TBS史上最大の問題作ドキュメンタリー『日の丸』が復活!27歳の若きディレクター・佐井大紀が挑む「メディアの臨界点」とは?(2)の画像
業界注目の若手ディレクター・佐井大紀

 2月13日の深夜にTBSで放送された『日の丸 それは今なのかもしれない’22』が各所で大きな波紋を呼んでいる。

1967年2月放送、街頭インタビューのみで構成された番組『日の丸』。
TBSドキュメンタリー史上、最大の問題作と呼ばれた作品だ。

「日の丸の赤は何を意味していると思いますか?」

「あなたに外国人の友達はいますか?」

「もし戦争になったらその人と戦えますか?」

 放送当時に閣議で問題視され、長年タブーとされてきた本作を現代に甦らせたのが、2月13日に放送となった『日の丸 それは今なのかもしれない’22』である。

 2022年と1967年、2つの時代の「日の丸」インタビューの対比を中心に、「日本」の姿を浮かび上がらせていく。

 この衝撃的な作品を企画したのは、朗読劇『湯布院奇行』の企画・プロデュースや、ラジオドラマ原作、文芸誌『群像』への寄稿などで、業界注目の若手ディレクター・佐井大紀(27)だ。

(第2回/全3回)

――特にお気に入りのシーンはどちらですか?

 雪が降っている赤坂のコリアンタウンの映像で、向こうから自転車が来て、「今日も暮れゆく異国の丘に~」と歌が入ってくるシーンです。神代辰巳というロマンポルノの巨匠と称される映画監督がいて、自転車漕いでるとか、歌を口ずさむみたいな演出が多いんですが、たまたま彼の作品を最近観直していて、この演出すごく好きだなと思ってオマージュしました。

 このシーンは本当は別の映像を使用したかったんですよ。ただ、許可が下りず使えませんでした。

 ここで立ちはだかったのが、近代ジャーナリズムというか…記者的な立場で言えば、公平な視点から正確な情報をなるべく多くの人に伝えることが一番重要なんですけど、ドキュメンタリー映画ってその真逆なんですよね。

 究極にディレクター個人の視点で、個人が何をどう思って、取材対象者との間にどういう関係性が生まれ、最終的にはディレクター個人と視聴者個人との対話になっていく。本当に「俺の個人的意見」が詰まったものがドキュメンタリーなんですよ。客観的な事実を伝えるのはそれはもうドキュメンタリーじゃなくて情報の羅列だから。

 その情念を伝えるためには必要な映像だと思ってたんだけど、どうしても許諾が下りず。

 その分、すごく頭を悩ませましたが、結果的にさらに情念がこもったシーンにできたと思います。むしろ、規制が入らなければ、刺激的だけどメッセージ性はぶれていたかもしれない。テレビというルールを守ってやることで、非常に正攻法でクリティカルヒットする作品にできたとも思います。

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