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第9回 吉原”遊女”の思いを長唄で表現!  ―美人長唄演奏家―紫蘭まきさん

2014-06-13

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江戸時代からの伝統文化が今も色濃く残る街、東京。
その一つに、"長唄"があります。皆さんは長唄を聞いた事がありますか?
今日では歌舞伎俳優ブームもあり、老若男女問わず日本の伝統や音楽を親しむ機会も増えてきました。

東京生まれ、東京育ち。
3歳で長唄の世界に入った紫蘭まきさんは、37年間この世界で長唄を唄い続けてきました。
そんな紫蘭さんに、東京について聞いてみました。

「東京は色々な人に出会えるから、面白くて刺激的なところですよね。江戸時代に発祥して脈々と続いてきた伝統的なものが数多く存在するところですし、建物にしても人間的な触れ合いにしても、何か光を放てる場所だと思ってます。現在の東京を生きる人たちにも、ここ東京に根付いている江戸文化を楽しんで欲しいです。」
人間重視で、"縁"を大切にしていると言う紫蘭さんに、唄い継いでいる長唄について聞いてみた。


「色々な世界に、"しきたり"がありますよね。単に厳しいだけでなく、日本人の良い部分が色濃く表れたような"しきたり"。長唄の世界にも古くからのそういったものが色濃く残っていますが、私は時代遅れなものばかりだとは思わないんです。そこには、今の東京に生きる私たちにも通じる感覚、感情の機微があると思うんです。
長唄は、短いもので7分のものから、長いものでは30分以上の曲もあります。人間の心情や情緒的なものを描く、しっとり聞かせるもの、合戦の様子を描く激しいようなものもあります。江戸時代に発祥した歴史ある音楽のジャンルでありながら、日本の伝統音楽として、"長唄"という音楽がしっかり認知されてないところが少し淋しいですが……」

「そうなんですね。長唄には、例えばどんな唄がありますか?」

「そうですね~。歌舞伎の演目のものが長唄には多いんですが、他にも、例えば、吉原の曲とか…」

「吉原って、あの風俗の?」

「一概に風俗とは言えないんですよ。吉原という場所は、もちろん男性が遊びに行くところですが、遊女の格が上がるほど、並大抵の身分の男性では安易に行けない所でもあったんです。」


「江戸時代、遊廓が盛んだった頃の吉原の遊女とお客とのウィットに富んだやり取りや、遊女の気持ち、情景、勤めたくて勤めてる訳ではないという遊女の心情とかね。それを唄で表現するんです。当時、吉原は「苦界」"くがい"ともいわれ、同じ女性として、複雑な心情である事は少し分かるような気がしますが、長唄ではそれをいかに芸術・芸能に昇華して表現出来るか…というところに魅力があるのでは、と思っています。
その時代に生きている人間の色々な感情や心情を表す事に面白さもあり、難しさもありますね。もともと歌舞伎音楽として発達したこともあり、歌舞伎の演目が多いのも長唄の特徴です。男女の恋愛が題材になってるようなものも数多くあるのですが、口語体の言葉が多いため、今の時代の方が聞いてもすぐに理解することは難しいかもしれないですね。今の歌舞伎鑑賞はイヤホンガイドが必需品、といわれるのはそのせいかもしれません。寺西監督は"吉原"の歴史などはお詳しいですか?」

「いえ、詳しくは知らないです」

「遊廓の"しきたり"って言うものもたくさんあってね。最初、遊廓に遊びに行っても、男性はすぐに花魁には会えないんです。花魁は高嶺の花。人気者で教養があって、そうは簡単に遊べない。いきなり一見のお客さんが会うなんでもってのほかで、2回目以降にはじめて花魁の姿を見ることが出来る、というくらい(笑)。それでもまだお酒は汲み交わせないんですよ!

「そうなんですね! 漠然としたイメージしかもっていませんでしたが、そういった知識をもって長唄にふれるとまた新鮮な楽しみがあるかもしれないですね。」

「こうしていろいろと掘り下げていくと歴史のあるものって、やはり奥が深いんですよ。京都の花柳界は五花街あるんですが、その中でも有名な祇園では、皆さんが知っているように、舞妓、芸妓さんが街を歩いていたりしますよね。東京にも新橋、赤坂、渋谷の円山町などが今でも花柳界の街として存在していて、芸者さんたちもいます。昔からしてみれば、芸者さんの数は本当に少なくなってしまいましたが…。東京と京都では芸者さんの気質も全然違うところがあると感じますが、どちらの街の芸者さんも皆、夜遅くまで接待をしながらも、朝早くから稽古して芸を身につけています。どんなに仕事で遅くなっても、朝早くから芸事の稽古に行くのは当たり前で、気力、体力、精神力すべてが強くなければ出来ない仕事だと思いますね」


「長唄を続けていかれるうえで、色々な歴史や奥深さも知る事が出来るんですね。ところで、紫蘭さんから見て、地方と東京はどう違いますか?」

「地方は、土地を大事にすると言うか、やはり、おもてなしの文化が凄いと思いました。土地の力をいかに出せるか、"団結力"がある感じがしますね。東京ほど洗練されてないんだけど、人間としての土臭さがあって、私は逆にホッとするかな」

「なるほど、東京と地方、またそれぞれの違った魅力がありますよね。では最後に、紫蘭さんのこれからの将来の夢について聞かせてください!」

「父の跡を継いで3歳でこの世界に入って、今では長唄の道でやっていくようになりましたが、昔からこの世界にどっぷりとはつかりたくなかったんです」

「どうしてですか?」

「長唄の世界も、やはり男社会で封建的だと思うし。だから、そこにどっぷり身を置いてしまうと、新しいことにチャレンジ出来なくなると思ったんです。私は、長唄だけでなく、他ジャンルの歌も歌ってますから風当たりも強かったんですよ(笑)。ただ、長唄界で大きなレールを敷いてくれた父の顔には泥を塗らないように気をつけて来たつもりです。」

「なるほど。」


「これからは、音楽を通じてもっともっと多くの日本人や、海外の人々にも長唄を聞いてもらいたいんです。日本を、そして日本の良さを音楽を通じて感じてもらいたい。何よりも繊細に感じる事の出来る人間性を持っているのが日本人! だからこそ、この国民が楽しめる音楽が生まれ、発達してきたと思います。
東京も、いろいろな意味で大変な時代ですが、日本の発展の為には、40代、50代の中高年のパワーが大事だと思うんですよね。今の時代の女性は、本当にアクティブな方が多くて、興味や遊ぶ事について楽しく、とても素敵な過ごし方をしていると思います。おじさまはもちろん、今の時代を背負って立つおばさま方も含め、是非一緒に東京を、そして日本を盛り上げていって欲しいですね。私も頑張ります!」

長唄を通して、紫蘭さんからおじさま達へメッセージ頂きました。


「皆さん、舞台では何もなかったようにシュッとした顔でやってますけど、みんな色々あって大変なんですよ。いかに大変じゃなく見せるか……(笑)。
それでも綺麗でいたい女心…。

何百年前の江戸・東京で、吉原の遊女たちもそんなことを思ってたのだろうか?



寺西一浩(てらにし かずひろ) プロフィール
1979年10月2日生まれ
3歳で、女優・山岡久乃に見初められ子役として活動。慶應義塾大学法学部卒業。慶應大学在学中に出版したエッセイ『ありがとう眞紀子さん』が話題となり文壇デビュー。
その後、24歳の時、業界最年少で芸能プロダクション、株式会社トラストミュージックエンタテインメント代表取締役に就任し島倉千代子歌手生活50周年事業を成功させる。
その後は、小説家、プロデューサーとして活躍。著書に、「クロスセンス」「新宿ミッドナイトベイビー」「女優」、世界初電子書籍連載小説「Mariko」を配信。
2011年、「女優」が映画化されるにあたり、自身が監督デビュー。
「女優」は、第15回上海国際映画祭正式招待作品に選ばれ主演・岩佐真悠子とレッドカーペットを歩く。また、第25回東京国際映画祭、東京中国映画週間特別上映作品に選ばれ開幕式でグリーンカーペットを歩き話題となる。2013年、映画「東京~ここは、硝子の街~」を監督・脚本・プロデュース(出演:中島知子、田島令子他)。日本最大級の男性ファッション&音楽イベント「東京ボーイズコレクション」を大原英嗣氏と共に主催。ゴールデンバード賞主催。2014年、「新宿ミッドナイトベイビー」が映画化決定。


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