代は「自分たちの頃には年金制度はなくなっている」といった思い込みがあるが、「年金というと老齢年金だけを思い浮かべがちですが、国民年金には障害年金や遺族年金も含まれています。たとえば、妻の出産直後に夫が急死した場合でも国民年金を納めていれば、残された子が18歳の3月になるまで、一定の遺族年金を受け取ることができるんです」(前同)

 佐藤氏は続けて、「収入の少ない人、今すぐ払えない人には免除や猶予といった制度もあります。我が国の年金制度の原則は“世代間扶助”。年金は決して高齢者だけの問題ではないんです」

 かつて年金の受給資格は、公的年金に最低25年間加入することだったが、昨年から10年に短縮された。「10年に満たない人でも、60~64歳の間に“任意加入制度”に加入して、足りない分を補えば、受給資格ができます。他にも救済策はあるので、しかるべき機関に相談してみてはいかがでしょう」(前出の経済誌記者)

 なお、日本人男性の平均寿命は80.98歳(2016年)。これに対して本人が自立して生活できる健康寿命は71.19歳(2013年)。その差、およそ10年。この10年をどう考えるかは人それぞれだが、一度きりの人生、悔いのない“年金生活”を送りたいものである。

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